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第133話(8月)(2)

LINKS&LIT Jの楽屋にて。 「やっぱお前はこういうカチっとした格好似合うな。…首苦しくないか?」 詰襟風のデザインシャツとジレという組み合わせの衣装に着替えた紅葉を前に凪はそう呟いた。 「平気…。 カッコいい?可愛い?」 「…んー、控えめに言って最高、かな?」 「ふふ…っ!」 紅葉は嬉しそうに笑い、LIT Jの出番を終え、シャワーを浴びたばかりの凪に寄り添う。 「ハーイ!そこ! 毎回言ってるけど、楽屋でイチャイチャしてないでー! こんな楽屋のど真ん中でキスでもするつもりか?! FC(ファンクラブ)の撮影入ってるぞー?凪は次もあんだから早く着替えろよー!」 LIT JのボーカルAoiは2人の間に割って入ると凪と入れ替わるようにシャワー室へ向かった。 2人はドアの端に寄りつつも仲睦まじく話している。 「怒られちゃった…(苦笑) じゃあ…着替え手伝うねっ! あ、凪くん…、髪まだ濡れてるよー?」 「じゃあ拭いて。」 「うん。あ、…ちょっと屈んで…?」 凪は頭から被ったタオルの中に紅葉を引き込んでそっと触れるだけのキスをした。 「…っ! …、だめ…。」 悪戯に笑う凪にダメだと言いながらもタオル生地に覆われた中で目を合わせると再びキスをねだったのは紅葉の方だった。 LIT Jのステージでの凪のパフォーマンスにメロメロらしい。 「2人とも…後にして。」 光輝の冷静な制止の声を聞き、ハッと我に返る2人…。メイク後だが、隈が隠しきれていない…。 「悪い…。」 「ごめんなさい…。」 短く謝るとすぐに支度に移る。 その日のLINKSのステージは一風変わった演出でスタートから観客の目を惹いていた。 ヴァイオリンを手に表れた紅葉がキラキラ星の出だしを優しく奏でるとランタンに光が灯り、再び続きを弾くとその光の数は増えていき、凪のドラムや光輝、誠一のギターも加わり一気にロック調に変化していったのだ。 (ちなみにこのプログラミングで3日寝ていないと言っていた誠一はメイク中も寝ていてさっきようやく起きた。) そのまま新曲へ繋げ、みなが唄い出す。 本来ラストにもっていく予定だった新曲はより幻想的な世界観が拡がり、観客の反応も悪くない。 そこから既存の代表曲を披露し、合間にはメンバー紹介も挟む。 大いに盛り上がりステージ上を駆け巡りながら演奏を続けるメンバーも観客もみんな笑顔だ。 「どんな時でもLINKSの音楽はいつもそばにあります。 今日…このステージを造り上げてくれた全ての人たちに感謝を込めて…。」 みなは多くを語らず、この台詞だけ残してラストの一曲をアカペラで唄い始める。 魂を込めたその声に、ギター、ベース、ドラムの音が重なり、笑顔を見せるとこの日一番の一体感が生まれた。 ステージ後は自然と拍手が起こりアンコールを求める声が響くが、LINKSはバックスクリーンに被災地や被災者へ向けたメッセージを送ることで応えた。 『本日のLINKSグッズ販売の収益の一部は被災地支援に寄付させていただきます。』 終演後、LINKSの物販コーナーには行列が出来ていたそうだ。 LIVE後… 「準備OK?」 「うん! 平ちゃん、梅ちゃん…ごめんね。 ちゃんと帰ってくるからね。 そしたらいっぱい遊ぼうね。」 紅葉は2匹をぎゅーっと抱き締め、凪も腰を落とすと頭を優しく撫でた。 「…気をつけてね。 行ってらっしゃい。」 「行ってきます!」 紅葉はみなに預けた愛犬に笑顔で手を振り凪の運転する車の助手席に乗り込んだ。 向かうのは被災地だ。 「朝には着けるといーけど、道がどうか…」 「そうだよね…。 調べとくね!」 「おー。頼む。」 「…ありがと、凪くん。」 「ん?」 「僕が行っても何が出来るかって感じなのに…ワガママに付き合わせてごめんね。」 「そんなことねーし。 お前が行くのに俺が一緒に行かないわけにはいかねーよ。 なんか炊き出しチームに入れてもらえるみたいだし、おばちゃんたちと和気あいあい頑張るわー(笑) 向こうじゃバラバラだろうけど、お互い怪我だけは気をつけような。 飯時には会えるといいよなー。」 「…そっか。うん…ありがとう。」 現地でボランティアをすると言い出した紅葉に凪は驚きつつも「じゃあ俺も行く。」の一言を返したのだ。 もちろん個人的なボランティア活動だが、2人は紅葉は大人が片付けをする間の未就学児の保育ボランティア、凪は炊き出しボランティアで活躍した。 紅葉は避難所でヴァイオリン演奏も披露し、その美しい音色で多くの人を魅了した。 暑い中の作業と車中泊という大変な環境ではあったが、2人は2日間懸命に働き帰京。 帰ると早々に約束通り平九郎と梅とたくさん遊び、正直身体はクタクタだ。 「楽しかったー! なんか…みんなに元気もらった…! 胸がホカホカ…!」 「おー…そんな感じだな。 …行って良かった。」 「うん! 平ちゃんたちともたくさん遊んだし、元気になったので…次は…!」 「…ラブラブしとく?(笑)」 「曲を作りますっ!」 被せ気味でそう答えた紅葉に凪は笑いつつも了解…と答え、大きく頷いた。

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