135 / 212

第143話(9月②)(4)※R18

凪も立ち上がり、来た道を戻ろうと紅葉から梅のリードを受け取る。 紅葉は平九郎を連れて凪の隣に立つと思い出したかのように話始めた。 「…あ!そーだ! 1つお願いがあるんだけど… 今度制服着てもいい…? っていうか、凪くんの制服はもうないの?」 「はい? 中学?高専の?どっちもねーよ。 ってか、あっても体格変わったから入らねー(苦笑)」 「…じゃあさ…今度買ってもいい?」 「え?買って…? …着るの?(苦笑) 衣装でもないのに?」 思わぬ話に凪は戸惑いつつも面白いなと笑っている。 「いーじゃん! 見たいのー! で、制服着てイチャイチャしたい…。」 「…え、俺アラサーだよ?(苦笑) ってか、あー…いい話してたのになぁ(笑)」 「今もいい話してるよっ!」 「コスプレの話でしょ?(笑)」 「……だって久々に制服見たらさー、可愛いんだもん!着たくなっちゃったし、凪くんの制服姿も見てみたくなったんだよぉー!」 「懐かしーな、高校生の紅葉。」 出会った頃を思い返し、懐かしさに目を細める凪。 「…少しは大人っぽくなった?」 「…んー…? きれいになった、かな?」 「…っ! 恥ずかし…っ!」 凪からの言葉に紅葉は思わず手で顔を覆う。 「お前が言い出したんだろー?(笑)」 ふざけ合い、笑い合いながら宿へと戻る2人。 普段は寝室とリビングに分かれて休むが、今日はホテルのワンフロアの部屋で愛犬たちと隣合って眠った。 翌朝 「紅葉…」 「んん…? は、ごめ…。 ベッド硬いなぁって思って…凪くんの上で寝てた…!ぁ、よだれ…(苦笑)」 「ふ…(笑) それはいーんだけど…俺、空手部の朝練に呼ばれてたの忘れてた。 先出るからもう起きて支度するけど、寝てていーよ?」 「ん…?うーん…。 起きる…! …一緒にシャワーしよ?」 目を擦りながら起き上がった紅葉。 上目遣いでそう誘われた凪はおはようのキスを贈りながら了承するのだった。 「ん…っ! あ…は、ぁ…ん…ッ! 朝練…遅刻するよ?」 「知らねー。俺生徒じゃねーし。 ってか、こういうシチュエーション希望だったんでしょ?(笑)」 凪が額をくっつけて紅葉にそう問えば、赤い顔で見つめ返す紅葉。 「そう…だけど…(笑)」 昨夜は遅かったし、愛犬たちもいたから集中出来ないかと思ってしなかった。 移動中はゆーじとサスケがいたし、でも本当はくっついていたくて、紅葉はバスルームで昨日の分のキスをねだった。 もっと、もっと…と、裸で身を寄せてお願いされたらキスだけで済むはずもなく…結果、今に至る。 「ん…、凪…っ! キス…気持ちいい…! は、ぁ…っ、ん。もっとしよ? んん…ッ!あ…っ! ね、凪…!もっと触ってよ…ッ!」 紅葉は激しいキスの合間に必死で息継ぎをしながら、熱くなった身体を凪に預ける。 「んー…この積極性と色気は高校生の時にはなかったな。」 凪も上機嫌で紅葉の細い身体に手を這わせ、唇を落とす。 ちょっとだけ甘い時間を過ごし、なんとか熱い身体を宥める。 「…続きは帰ってから、な?」 「ん…っ、うん。 行ってらっしゃい…! ブランチに良さそうなカフェ…探しておくね。」 「ん、頼む。場所決まったらLINEして。 …気をつけてな。」 学校近くの街で愛犬を連れて車を降りた紅葉は手を振って凪を見送る。 凪が空手部の朝練に行っている間、散歩がてら犬連れで入れるカフェを探すことにしたようだ。スマホに頼るのもいいが、こうして街を見ながら歩くのも楽しいと紅葉は進み始めた。 「いいお天気ー!もしカフェが見つからなかったら、テイクアウトして公園もいいねー!」 ご機嫌な紅葉に対して、凪の方は朝練に遅刻して顧問に言い訳中… この学校の空手部顧問の先生というのが、凪のキックボクシングの師匠の弟という縁で今日も呼ばれている。 「すみません、寝坊しましたぁ。」 「……嘘だな。 はい、正座。」 「はっ?」 「邪念を祓え。何しに来てんだ、お前。」 「…いや、元は軽音部に呼ばれて来てんだけど…!そっち本職なんで。(苦笑)」 「うるせー!いいから正座っ!」 「なんでだよっ!」 「文句あんのか、お前ちょっと我慢が足んないらしいね? 兄貴にまで迷惑かけてさー。 俺が鍛え直してやるよ。 かかって来い。」 この言い合いから組み手で勝負を始める2人…。空手部の部員たちは固まってたり、オロオロしていたり…。でも強すぎる2人の組み手をキラキラした目で見ていたそうだ。 「カッコいい!カッコいい! どーしよっ! すっごいカッコいいっ!」 散歩の途中で従姉妹のみなに会い、愛犬たちとランニングしてくれるというので預けたあと朝練を見に来た紅葉は道場のドアから凪の様子を見て大興奮していたとか…! 「紅葉…! …来たのか。 平九郎たちは? …朝飯何にするか決まった?」 「凪くん…っ!」 「ん? あ、この人? 師匠の弟ー。」 「どーも。 顔小さ…っ! 睫毛地毛?? めちゃくちゃ熱い視線ありがとーって俺じゃねーか!(苦笑)」 「…えっと……、凪くん…を、食べたい…っ…!」 もう凪しか見えてない紅葉は他人は目に入ってなくて無意識に朝から大胆なことを呟いていた。 思わず凪も目を見開いている。 「……。」 「……。 おっとー…!(笑) うちの学校の風紀乱すなら君も正座だよ?(苦笑)」 その後…軽音部の練習までにはなんとか通常モードに切り替え、2日目も順調に終えた。 「自分で歌おうかと思って創った曲だけど、君たちに託そうかなって…。 良かったら学祭のLIVEでやってもらえたら…」 この日、部室に顔を出したみなはそう言ってある曲を学生たちに託した。 若い彼らの胸に突き刺さるような歌詞と優しいメロディーのこの曲は、学祭を期にずっとこの学校に残り続け、世の中へと拡がり続けることとなる…。 END

ともだちにシェアしよう!