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第145話(10月)(2)

それから数日…益々忙しくなる2人…。 スケジュールが噛み合わず、すれ違いの日々が続く。 凪は紅葉のためにお弁当を作って持たせてくれたり、出来る限りのサポートをしてくれる。 しかしオケのメンバーには幸せそうな紅葉を疎ましく思う者もいるようで… 「…結婚指輪以外は外せよ。」 すれ違い際に言われたその一言には傷付いた。凪と揃いのこの指輪は永遠の愛を誓った宝物だ。例え法律上の結婚が出来なくてもその意味は一般的な夫婦と同じ…。 負けたくなくて言い返す紅葉。 「…結婚指輪ですっ!」 結局、また何か言われるのが怖くて走って逃げた。 他にも英語や日本語でいろんな言葉を投げ掛けてくる人がいた。 「ゲイってホントー? 売名のためのパフォーマンスでしょ?」 「なんでこんな中途半端なヤツが第一(ヴァイオリン)に呼ばれてんの?」 「親の七光りってことわざ知ってる?」 など。 悪意のこもった言葉はナイフだ。 流石に気の滅入る紅葉…。 間もなく紅葉の誕生日だが、凪は仕事、紅葉も夕方まで練習がある。 凪は落ち着いたらどこかのタイミングでお祝いの食事をと言ってくれているが、正直今の紅葉には誕生日のことを考える余裕がなかった。 「寂し……。」 凪のいないリビング…。 いつもと同じ部屋なのにあるはずの温もりを感じられず、まるで別の部屋のように感じる。 思わず漏れた紅葉の言葉に、平九郎と梅が優しく寄り添う。 「ふふ…、ありがと…っ。 うん、大丈夫だよー。 …えっと…凪くん何時くらいに帰ってくるかなぁ?」 スマホを確認すると… "リハ終わって、飲みで遅くなる。 ゆーじがどうしても話したいことがあるって言うから…" 凪からのLINEを見て落ち込む紅葉。 「そっか…。仕方ないよね。 んー! でも全然会えてないのにー!」 迷ったあと、凪に電話する紅葉。 「…お話終わった? あの…僕もそっち、行ってもいい? お邪魔かな?」 「もちろん、いーよ。 ってか、ゆーじが相談あって紅葉にもちょっと話聞きたいって。いい? 疲れてるなら無理しないでいいけど…」 「…ん。わかった。 行くね。」 着いたのは個室のある落ち着いた雰囲気の居酒屋だった。 とりあえずビールを頼んでもらい、喉を潤す紅葉。 「もうちょっと強いお酒が欲しいかも…!」 「…まぁ、いーよ。 カクテル? 梅酒? ゆーじもなんか飲む?」 最近の紅葉のストレスを理解している凪は了承して注文用のタブレットを開く。 「あんま強くないやつ適当に頼んで…。 この前誠一と飲んだらマジ二日酔いヤバくて…詰んだ。」 「あー、あいつに付き合うとヤベーよ(苦笑)」 そんな風に少しなんでもない話をしながらオーダーが届くのを待ち、ゆーじはグラスを置いて切り出した。 「えっと… 紅葉くん…話聞いてもらっていい? とりあえずダーッと一気に話すね…。 実はこの前…あの高校行った時に猛烈アプローチしてくれた子がいて…。 あ、高校生じゃないよ? 夜…飲み行って、居酒屋のバイトの子。 …えー、で。 その子…男の子でさ。何て言うか…今時の、オシャレでキレイな顔の…男の子…! っていうか、26って言ってたから普通に男…なんだけど…! んー、俺女の子大好きなんだけど、長いこと特定の彼女ってのはいなくて…。 飲み友達とかキャバとかお店の女の子と楽しむみたいなのはあるんだけどね? あー、で。店出る時がちょうどその子のバイト終わりの時間で。一杯だけって誘われたからまぁいっかーって2人でバーで飲んで。 めっちゃ話盛り上がって、カッコいいですね、とかさっきギター弾いてる動画見ましたとかスゲーおだててくれるからさー こっちも気分も良くて。 バー出たとこで…告白…?してくれたから じゃあホテルとか行ってみちゃうー?って誘ったら…なんか…泣きそうな顔で拒否られたんだけども…。 地雷ポイントどこだったと思う…?」 話聞いた紅葉は真顔のまましばらく考え、凪が頼んでくれた梅酒のロックを一気飲みした。 向かいの席でちびちびとカクテルを舐めるゆーじも驚いているが、話を進める。 「あのー…? 失礼を承知の上の話だけど…。 男女でも良くあるけど…その、ゲイの人たちもOne Night有りな人多いって聞くし? 酒入ってると特にそういう流れになんない? 因みに紅葉くん的にはどうかなー?って。」

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