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第149話(10月)(6)

そして紅葉の誕生日… 午前中から夕方までみっちりレッスンを受けて帰宅した紅葉。 演奏に集中していたので心身共にヘトヘトだが、やっと演奏が様になってきてオケ全体もまとまってきたので、充実感と本番への期待が高まっている。 愛犬と凪にハグで癒して貰おうとオフモードで玄関を上がる紅葉。 「はぁー! 今日も頑張ったよー。 ただいま…」 パンッ! パパンっ! パーンッ! 紅葉がリビングへ続くドアを開くと同時にクラッカーの音が鳴り響いた。 「わぁあーっ!! な、何…?」 ワンっ!ワンっ! 驚いた紅葉は反射的に後ろへ下がり、ヴァイオリンを抱えたままバランスを崩して尻餅をつく。 大きな音が苦手な梅の鳴き声も響く中… 「「「Happy Birthday!!」」」 「えっ…?」 たくさんのバルーンで飾られた自宅のリビングには何故か制服風の衣装を着たLINKSのメンバーが揃っていた。 パチパチと拍手や笑い声、おめでとうーの声が聞こえるが、まだ状況の読めない紅葉は瞬きを繰り返すばかりだった。 …カメラを回している親友のユキとみなと光輝の愛娘(愛樹)を抱っこしているスタッフのカナがいるところを見るとドッキリのようだが…。 「えーっ?! 何これーっ! 聞いてないよー! なんでみんないるの? えぇー? なんで制服ー?(笑)」 可笑しくなってきてケラケラと笑う紅葉。 よく見ると平九郎と梅も犬用の衣装を着せられていて、カメラには映っていないが、ユキもブレザーだし、カナも愛樹もセーラー服風の服を着ている。 「制服、着たかったんでしょ? はい、これ紅葉の分! スラックスもスカートもあるから好きな方に着替えて!ほら、早くっ!」 驚きと感動で泣きながら笑う紅葉にみなが衣装を手渡してくれた。 そして凪がナイトのように目の前に跪いて未だ床に座ったままの紅葉を起こしてくれる。 「えぇっ?! 凪くん…っ?」 戸惑う紅葉は凪に説明を求めた。 「いろいろ考えたんだけど、メンバーに相談したら今年はこういう感じになった(笑) …気に入った?」 「…うんっ!すっごく! こういうお誕生日会、1度やってみたかったんだー!」 笑顔で喜ぶ紅葉にみんな嬉しそうだ。 それから紅葉も制服に着替えてメンバーで記念に写真撮影。(悩んだが無難にスラックスを選んだ) ここまでがファンクラブ動画で流されるらしい…。あとは写真。もちろん愛樹たちが映らないようにしたものは使用する予定だそうだ。 そしてユキたちも加わり誕生日パーティーが始まった。 ちなみに「衣装は学園祭の出演用なので汚さないように。」とリーダーの光輝。 ちなみに誕生日プレゼントは新婚旅行の休みを1日プラスしてくれた(笑) 「ってか、みなの制服じゃなくて特攻服だろ?(苦笑)」 「え? 制服でしょ?」 他のメンバーはブレザー風の衣装だが、一人学ラン風の衣装のみなは学園祭でも目立つだろう。 「シャンパン開けるよー! 乾杯しよう!」 高級シャンパンを手にお酒好きの誠一が張り切っている。ビールやワイン、シャンパンなど数々のお酒は彼が手配してくれたそうだ。 料理はもちろん凪の手作りで唐揚げや筑前煮、カボチャとさつまいものサラダ、茶碗蒸しなど紅葉の好物ばかりが並んでいる。 隣の池波氏には凪が事前にうるさくなるお詫びをしてくれていたらしく、誕生日のお祝いに紅葉の好きな高級フルーツと高級お寿司を差し入れてくれたそうだ。 豪華な食事やお酒がテーブルいっぱいに並び…きれなくて、パーティーの直前になって光輝が事務所から長テーブルと椅子を持ってきてくれたとか…。 バルーンなど部屋の飾り付けはユキとカナ、みなが頑張ってくれたそうで、愛樹は可愛いバルーンに大喜び。お土産に少しお裾分けした。 徐々にLIT Jのメンバーや音楽仲間も集まり、夜中にはドイツとも通話を繋げてみんなでわいわい盛り上がった。 たくさんのフルーツが乗った大きなバースデーケーキもみんなで食べ、紅葉は幸せー!とたくさんの笑顔を見せた。 「ほーんとに楽しかったー!」 久しぶりにたくさん笑う紅葉を見て凪も嬉しそうだ。 日付も変わりパーティーもお開きになると、順番に帰宅するメンバーや友人を見送る。 「この前のお詫びっていうか…兼、誕プレ…で受け取ってくれる? ほんといろいろごめんね。 でも紅葉くんがいろいろ喋ってくれたから気付けた部分もめっちゃあって…! 改めて恋愛に対する先入観とか自分の態度とか反省してさ…。 …だからありがとう。 で、誕生日おめでとう。」 ゆーじから高級焼肉屋さんの食事券をもらい、恐縮する紅葉。 「わ…!ありがとう。 ううん!こちらこそ! あの時僕もちょっと…頭の中がいっぱいいっぱいで… ゆーじくんにはゆーじくんの事情や感情があるのに…押し付けたような考えを言ってごめんなさい。 あ!そーだ!僕、飲み代も払ってないよね?!」 「それは全然いいよ(笑) えっと…来週、ツアーでまた向こう行くから…会ってちゃんと謝ってくる。」 「そっか…! うん。話、出来るといいね。」 気にかけていたゆーじともちゃんと話せて紅葉は胸を撫で下ろした。

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