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第156話(11月)(1)

11月某日 都内(上野) 「紅葉ー? …パンダ…見ねーの?」 「…っ! ごめんね…、あとちょっと…!」 今日はLIT J秋ツアーのファイナル前日 リハーサル前に凪と紅葉は先月から約束していたパンダを見に動物園へ来ていた。 結局なかなか休みが取れなくて紅葉の誕生日デートのリベンジは買い物、食事、デートとそれぞれ別日で楽しむことになったが、紅葉は楽しそうだ。 しかし念願の動物園に来たというのに紅葉が見ているのは落ち葉の広がる地べただ。 夢中になって拾い集めているのはどんぐり…、そして赤や黄色に色付いた落ち葉。 「お待たせー! 見て!いっぱいー!」 コンビニのビニール袋いっぱいにどんぐりを詰めて満足そうな紅葉。 落ち葉も折れないように別の袋に纏めている。 幼児音楽イベントで、どんぐりや落ち葉を使った楽器を作るのだと最近は愛犬の散歩中や凪とのデート中も資財集めに余念がない。 「おー…。 あれ? そのビニール穴空いてねぇ?」 「えぇっ?!嘘っ?!」 「嘘だよ(笑) …行くぞ。時間なくなる…。」 「もー!凪くんーっ!(笑)」 ふざけ合いながら、動物園へ向かう2人。 周りに気付かれても気にせず、手を繋ぎ仲良く園内を歩く。 時々、凪に仕事の電話が入る。 大事なLIVEの前だ。紅葉は心配そうに彼の顔を見上げるが、大丈夫だと凪は優しい目線をくれる。 「…ぬいぐるみのお土産なんて喜ぶかなー?」 「ん?」 手にしたパンダのぬいぐるみは確かに可愛いが、妹たちの年齢を気にして考え込む紅葉。 離れている間にどんどん成長していく弟たちと妹たち…。来月会えるのが楽しみだが、ちょっと不安もある。 「ドイツでパンダって珍しいだろうし、いいと思うけど…。あ、こっちのにする?」 凪は近くにあった別の商品を勧める。 「あ、これ鞄につけれるやつだー。 …いいかも!これにするー! 急いで会計してくるね!」 紅葉も気に入り、手にしていたぬいぐるみを棚に戻そうとする…。 「紅葉、欲しい?」 凪はそのぬいぐるみを手に紅葉に聞く。 「…うん、欲しいっ!」 凪に買ってもらったぬいぐるみを車に飾るんだと微笑む紅葉。 その後、紅葉の車で会場まで凪を送る。 「デート、ありがとう…。 時間作ってくれて嬉しかったけど、集中したい時にごめんね…。 …リハ頑張ってね。」 「いーえ。 楽しかったよ。 頑張るしかねーわ。 ファイナル終わっても学祭やらイベントLIVEがあるけど…(苦笑) 紅葉……明日、終わったらご褒美欲しい。 "アレ"の分も含めて。」 耳元で囁かれて一瞬固まりつつも、承諾する紅葉。 学祭LIVEでまた来週北陸へ行く。LINKSとしての出演だが、午前、午後と2校回る忙しさ。 地元ラジオ局の出演や取材も入り… しかもLIT Jも翌日別の学校の学祭に出演することが決まったのだ。 両日計3回出演+αの凪は過密スケジュールにさすがに顔をひきつらせていた。 「っ! ん…わ、かった…。」 「…約束な? 楽しみにしとく。 じゃあ気をつけて帰れよ? …行ってきます。」 「…行ってらっしゃい!」 ご褒美がどんな感じか…ちょっと気になった紅葉だが、笑顔とキスで凪を送り出した。 翌日… LIT Jツアーファイナル 都内某所 地方では比較的小規模のLIVEHOUSEを巡るLIT J。ツアーファイナルに相応しく、今日は収容人数2000人規模の会場だ。 前日のリハーサルからメンバーたちは気合い十分で、会場入りすると早速音合わせと入念な打ち合わせを行っていた。 そこへひょこっと顔を出したのは紅葉と紅葉の親友でボーカルAoiの恋人ユキ、それと… 「お疲れ様です! …サスケくんー! お客さん連れて来たよっ!」 「おー、紅葉くんおはよー。 …っ!あ、やな…ちゃんっ?! 嘘っ!どーしてっ?!」 以前、凪との仲を取り持つよう店(キャバクラ)の客であるサスケを通じて頼んできたあやなだった。 派手だった髪色は落ち着いたブラウンに染められて、美人な印象は変わらないが、化粧や服装も以前とは別人のような彼女を前に戸惑うサスケ。

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