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第158話(11月)(3)

LIT Jのファイナル公演は最初からアンコールのラストまで大いに盛り上がり大成功! 熱いステージにファンもメンバーもスタッフも大満足だ。 ツアーファイナルということで、打ち上げ会場に顔を出した紅葉は知り合いの関係者に挨拶をしながら凪を探す。 LIT Jリーダーでベースのマツと目が合うと「あっち」と指差して教えてくれた。 会釈して急ぎ足で向かう紅葉。 「お疲れ様! すごく素敵でした! 凪くん、カッコ良かったよー!」 「…ありがと。」 無事合流し、話していると葵が駆け寄ってきた。 「もみっち! …ユキ送ってくれたんでしょ? ありがとね。タク代足りた?」 「葵くん!お疲れ様! すごい盛り上がってたねー! あ、これお釣ー!」 「…いいよ、とっておいて。 ほら、おとーと達のおやつ代にでもして(苦笑)」 「…ありがとう。 ユキくんちょっと疲れた感じだったけど、顔色悪くなかったから大丈夫そうだよ。 実家で良かったんだよね?」 紅葉がそう伝えると葵はホッとした表情を見せた。ロックバンドのボーカルらしく、クールなイメージの多い彼だが、ユキを想う時やユキを想って書いた曲を歌っている時は優しい表情を見せる。 「ん。俺遅くなるし。 見ててもらってた方が安心だから…今日は頼んでた。」 「そっかー。あ!ユキくんママが明日ユキくんのお迎え来る時にご飯食べて行ってって言ってたよー。」 「あー…まぁ、気向いたらな(苦笑) …お、呼ばれてる。 じゃあ。…ありがとねー」 「…葵くん…ユキくんともご両親とも上手くいってるみたいだね。」 「…だな。 あいつ(葵)も少しは大人になったんじゃん?(笑) お。紅葉、見て。 ゆーじの隣。 例の相手じゃん?」 「どこー? 挨拶したい!」 「…順番な。 あ、杉崎さん。お疲れ様です。 今日ありがとうございました。 …俺のパートナー、知ってるかもだけど紹介していい?」 「初めまして! LINKSのベース紅葉です。 凪くんがお世話になってます!」 「初めまして。 音響の会社やってる杉崎です。 娘がLINKSのファンなんですよ。」 「そうなんですか? 嬉しいです!良かったら一緒に写真でも…」 順調に挨拶をする凪と紅葉。 一段落したところで飲み物をもらう。 「この前みたいに『凪くんは俺のです!』って言わないの?(笑)」 「あれは…!間違えたのー! 『旦那さんと仲良しですね』とか言われたから…恥ずかしくて! 伴侶って言うか、パートナーって言うか迷ってたら間違えて省略しちゃって! …もっと恥ずかしかった…っ!」 思い出して顔を赤らめる紅葉と笑う凪。 「確かにどう紹介するか人によるし、悩む時あるけどなー。 まぁ、あれは俺的にはビックリしたけど嬉しかったよ?」 「もぉ…!凪くん急にデレるから……好き。」 「ありがと(笑)俺も。 テンパってる紅葉好き。 …あ、ゆーじ。紹介しろよ。」 凪がグラス越しにニヤニヤしながら紹介を促したのはゆーじの今気になっている相手(男性)だ。 「あ!凪…!紅葉くんも! うん。 えっと…要(かなめ)くん…です。 …お、お友達です。」 挙動不審なゆーじが可笑しくて凪は必死に笑いを堪えている。 打ち上げなのに酒好きの彼がソフトドリンクを口にしているのも意外だ。 「こんにちはー! LINKSってバンドでベースやってる紅葉です。 ヴァイオリンも弾くよ。 ゆーじくんには凪くんも僕もいつもお世話になってます。」 「LINKSとLIT Jのドラムで凪。 紅葉とは公私共にパートナー関係。」 「どうも…。 …要です。 っ! か、お…っ!」 「?」 「キレー過ぎる…っ! やっぱ東京はキレイな人が多いなぁ…っ。」 「あはは。 東京初めて?迷わなかったー?」 人懐こい紅葉は気軽に話しかけるが要は緊張した様子だ。 「いや…俺なんか場違いで…(苦笑) ゆーじくん…やっぱ俺帰るよ。」 「えっ?! 待って待って!そんなことないし!」 「そうだよー! 帰るって言ってももう新幹線ないよね? 今日はゆーじくんのとこに泊まるの?」 「っ!」 「紅葉ー、野暮なこと聞かない。」 「いやぁ…それは…(苦笑) 要くん、ホテルどこ? 先帰るならタクシー呼ぶから…」 「……いや、適当にネカフェにでも泊まろうかと…。バイト辞めちゃってさ…(苦笑) 一応夜行バスの乗り場に近いとこ調べてきたんだけど… 東京ってネカフェいっぱいあるんだねー! 目的の店に着くまでにどんどん他の店があってビックリした!」 「「はっ?!」」 要の発言に凪とゆーじの声が重なった。 「夜バスで来て、LIVE見て、ネカフェに泊まって、夜バスで帰んの? そりゃあスゲー根性だね…(苦笑) 熱烈なファンでもそこまでする子なかなかいねーよ?」 ゆーじは固まり、凪が失笑気味に言う。 「ネカフェってネットカフェのこと? 泊まれるのー?」 「アイスとかパンとか食べ放題飲み放題で!」 「わー!すごーい!」 紅葉と要が話してる隙に凪はゆーじの肩を組んだ。 「ゆーじ、ちょっと…。 フォロー足んないんじゃね? LIVE招待したなら新幹線とホテルくらい取ってやれよ。」 「はい…。すみません…すぐに。」 スマホを取り出すゆーじに凪は付け足す。 「ってか、バイト辞めたなら無職だろ? …俺なら明日帰るの引き留めてオフの時間は一緒に過ごすけどなぁ…。 来週向こう(要の住んでる県)行くんだからそこに合わせればちょうど良くない?」 「っ!…ですねっ!」 「恋愛初心者かよ…(苦笑)」 「あ、そろそろ時間だ!凪くん…!」 「おー…。 手伝う。」 「要くん! あのね、大丈夫だからもうちょっとだけいてね?」 「…はい。」

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