157 / 226

第165話(12月)(4)

大きな会場でLIVEをしたり、トレンドキーワード上位になるくらいすごいミュージシャンなのに飾らずフレンドリーなLINKSのメンバー。次第に要の緊張も解れてきたのか、笑顔も見せるようになっていた。 今はこっち(東京)でバイトをしたいという要の相談にのっている。 「居酒屋やってたんだっけ? 飲食は賄いついたり、いつでも人手不足だけど…まぁ…その分いろいろあるっつーか…けっこう大変だよな(苦笑)」 凪がそういうと、誠一はそれならと流行りの仕事を提案する。 「んー…、気軽に出来るのはフードデリバリーとか?」 「えー、でも土地勘ないと厳しくない? せっかくLIT Jの休暇なんだし、年明けからにしたら?」 みなの提案に頷く一同。 しかし要は少し困った表情を見せた。 「でも…。 引っ越し代とか…全部ゆーじくんに負担してもらってるし…!家賃も…。 せめて食費くらいは…」 「お金のことは気にしなくて大丈夫だから。こっちの生活に慣れて落ち着いたらでいーよ。」 「そーだよ。 こいつそこそこ金持ってるし、払わせておけばいーんだよ(笑)」 「おい、サスケー? あ!そーいえばこの前の飲み代払えよ!」 「えっ?」 「えっ?じゃねーよ!(笑)」 ゆーじとサスケがいつもの言い合いを始めたので、紅葉とみなが優しく語りかける。 「要くんは何が好きなのかなぁ? せっかくだからやりたいこととかチャレンジしてみたいこと探してみたらいいよー。 都会はいろんな人がいて、いろんなものに溢れてるからいろいろ発見があって面白いよー!」 「もしゆーじくんに何かあげたいとか、仕事するのに資格取りたいってなってお金が必要なら光輝くんに言えば雑用仕事回してくれると思うから大丈夫。」 「ありがとう…。」 「そーだっ!ユキくんがね、来月のお休みに葵くんと沖縄行くんだって!いいね、沖縄! 今日ご両親と食事会でOKもらえたってLINEきたよー!」 「へぇー。それで今日、葵来れなかったんだ? …葵も大人になったな(笑) 向こうは暖かいからユキも過ごしやすいだろうな。」 「うん! あ、ごめんね…ドイツは寒いよ…。」 「はは…っ! 別に俺は寒くても平気。」 凪と紅葉の話を聞き、ゆーじが思い出したように訊ねた。 「旅行いーね! あ、みんなマツんとこの出産祝いどーする?」 「なんで俺だけ…」 ゆーじの恋愛が進展し、葵もマツも幸せいっぱい…サスケはいじけるように呟いた。 「…サスケくんって車あるよね? 来週引っ越しの手伝いで男手欲しいって。」 みなはあやなからのLINE画面を見せた。 「それって…!! 行きます!やりますっ!」 「あ、部屋決まったんだねー。」 「誠ちゃん家戻る? とりあえずゲネプロ終わるまでうちいるよね?」 「…じゃあ、そうしようかなー…。 っと…。 ……うわ。仕事早いなぁ…(苦笑)」 スマホの通知はカナからのLINEで、借りている誠一の部屋の退去日の連絡と、光熱費の支払いについての連絡だった。 続けて締め切り間近の仕事の確認の長文も届き、その場で読み上げて他のメンバーに共有する誠一。 「ホント仕事早い(苦笑)」 そこへ家主の光輝が帰宅。 「ただいま…。寒かった…。 愛樹ーっ! …また誠一にくっついて…(苦笑) パパのとこおいで?」 早速愛娘を構いたい光輝にみなが話しかける。 「おかえり、光輝くん。 先に紹介いい? ゆーじくんと同居することになった要くん。 で、どれ食べる? モツ、チゲ、海鮮もあるよ。」 「宜しくー。同郷仲間だね。 確かこっちには知り合いいないんだよね? 困ったことあったら家にきていいからね。」 「ありがとうございます…っ」 「えっと…モツで。 みな、ごめん、食べたらまた出掛ける…。」 会話はのテンポは事務的だが、多忙な2人にはこれがあっているのだ。 「了解。 愛樹、パパは?」 「バーバーイっ!」 愛娘は誠一にべったりくっついたまま、笑顔で光輝にバイバイをしている。 「…愛樹…っ!」 半泣きの光輝にみんな思わず吹き出した。 「光輝、このままだと愛樹は誠一がパパだと思うんじゃね?(苦笑)」 「やめて…、現実になりそう…。」 凪の指摘にガックリ肩を落とす光輝。

ともだちにシェアしよう!