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第169話(12月②)(2)

結婚式の日… 「いやー、ごめんね? 結婚式後の疲れてるところに引っ越し作業手伝ってもらっちゃって!」 お昼前に紅葉の家族や地元の友人たちを招いて小さな教会で式をあげ、ちょっとしたパーティー(食事会)をした記念すべき日。 紅葉の祖父は祖母の写真を手に参列してくれて、紅葉を優しく抱き締め涙し、凪にも何度もおめでとうとありがとうを伝えてくれた。 少しずつ認知症の症状が出ているし、足腰も弱ってきているが紅葉のことはきちんと分かっていて、「可愛くて大事な大事な儂の孫。幸せに…」と笑顔を見せてくれた。 それだけで十分だった。 でも実は今、翔と珊瑚、アッシュ、サチの自宅で引っ越し作業中…(もちろんタキシードから私服に着替えた) ほとんど手付かずの部屋を見て挙式の余韻も酔いも覚めた凪は食器類を包みながらリビングで不要品をまとめている翔を横目に見た。 「…ホントにそう思ってる? 何でこんな荷造り進んでねーのっ?!」 「あはは。 何でだろー? あ!ほら、自分一人の引っ越しは一夜漬けでいけたから今回もまぁ大丈夫でしょー?って思って。」 「いや…翔センパイ…? こっち(ドイツ)来る時の引っ越しも全然いけてなかったから…。 後始末振られて俺けっこう大変だったんだけど…! ってか…4人分だし、期限あるんだし、せめてもう少し計画的にやらなきゃでしょ…!」 どうにも能天気な翔。仕事で留守にしていた珊瑚も帰宅してから驚いていたらしい。 「ごめーん! でも凪の手際が良いからめっちゃ助かる! あ。そーだ! お礼に今夜ここの客間使っていーよ? まだ何も手つけてないからベッドも布団もあるし! あ、ほら!ローションとゴムもあるー! はい、プレゼント! 大丈夫! これ新品だから! うち最近バニラばっかだから減らなくてさー…(苦笑)」 手渡されたローションとゴムを前に顔を引き吊らせる凪。 「………そんなとこまで聞いてない…むしろ聞きたくなかったんだけど…(苦笑)」 「そうー? あ、でも別に仲はいーんだよ?」 「それは…2人見てたら分かるよ(苦笑)」 「うん。あー…この流れで話していい? 紅葉くんもだけど、珊瑚ってさ…すごいこども好きじゃん? 赤ちゃん預かり始めたの最近なんだけど、普段と全然違う顔して世話してるの見てさー。 もちろんさっちゃんたちに接する時も優しいんだけど、赤ちゃん前にすると父性?母性?みたいなのに溢れてて…んー、なんか珊瑚キレーだなって。 何回か聞いたことはあったんだけど、この前真面目に"こども欲しい?"って聞いたら"チャンスがあるなら…"って答えたんだよね。 だからすぐってわけじゃないけど…ほら、おじいちゃんのこともあるし。 でもうち、やっぱこども考えようかなって思ってるんだよねー。」 「マジか…。 …養子ってこと?」 「んー、サロガシーって分かる? 代理母出産。 そっちも検討中ー。 とりあえずお金貯めないとだねって(笑)」 「なんつーか、相変わらず発想がすごいね。」 「そう? まぁ、何にしても目標あるのはいいことだしね。 凪たちは結婚したばっかだし、日本だと養子とかその辺めっちゃ難しいってのは分かる。 だからうちも実現するかは分からないけど、でもいきなりより一応話だけでも耳に入れておこうと思って。」 「うん。分かった。 …何も分からないけどさ、2人を応援するよ。 きっと紅葉もそう言うと思う。 あと…翔くんと珊瑚なら実現させるんだろうなって思う(苦笑)」 「…ありがとー。」 その後、LIT Jのメンバーをネタに2人がバカ話をしていると新居の方を片付けていた双子(珊瑚&紅葉)が帰ってきた。 ちなみに祖父は隣の親戚宅、弟妹たちは友人宅のクリスマス会にお呼ばれしていて不在。 「わーん!凪くんー! 珊瑚がいじめるーっ!」 半泣きの紅葉が凪の胸に飛び込んできた。 危うくグラスを落としそうになった凪は慌てて体勢を直し、紅葉の髪を撫でた。 「別にいじめてねーし。 事実を指摘しただけだろ? ってか、翔っ! 寝室のカーテンの丈違うんだけどっ! 交換しに行くぞ! 眩しいと眠れない!」 「あ、マジで? ごめんね?確認したつもりだったんだけど… またドイツ語読み間違えたかなー?」 「いや長さだからフツーに数字だけど? やっぱ老眼きてんじゃねーの? 今度の土産はじーちゃんが絶賛してるMADE IN JAPANの老眼鏡頼めよ。」 「…うっそ!ショック! ヤダよー…っ! あ、じゃあ交代! こっち宜しくー! 車1台置いとくからー。」 嵐のように去る翔と珊瑚を見送る…。 その時、グー…っと紅葉のお腹が鳴った。 「怒ったらお腹すいた……。」 凪も同感だった。 「とりあえず…買い出しついでにメシにするか。」

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