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第172話(12月②)(5)

クリスマスイヴ 車2台で街へやってきた。 大人数なのでグループに分かれてクリスマスマーケットを楽しむ予定だ。 紅葉のすぐ下の弟のアビーはデートらしい。 本場のクリスマスマーケットを前に凪は辺りを見渡した。皆、幸せそうに肩を寄せ微笑み合っている。 この家のリーダーである珊瑚が弟妹たちを集めて言い聞かせる。 「いいか、人が多いからな。 走り回らないこと! 店の物壊すなよ! あと勝手にいなくなったりしない! 特にフィンとアッシュ!」 「えー? んー。 分かったぁ…、大丈夫だって! 早く行こうよー!」 「そーだよー!狙ってるお菓子あるんだっ!」 気だるそうに答える2人に珊瑚のこめかみがピクピク動いた。でもクリスマスは怒らないと決めているらしい。 まぁ、反抗期の男の子にしては可愛い方だ。 「…レニとサチは俺たちか凪たちと一緒にいること!サチはあんまりはしゃぎ過ぎるなよ?」 「もうー、分かってるー。」 「サチも。ちゃんといい子に出来るよ。」 「…約束破ったら帰るからな。 じゃあ…特別に小遣い渡すから、並んで。 みんな無駄遣いするなよ!」 「「「「はぁいっ!!」」」」 「そこは揃うんだ(笑)」 「こどもって素直だよねー(笑)」 思わず笑う凪と翔。 「お兄ちゃんありがと!大好きっ!」 「はいはい。どーも。」 成績によってお小遣いがプラスされ、ご機嫌なレニは珊瑚の頬にキスを送った。 「お兄ちゃん、しゃがんで?」 「はいよ。」 サチも真似していて女の子のすごさを知る凪。 「ちゃんとお爺ちゃんにもお礼言うんだよ?」 紅葉が促すと再び声が揃う。 「「「「ありがとう!」」」」 「メリークリスマス」 ニコニコ笑顔の祖父の車椅子を押す紅葉。 「お爺ちゃん見えるー? 何か買う?」 「じゃあこの菓子を、こどもたちに。 店主、7つ貰おう。」 「お爺ちゃん…僕たちもう大人だよ?(苦笑)」 7つというのは珊瑚と紅葉の分も入っている。紅葉がそう言っても祖父は譲らなかった。 亡き妻へのプレゼントに可愛いオーナメントを買い、ホットワインを楽しむ祖父。 少し離れた店でレニとサチにねだられて何かを買った翔が早速珊瑚にバレて怒られているのが見えた。 「あーあ…相変わらずねだられると弱いな(苦笑)」 凪は思わず口に出した。 「?どうしたのー? あ!これ可愛い! 旅館のフロントにどうかな?」 「おー。これならクリスマス終わっても使えそうだな。」 「そうだよね! お義母さんにはこれかなー?」 「お前、自分のはいーの?(苦笑)」 「あとでー!」 楽しそうな紅葉と店を巡っているとアッシュとフィンがやってきた。 「紅葉にぃ…! お手伝いいっぱいするから3ユーロ欲しいんだけど…!」 「俺は5ユーロ足りなくて…! 貯めてた小遣いも持ってきたんだけど…!」 「あー…(苦笑)」 どうする?と凪は紅葉と目を合わせた。 多分、珊瑚と翔に言ってダメだっからこちらに来たのだろう。 離れた場所から翔が手を挙げたのが分かった。「あと宜しく」の意味だろう。 少額だし、別にいいのでは?と思う凪だが、 紅葉は落ち着いて2人に話を聞く。 「2人とも何買いたいの?」 「スノードーム…。 サチに、あげたいんだ…。」 「俺は彼女にネックレス…!」 気付けばみんな自分の物より誰かのためのプレゼントを選んでいて、凪は感心していた。 「分かった。 一緒に行こ。 凪くん、お爺ちゃんをお願い。」 「あぁ。」 もう背丈もあまり変わらない弟たち(フィンには抜かされてる)を連れて歩く紅葉が逞しく見えた。 しばらくして戻ってきた3人。 「無事に買えたの?」 「凪にぃ! 紅葉にぃスゴいんだよ! 日本のお菓子をプレゼントしてまけてもらった!」 「俺は高価過ぎるかなって言われてちょっと違うデザインのやつに変えた。 レニにも見てもらって…やっぱこっちのが彼女に似合うと思う!いいのが買えて満足っ!」 「おー!良かったな。 さすがだな、紅葉…!」 「ふふ…! 僕って買い物上手でしょー?(笑)」 凪を見上げる紅葉は得意気に微笑んだ。

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