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第173話(12月②)(6)

みんなで帰宅し、翔と珊瑚は2人きりで新居で過ごすことに。クリスマスマーケットで買ったワインを手に珊瑚はご機嫌だ。 「じーちゃん寝たから俺ら行くぞー? お前たちももう寝ろよー?」 はーい!とまだ寝そうにない元気な声が聞こえる。 「お薬良し! さっちゃんまた明日ね。 暖かくして寝んだよ。」 「カケもちゃんとお洋服着て寝てねっ!」 「! あはは…!そーだね?(苦笑)」 裸で寝てる日があることはバレているようで、翔はあたふたしている。 そんな翔を横目に珊瑚が凪にこっそり告げた。 「あ、凪ー? "重大ミッション"任せたからなー?」 「あ…? っ! え…、マジか!」 今日の重大ミッションといえば、サンタ役しか思いつかなくて、さすがの凪も焦る。 「納屋にあるから。あとは紅葉に聞いて。」 「宜しくー! じゃあメリークリスマスー!」 その後… 納屋に向かいながら紅葉から説明を聞く凪。 「うちは日本式とドイツ式が混ざってて、こどもたちが寝てる間にツリー(本物のもみの木)のとこにサンタさんからのプレゼントとみんなからのプレゼントも置くんだよー!」 「そうか…。 あー…スゲー寒い! あと…、スゲー量あるな…(苦笑)」 極寒の中、納屋へ辿りついた2人は中に準備されたプレゼントの山を前に思わず固まった。 「光輝くんやみなちゃん、誠一くんからのプレゼントもあるし、カナちゃんもクリスマスカードくれるんだよー。 池波のおじいちゃんやLIT Jのみんなからも! ほらこっちは凪くんのお義母さんから!」 「そりゃ多いはずだ(苦笑)」 なんとか最後の荷物を運び込む2人… 寒いが、身体を動かしていたらいつの間にか寒さは感じなくなっていた。 静まり返った夜空からは雪が降り始め、とても幻想的だ。 「紅葉…メリークリスマス」 「…!メリークリスマス!凪くん!」 「引っ越し作業もサンタ役も大変だけど、こんな賑やかで楽しいクリスマス初めてだわ。 東京とは違うけど、俺…ここのクリスマス好きだよ。みんながちょっとずつ優しくて、幸せそうに笑ってて…いい日だな。」 「ふふ…! うん! 僕も幸せー!」 それから一杯だけワインで乾杯して、キスをして抱き合って眠る…。 昨夜の疲れに加えて先程のプレゼント運びの疲れもあり、2人はあっという間に眠りについた。 翌朝は早くから大騒ぎ。 朝食のおにぎりと豚汁を作りながら、まだ起きかけの頭でみんなの話を聞く凪と紅葉。 「見て!ねこちゃんのお洋服! 靴もキラキラなの!」 「わぁー、可愛いね。」 「スケッチブックと絵の具もあるよ! 日本の! たくさんお絵かき出来るー! 一番に書くのは、アッシュお兄ちゃんからもらったキラキラドームよ!」 大事にプレゼントを抱えたサチに紅葉も嬉しそうだ。アッシュは部屋の端で照れている。サッカーシューズで顔を隠すのが可愛い。 フィンは念願のゲームをもらったらしく、大はしゃぎだ。 「見て!すっごい可愛い! これ絶対次のデートで着て行こう。」 「おー…良かったな。 ってかレニ、彼氏出来たのか?」 翔は知ってるのだろうかとハラハラする凪。 「付き合ってはないけど…ボーイフレンドはいるよ? だって普段お兄ちゃんたちのレベルの顔見てたらさー!凪兄さんみたいに料理とかも出来る人がいいなとかも考えちゃうし…! 彼氏決めるのも大変なんだよ?」 「…なるほど?それは褒められてる?(笑)」 その後、翔と珊瑚はケーキを手に帰宅した。 そしてアビーはサプライズで彼女を連れてきてみんなを驚かせた。 「せっかく凪兄さんと紅葉兄さんも来てるからと思って…!」 「こんにちは。」 日本語で挨拶してくれた彼女はとても優しそうな子だった。 「いくつ? いつからアビーと? うちのこと…どこまでちゃんと聞いてる?」 「こら、珊瑚ー! いきなり質問攻めにしないー! 小姑みたいだよ。」 アビーのことが心配で、いろいろ聞き出そうとする珊瑚を翔が止める。 「こじゅーと?なにそれ? だってさー!こういうのは最初に…」 「はいはい。ヤキモチしないー。」 「っ!してねーし!」 「アビーが選んだ子なら大丈夫でしょ! ほら、早速さっちゃんも懐いてるし。 ほんと、珊瑚は素直じゃなくてかわいなー。 いいから乾杯しよ!みんなで飲もう! 珊瑚の好きなワインあるよー。」 紅葉が珊瑚のバイオリンを奏でたり、ワインやビール、チキンだけでなく凪お手製の日本食も囲んでみんなでわいわいクリスマスパーティーを楽しんだ。

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