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第174話(12月②)(7)
そして夜は翔、珊瑚、凪、紅葉の4人で飲み明かすことに。
音楽の話や家族の話は尽きなくて、美味しいワインとつまみを手に楽しい時間を過ごす。
「紅葉?
おーい…、寝るなら部屋行けよ(苦笑)」
珊瑚の肩に寄りかかったままウトウトしている紅葉。
「まだおしゃべりする……」
しかしそのまま眠りに入る紅葉…。
「え…、かわいー。
やっぱ双子だー。珊瑚の寝顔と似てるね。
写真撮っていい?」
「アホっ!
そこのブランケット取れよ!」
パートナーの翔にそう指示すると、紅葉にブランケットをかける珊瑚。
ほんの一瞬優しい兄の表情を見せ、それに気付いた翔は静かに微笑んだ。
「あれ?
もしかして寝た?」
「寝た。
まだ何か作ってんの?」
凪は帰国前に作り置きを用意していて、キッチンで飲みながら4人で話をしていたが、急に静かになった紅葉の様子に気付いたようだ。
「お雑煮。
ちょい早いけど、いい加減豚汁飽きたでしょ?(笑)
あと煮物とか、焼豚。」
「おー!ありがとうなー。
雑煮とか久々!
大事に食うよ。2日くらいもつかなー?」
翔は嬉しそうだ。
「日持ちはするけど、問題は量だよな…(苦笑)」
「みんな食べ盛りだからねー(苦笑)
いつもスープと肉焼くだけで、こんなマメには料理しないからなぁ…(苦笑)」
「悪かったなー。」
不貞腐れたように珊瑚が言う。
翔は焦ってフォローする。
「えっ?!
いや、俺もしないから…!
そんな、別に責めてないよ…?
あ。やっぱ紅葉くん帰っちゃうのが寂しいんだね。だから不機嫌なんだねー。」
「はぁっ?!」
「大丈夫!
珊瑚には俺がいるよー!」
「だから!別に寂しいとか思ってねーし!
…そんなに日本食が恋しいなら一緒に帰れば?」
「珊瑚…!
もうー!最後に嫌な空気にするのとか良くないよ?」
「……。」
言い争う2人を凪が止める。
「…はいはい、喧嘩しない。
これ(作り置き)は俺のお節介だから気にせず食ってよ。ここの家にはここの家のやり方があるんだから、2人がいいと思うことやればいーんだし…!
まぁ、引っ越しとかで忙しいんだから、あんま無理すんなよ。」
「そうだねー。
ありがと。
ってか、凪こそ忙しいでしょー?(苦笑)」
「あー…、そーだ…
帰りたくないんだった…(苦笑)」
凪は思わずそう呟いたのだった。
翌日は近所の人たちも挨拶に来てくれて、紅葉の家族はみんなで空港まで見送ってくれた。
大急ぎでお土産を買って、一人一人とハグをして別れを惜しむ。
「おじいちゃん…!
ありがとう。
また来るから!元気でいてね。」
「紅葉…!
また柿ピーを送ってくれるかい?」
「えっ?!(笑)
うん、もちろん!
でもしょっぱいからね。
ちょっとずつ食べるんだよ?」
「分かったよ。
わさび味をを頼むよ。」
「う、うん…!分かった。」
2人の会話を聞いて凪は笑いを堪えていた。
「おじいちゃんと紅葉、なんか似てると思ってたけど、そーいうとこか(笑)」
「ウケるね(笑)
あ、そろそろ時間だよー!」
翔に言われ、弟妹たちが凪と紅葉に一斉に駆け寄りハグとキスを贈ってくれた。
それから…
凪と翔は握手とグータッチを交わし、
「紅葉!
…またな。」
珊瑚は短くそう告げると片割れである紅葉にハグをした。
「うん…!
またね、珊瑚。
みんなもありがとう!
またねー!」
なんとか家族の前では笑顔で通した紅葉。
みんなの姿が見えなくなるとボロボロと涙を流し、歩みを止めると凪に抱き付いた。
「…また来よう。2人で。
約束だ、紅葉。」
絶体また来ようと、凪は紅葉を抱き締めた。
「…うん…!約束。」
「大丈夫か…?」
「うん。
帰ろう?
僕たちの家に。」
「…いや、実家直行だけど…(苦笑)」
「そーだった!(笑)」
帰りは関空から凪の実家へ直行予定なのだ。
光輝とみなが紅葉のヴァイオリンと平九郎と梅を車で連れてきてくれる手筈になっていて、誠一が凪の車を運転してきてくれるらしい。
メンバーには感謝しかない。
「もともと家族旅行したかったし。
早苗さん(凪母)も是非って言ってくれてたから…!
凪の実家で年末年始過ごして、年明けそのままスタジオ練習入れるねー!
機材?誠一が運んでくれるから心配ないよ。」
という光輝の恐ろしい仕事魂に若干ビビリながらも、2人は日本に向けて旅立った。
END
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