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第184話(1月)(1) ※R18
1月3日…
『年末年始を旦那さんの実家で過ごしている奥さんへのアンケートでは"普段以上に家事に追われて気も遣うので2日が限界"、"必死になってご馳走作ったけどやっと食べれると思ったら自分の分はなかった"、"出来るだけ行きたくないからいっそのこと風邪ひきたい…"などといった声が…』
「た、大変……っ!
凪…! あなた帰らなくていいのっ?!」
テレビに反応するのは凪の母、早苗だ。
「……帰っていーの?」
年末、二徹で注文を受けた大量のお節を作り終えた凪は休む間も無くお正月の祝い膳の仕込みをした。
自身は年越しもお正月を楽しむ暇もなく、あっという間にもう3日だ。
今日も昼を過ぎてようやく起床したが、疲れの取れない身体と回らない頭でボーっとしている。
俺だって帰りてーよ…と内心思いつつ、繁忙期で人手不足の実家を離れるわけにはいかない。
本業の仕事も溜まるが、そろそろ欲求不満が限界かもしれない…。
昨夜も貸し切り露天風呂でアレコレ盛り上がってしまい…結果、紅葉が逆上せてしまった。
幸いすぐに回復したが、夜中にお湯の入れ換えと掃除をしたので疲れが限界になり、さすがに懲りた。(掃除のタイミング等は義弟に適当に誤魔化しといてもらった)
そんなことを思い出しながら母の話を聞く凪。
「いてくれるのはありがたいし、散々手伝わせておいて今更なんだけど…!
ほら…お友達はみんな水族館やテーマパーク、初売りとかに行ったりしてるじゃない?
紅葉くん退屈してないかしら?
ストレスになってないといいんだけど…!」
「テレビに影響され過ぎだから…(笑)」
「嫌われたくないのよ!
会いにきてくれるだけでいいの。」
紅葉への溺愛っぷりは今年も変わらないらしい。
「必死だな…(笑)
そんな心配いらねーだろ…」
「おかーさーん?」
和室から早苗を呼ぶ紅葉の声はストレスなど微塵も感じさせない。安心しきったこどもの声だ。
「…ほら、呼んでるぞー。」
「何かしら?
はぁい! どうしたのー?」
「ここにあるお煎餅食べてもいい?
美味しそう…!」
「御歳暮の?
いいわよ。
どれでも好きなものを好きなだけ食べて。
あ、お茶入れるわね。」
「ありがとうー!
お義母さんも一緒に食べよう!
もうすぐ凧出来るよー!」
義父と凧作りをしている紅葉は楽しそうだ。
凪が和室を覗くと不思議な柄の和凧が完成間近のようだ。
「紅葉、その絵って…」
「平ちゃんと梅ちゃんと小麦ちゃんだよ!
可愛いでしょ?」
「……まぁ、なかなか味があるな(苦笑)」
「何、その間ー!(笑)
出来たら凧揚げしに行くんだからねー?!」
「えっ?! 俺も?
それ持つの…?」
「そうだよ!
一緒に走ろうー!」
「正月から元気だな…(笑)」
「コマあったよー!」
「わぁ!スゴい!カッコいい!
え、紐?どうやったら回るのっ?
義くん出来る?凪くんは?」
義弟が倉庫から見つけてきたコマに更に盛り上がる。賑やかなお正月だ。
「凪、あなたも働き過ぎよ。
明日は休んで。
紅葉くんとお式を挙げた神社に初詣に行ってきたら?」
「んー、じゃあそーする…。
でも混んでそーだな…。」
「…結婚したからって気を抜かずに大事にするのよ、紅葉くんのこと。」
「…分かってますよ…。」
翌日
結局、朝食の仕事を終えて仮眠をとってから出かける2人…。
「良かった。
初売りセール行きたかったんだー!」
そう言う紅葉だが、向かったのはペットショップだ。平九郎たちのおやつが安いらしい。
「ほら帽子被って…。バレんなよ?
俺ちょっと他見てくる。すぐ戻るから。」
「うん。ここにいるね。」
一旦別行動で買い物を済ませる2人。
フードやらおやつ、小麦の子犬のためのグッズを車に積み込む。
「他は?自分の服とかはいーの?」
「んー…今度でいいよ!
早く行こう?デートの時間が減っちゃう!
次どこ行く?初詣ー?
あ、ご飯は何食べようかー?
おやつはね、たこ焼き食べたい!」
可愛いことを言ってくれる紅葉を前に言い出しにくくなったが、凪は「ホテル…」と告げた。
「………。」
助手席で固まる紅葉に「ケーキも買ってやるから…」と続けると小さく「…いいよ。」と頬を紅くしながら答えてくれた。
着いたのは紅葉が想像していた場所(ラブホテル)ではなかった。
「わ…!すごい…!
あ…、雪…!
雪だよ、凪く…!んっ!…ん、は…っ」
大きな窓から街を一望出来て、十分寛ぐことが出来る広い部屋はわりと高級なホテルなはずだ。
さすがに宿泊は空いてなかったようだが、デイユースプランに空きが出たようで、凪はそこを予約してくれた。
2人きりの部屋で、キスを交わす。
溶け合うように全身が熱くなるのが分かった。
「は…ん…っ、ぁ…、んッ!
あ、ねぇ…まっ、待って?
ん…凪…っ!
は、ん、っ、…待って。
僕…、何も持ってな……、支度も、してきてない…!」
窓に背を預けた紅葉は、服を乱されて息があがる中なんとか凪にストップをかけた。
「……悪い…、がっつき過ぎた…!
大丈夫、さっき買ってきた。」
凪はテーブルに置いた小さな紙袋を指差した。
それからふぅ…っと深呼吸をすると、紅葉を解放してバスルームへと誘った。
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