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第194話(2月②)(3)

2/14 バレンタインのこの日LINKSは久々にファンクラブイベントを行う。 イベントの内容は日帰りバスツアーを組んでのイチゴ狩り&摘みたてイチゴを使った映えスイーツ作り! トークイベントとグループでの記念写真撮影もあるということで、応募数が予想をはるかに越える事態となり、ギリギリまで定員数を増やしたが、それでも抽選になる程の人気だった。 仲良しの友人グループでの参加はもちろん、中には小さなこどもを連れた家族での参加者もいた。 「ねぇ、凪…。 イベント中…呼び捨て無理かも。」 参加者のファンの子達を出迎えながら紅葉は小声で隣の凪に告げた。 「…別にいいよ。 そこ意識し過ぎて喋らなくなるのは困るし。 大丈夫、ちゃんとカウントしとくから(笑)」 「えぇー?(笑)」 イチゴ狩りはメンバーがファンの子のいるハウスを巡り記念撮影。 摘み取ったイチゴをあげたりもらったりは出来ないが近距離での触れ合いにみんな大興奮だ。 「キャー!」 「凪くん寒くないのー?」 「暑い…。」 ハウスの中は暖かく、凪には暑いくらいのようだ。 いつの間にか薄手のニットを脱いでタンクトップになっていた。 「凪くん、お水飲む?」 心配した紅葉は小さなリュックからペットボトルを差し出し、それを受け取り飲む凪。 2人のツーショットにファンの子達も盛り上がる。 「お礼にイチゴ食べさせてあげるよ。」 「え、ダメなんでしょ?」 「え…?あー、 ここは良くない?(笑)」 周りがコクコク頷いているので、むしろ需要有りだと凪は紅葉にあーんとイチゴを与えた。 「うまい?」 「甘いっ!おいしっ! みんなも食べようよー!」 「…よし! いい写真撮れたよー!」 そんな2人をちゃっかりみなが撮影していたらしい。 キャーキャー言われながら、みんなでイチゴ狩りを楽しんだ。 続くスイーツ作りはタルト生地かパフェのカップを選んでもらい、生クリームやイチゴ、苺ソースやフレーク、キラキラした砂糖でデコレーションしてもらう。 メンバーも各自作る。 テーブルを周りコメントしながら撮影も。 光輝が説明をしながら捕捉する。 「皆さんー! この苺ソースは凪の手作りです! 昨日から作ってくれたんだよー!」 「そう…、みんなありがたく使うように(笑)」 LIVE明けの移動や長時間の作業より甘い匂いが辛かったようだ。 そんな凪は… 「…しまった。 ちょっと本気でやっちゃってた…(苦笑)」 お店に出せる程の完璧なパフェを作っていた。(もちろん、あとで紅葉に食べさせる) 「みんな食べながらトークも聞いてねー! 今日はお友達同士や家族で来てくれた方もいて、本当にたくさんの人に参加してもらえて、すごくアットホームなイベントになりました!ありがとう!手探りなイベントでどうなるかと思いましたが…なんかあっという間だったなぁ!楽しかったね!」 みなが続く。 「そうだね。 今日はみんなとすごく近くで、いろいろ話せて楽しかったです。 あのー、まず誘導用の看板が届いてなくて焦ったけどね(苦笑)」 実は朝イチからのハプニングにバタバタだったのだ。 光輝も顔面蒼白だったが、今はもう笑っていた。 「達筆な誠一がで手書きしてくれたから、結果的に手作り感出て良かったよ。 ただコンビニが遠くてね…、ナビで5kmって(笑)スタッフめっちゃ焦ってたけど(苦笑)」 「すごい書いた(笑)イベント中も紙と筆ペン持ったスタッフが『次、"左側通行"お願いします!』とか『"トイレ"3枚追加で!』とかもう可笑しくてさ(笑)」 「誠一的にイチゴ狩りよりそっちメインだった?」 「…そうかも?(笑)」 「俺は苺ソース作ってたからそのハプニングあとで聞いたんだけど、まぁ…うちはほんといろんなこと起きるね?(苦笑)」 「ホント(苦笑) でもみんなのご協力のおかげでいつも乗り切れてます!ありがとう!」 と、ここで中座していた紅葉が帰ってきた。 「紅葉、どこ行ってたの? 何で着替えたの?」 「苺ソースの染みがついちゃって…拭いてもらってたんだけど、さっきそこで転んだの…。へへ…っ!もう着替えるしかなかったんです、すみません。」 転んだのに紅葉がやたら明るいのには理由があった。 新しい服がドロドロになり泣きそうになっていた紅葉に、凪は自分のカットソーを着るように言って渡したのだ。 黒のデザインカットソーと自分の着替え用でもってきていたジーンズを合わせた紅葉はスタイリッシュでカッコ可愛いと評判だった。 「あ、ちょっと。時間だって…(苦笑) すみません、こんな感じで…(笑) 今日は本当にありがとうございました! 帰りのバスで今日撮影した写真と新曲のMV見れるから、お腹いっぱいで眠いかもだけど良かったら見てね!」 こうしてLINKSのファンクラブイベントは大成功に終わった。

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