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第197話(2月②)(6)
「はよ。
悪い、遅くなった…っ!」
5分遅れでLIT Jの練習スタジオに現れた凪。
メンバーは楽器を手に調整を行っているところで幸いまだ練習は始まっていないようだ。
凪は端にあるテーブルに荷物を置くと、最近すっかり専属のローディーとなっているRyuが用意してくれたドラムセットの前に急ぐ。
「凪…っ!
あとでちょっと話聞いて!」
「あ、ズルい!
俺が先っ!」
サスケとゆーじが競うように言い出した。
「これの後LINKSの練習入ってるんだよ。
俺は葵に用があるし…、マツくんどっちか引き受けてよ(苦笑)」
「ハイハイ。
ったく、一番年下の凪に頼り過ぎだよ。
リーダーは俺だからね?(苦笑)」
「だってマツくん休んでたし、なんかめっちゃイクメンになってるし!」
「ねー…、いーから早くやろーぜ。」
葵がマイク越しに急かしてきた。
4人はごめんと手を挙げて顔を見合わせるとLIT Jは練習を始めた。
「葵、これ紅葉からユキに。」
凪は紅葉から預かった苺を手渡すが…
葵は俯いて答えた。
「あー、…今ユキいないんだよ。
…ちょっと…入院してる。」
「えっ?!マジ?
大丈夫なのか?」
驚く凪。
紅葉は知らなかったようだから急なことなのだろう…。
「風邪だけど、念のためって感じ。
それ苺?
あー、生物…どうかな。」
「そーだよな…。
じゃあまた改める…。」
「悪い…。
じゃあ、お先…。」
「ん、お疲れ。お大事に。」
多分このままユキのお見舞いに行くのだろう、葵は足早にスタジオを後にした。
そんな姿を見てサスケが呟く。
「葵、変わったなぁ…。」
「ホントにね。
落ち着いたっていうか、真面目な葵にまだ慣れない…(苦笑)」
マツもそう言うが、歌ってる時も前よりいい顔してるよねと付け足した。
「Ryuー、余りもんで悪いけど、苺いる?」
「えっ?! いーんですか?
わー!頂きます!
嫁と娘が喜ぶッスー!」
若きパパでもあるRyuは嬉しそうだ。
ハキハキと片付けを手伝ってくれている。
凪も手を動かしながら話を聞き始めた。
「それで、ゆーじの話って?」
「それがさ、大変なんだよ!
今朝から要くんが風邪ひいたみたいで…!
俺…看病ってしたこともされたこともないからどーしたらいい?」
「え、要も?
風邪っぴきばかりだなぁ(苦笑)
熱とかは?」
「えっと…、さっきLINEが……38℃だって!
ヤバいよね?!」
スマホを片手にあたふたするゆーじ。
「落ち着け(苦笑)
とりあえず水分…スポドリとか飲まして冷えピタ。食べ物はお粥、うどん、ゼリー、フルーツとか軽めで。病院は?」
「嫌がってさ…。
咳とかないんだけど、もう心配で…!
ごめん、今日ギター相当ミスったわー!」
「…あー、スティック投げようかと思った…両サイドに…(笑)
疲れじゃねーの?
バイトの。」
凪が指摘すると頷くゆーじ。
「頑張りすぎたんだよなー…。
あー、あとさ……。
実はちょっと…進展ありまして。
…そーいうのも影響あんのかな?」
「………へぇ…。
詳しくは聞かねーけど…良かったね?
…お前が無茶してねーなら休ませれば大丈夫だと思うけど?」
「あーうんっ!
そっか!へへ…!
ありがと!
あ!何か食べたい物あるか聞いてみよー!」
幸せそうなゆーじへのお節介はほどほどにして、帰り支度をする凪。
マツな視線を送ると大丈夫だと合図を受けたが一応軽く話を聞いておく。
サスケの演奏も所々怪しかったのだ。
「夢の国デートはカナちゃんとの三者面談から始まったらしいよ(笑)
土下座してなんとか付き合えることになったって。」
マツの説明に笑い出す凪。
「ウケる(笑)
良かったじゃん!
行く前から相当浮かれてたもんな(笑)」
「結果良かったけどね!
ちゃんと本気だってとこを見せないと、付き合ってもらえなさそうだったし。
車で2人きりもNGだって言われてさー!
なんか気付いたら俺とあやなちゃんがカナちゃんに説教されてて…
もう必死っ!(笑)」
「なるほど…。
まぁ、彼女再出発の時期なんでしょ?
年齢的にもちゃんとしないとってことだよね。本人からだと言いにくいからねー。
汚れ役引き受けて…カナちゃんイイコだなぁ。
って…あ、俺が言っても説得力ないかー(笑)」
長年彼女を待たせた経験者であるマツが自虐的に言う。
そこへ割り込んだのはRyuだった。
「マツくんはこれから奥さんに尽くしまくるべきです!子ども大きくなったら捨てられますよ?」
「はい…、気をつけます。尽くします。」
「お前若いのにホントしっかりしてんなー(笑)」
「サスケくんもしっかりして下さいッス!」
「…おう…。」
一回り以上年下のRyuに言われたサスケは微妙に落ち込みつつも、久々かつ念願の"彼女"の存在に頬を緩ませたのだった。
「うちのバンド、春きたのかなー。」
「んー、早いんだか遅いんだか…(苦笑)」
マツと凪は顔を見合わせて笑ったのだった。
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