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第198話(2月②)(7)

「うーん……? ダメだな…。 誠ちゃんとカナがいないと分からないことが多いね…。」 2/16 企業向けのコンベンションLIVEを前にLINKSのボーカル、みなは呟いた。 一応誠一が来れない前提で曲のアレンジをして、昨夜はほぼ寝ずにギターの練習をして、今ギターを抱えてマイクスタンドの前に立っているが、全く自信がないようだ。 先程からスタッフに細かい確認事項を尋ねられるが、歌以外のことは即答出来ずに光輝の返答待ちにしている。 光輝は事務所の後輩バンドのフォローもあるので手一杯だ。ずっと指示書を手にあちこちへ行っていて自分のバンドのことは後回しになっている。 ここをいつもフォローしているのが誠一なのだ。 そしてボーカルみなに関わることはカナが担っている。 照明や特効、カメラのことなどメンバーとスタッフ間のパイプ役かつ様々なことを把握してくれていて、LINKSが"らしく"活動出来るように動いてくれているのだ。 凪は機材や変更のあった同期の確認中…。 あと緊張しまくっている後輩のフォロー中だ。 「僕は…何したら…?」 病み上がりの紅葉はベースを抱えながらオロオロするばかりだ。 「何も…。 アナログ派の私たちは歌って、弾くだけ。 …ヴァイオリンの方は大丈夫?」 「…うん!」 誠一のギターが削られるフォローとしてヴァイオリンのアレンジを加えたのだ。 その部分のベースフォローはもちろん凪が担う。 昨夜はずっと練習していた。 紅葉は精一杯弾こうと心を落ち着かせる。 「アレンジ…、誠一くんのギターが入っててもキレイだと思うんだよね…。」 思わず紅葉の口から本音が声に出た。 リハーサルはまずまずで、悪くはなかった。 しかし誠一がいない分はやはり大きい。 ライバルバンドたちから影で内部分裂や痴情のもつれなどと言われながら出番を待つ。 もちろん気分は良くない。 「アホくさ…(苦笑) みんな他人に関心ありすぎ。」 「ほっとけー。 あー、これどーなってる? 紅葉!チョロチョロしないでここにいて!」 変な奴に絡まれたりしたら困る。これ以上忙しく、ややこしくなるのはごめんだと凪はPCで誠一の仕事分の仕事をしながら紅葉を呼んだ。 「コーヒー買ってきたよー。 おやつも!見てー、探してた限定チョコがあった!」 「お前ほんと和むなぁ…。」 のほほんとしている紅葉に癒されたらしい凪は、コーヒーを受け取り紅葉を隣に座らせると休憩だと手を止めた。 ここ数日働き詰めの凪。 特に昨日は2バンドのスタジオ練習と家でも自主練だったのでずっとドラムを叩いていた。 夜は紅葉にマッサージしてもらいながら寝落ちしたほどだった。 「はい、このチョコ甘くないやつだよ。 腕とか脚ダルくない?」 「おかげさまでへーき。 ありがと。 これ無事に終わったらご褒美…ね。 期待してて。」 「っ!」 後半を耳元で囁かれ真っ赤になる紅葉。 「え?このあとインタビューだっけ? 待って、5分で着替える。」 「みな!ここで脱がないで!」 誠一の様子を見に行っててカナがいないのでみなのフォローをする人材がいないのだ。 光輝が慌てていて、みなが着替えている間廊下で待つ3人。 改めてカナもLINKSにとって重要なのだと再認識する。 「誠一くんは初期からのメンバーだよね?」 紅葉が聞く。 「そうだよ。高校の同級生。 でもその前からすごいギター上手くて有名で…時々大学生と一緒にLIVEに出てるくらいだったから名前だけ知ってて。 軽音部が有名な高校に行ったら誠一がいて、ギター聴いたらめちゃくちゃ巧くて…! でもそこの軽音部は聞いてたわりにそんなレベル高くなくてさ(苦笑) 一緒に外でバンドやろうって誘ったしたんだ。」 「へぇー!」 その後いくつかのバンドを経て、凪と元ベースを誘い、みなが加入したのがLINKSの始まりなのだ。 「光輝と誠一はその一年でだいぶ腕あげて、2年生になってから軽音部も取り仕切ってなんか賞もらったんだよな?」 「すごいー!」 「あー…、懐かしいね。 すごいいい経験だったなぁ。」 光輝が昔話を懐かしんでいると、みなの着替えが終わったのか楽屋が開いた。 同時に廊下から見知った2人が歩いてくる。 「誠一!」 「大丈夫ー?」 凪と紅葉が心配そうに駆け寄る。 「…出れる?」 「うん。出ます。」 親友(光輝)と目を合わせた誠一はいつものように微笑むと短くそう答えた。 「了解。連絡してくる。 凪と紅葉で支度手伝ってやって! カナはみなについて。」 カナには手話を交えて指示を出し、すぐに動き出す光輝にみんなが続く。 「誠ちゃん、今日も宜しく。 カナ、質問内容って事前に来てたっけ?」 こうして迎えたLIVE… 3曲の披露だが、誠一のギターも入り、アレンジによっていつも以上の魅力を見せたLINKSは注目を集めた。 「終わった…。」 業界の大物に囲まれての演奏は緊張感が半端なく、やっと解放されたと凪はホッとしている。 「何あれ…! 聞いてた以上で鳥肌立ったんだけど(笑)」 ぶっつけ本番だった誠一は驚きを隠せず動揺しているが、でもすごく良かった、楽しかったと笑っている。 「また熱上がったんじゃなーい? 早く帰りな? ちゃんとご飯食べなよー?」 「はい…。」 既に散々カナからお説教を受けたようでハハハとから笑いをする誠一。 「これで音楽祭とかフェスとか呼んでもらえるといいねー!」 「お疲れ様。 早くも仕事入ってきてるからまとめて連絡するね。」 光輝のにこやかな表情を見ると良い方向に進みそうだ。

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