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第201話(2月③)(1)

2月下旬 都内LIVE HOUSE LIT Jツアーファイナル当日 「凪っ! 遅くなってごめんね! みなちゃんの家で曲作ってて…! はい!これ、お弁当っ!」 ドーンっと差し出されたミニバッグには紅葉特製特大おにぎりと卵焼き、ウインナーなどお弁当の定番のおかずが入っていた。 「…デッカ、重……っ!(笑) はは…ありがとう。」 「どういたしまして! あ! こっちは豚汁! みなちゃんも作るの手伝ってくれた! みんなも食べて!」 「え、まさかの鍋ごと持ってきた…?(笑)」 再びどーん!とテーブルにのせた鍋。 こちらも重量がありそうだ。 ギターのサスケがギョっとしている。 「男前な愛妻弁当だな…?(笑) インスタ載せていい?」 「ん?いーよ。 はい、サスケくんもどーぞっ! 温まるよー!」 和気あいあいと楽屋で過ごす。 間もなく本番だ…。 「凪…!」 「ん? あ、旨いよ。」 「良かった! …あのね、明日ヴァイオリンの仕事…バック演奏の助っ人…入って…!」 「おー、そりゃあ大変だ。 …帰る?」 多分真面目な紅葉は一夜漬けで練習するのだろう。凪は心配になった。 「ううん!LIVEは観て行くよ。 でも、終わったら早めに帰るかも。 こっち(楽屋)にも寄るけど… あの…、あと…ご褒美、は…今度でもいい?」 LIVEの後は超興奮状態なので、高確率で求められることが多く、でもまだ昨日の余韻が残っている紅葉は応えられる自信がなかった。 「……了解。それは全然……。 何なら先に頂いた感じだし?(苦笑) ってか、身体大丈夫? LIVE中も無理せず座ってなよ?」 凪は紅葉をソファーの隣に呼び寄せて膝がくっつく位置に座らせた。 「うん…っ! わぁ…、メイクカッコいいね…っ! あの…、ドラムソロまでは袖で見ててもいい? せっかくだから近くで見たい…! あ、葵くんユキくんにはもう少ししたらユキくんママと来て、後は要くんがついててくれるって…!」 「おー。了解…。」 以前、LIVE直前に会場前で倒れて救急搬送されたユキ。葵はあまりのショックにその日のステージに立つことが出来ず、またその時のことがトラウマになっていて、今日までユキをLIVEに呼んだことはなかった。 今もずっとスマホを見たり、廊下を行き来してそわそわしているのはLIVEへの緊張ではなく、ユキが心配だからだ。 さんな葵を見て紅葉は告げる。 「…大丈夫だよ。 本番前は集中したいだろうからって僕に連絡してくれただけで…ユキくんとっても楽しみにしてて、元気だよ。」 「ん…。 なんかあったらすぐスタッフ呼んでって要にも伝えて?」 「うん。」 葵に説明すると、紅葉はさりげなくスマホを取り出して凪の写メを撮っている。 因みにユキと要は意外とウマが合うようで、互いに支え合うような友人となれたようだ。 「ん、最初袖で見る?いーよ。 …紅葉も少し食う?」 「じゃあひとくち…!」 「ねぇ! LIVE前にいちゃいちゃし過ぎだから!(笑)」 いつも通りラブラブな2人に他のメンバーは苦笑しつつ、マツの奥さんも息子を連れて顔を出してくれたり、リラックスした時間が過ごせたようだ。 そして緊張の中始まったLINEは1曲目から激しく、会場には重低音が響いた。 伸びやかで華やかなギター2人の音色が重なり、身体に響くドラム、安定したベースの旋律が音をまとめていく… 煌めくスポットライトの中、Aoiが歌い出すと一気にLIT Jの世界観へ…。 「カッコいい…!」 もちろん凪が一番カッコいいと思うけど、紅葉は一人のファンとしてLIT JのLIVEに魅了されていた。 「マツくんのベースは勉強になるなぁ…! やっぱこのバンドすごい…! この一体感は長年の絆そのものだよね。」 少し羨ましくも思えて紅葉はステージを見つめていた。 凪のドラムソロまで観ると、紅葉は目をハートにさせたまま曲の合間に2階の関係者席へ向かう。 ユキと要はステージに夢中で一生懸命恋人を目で追っている。 「あ。さっきまであやなちゃん(サスケの彼女)もいたよ。友達と来てるみたいで、下行くって。」 「そうなんだー! ユキくん、大丈夫?」 「うん!元気!」 ユキの体調も問題ないようで、その笑顔にホッとする紅葉。 迫力あるステージは順調に進み、会場の盛り上がりも一体感も最高潮! LINKSよりも男らしく、泥臭い、何よりLIT JらしいLIVEだ。 そして楽しい時間はあっという間に過ぎていき、アンコールへ…。

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