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第202話(2月③)(2)

3人で雑談していると、バンドTシャツに着替えたメンバーがステージに現れた。 拍手と歓声に包まれる。 「ファイナル最高ーっ!」 Aoiの叫びに会場は盛り上がる。 「こんな大きなハコ(LIVE HOUSE)で出来るなんて…ね。」 と、リーダーのマツ。 「ほんと。 あー…いい景色っ!」 ゆーじは客席の隅々まで見渡して2階席にも視線を送る。恋人の要を探しているのかその眼差しは優しい。 「…サスケ何やってんの?」 Aoiが聞くと、ニカっと笑うサスケ。 「記念写真ー! イエーイ!」 そう言いながら客席をバッグに自撮りしている。 「え、なんでお前だけ?(苦笑) せっかくだからみんなで撮ろうぜ! 凪も来て!」 Aoiの言葉に凪はドラムセットを離れステージ中央へ。他のメンバーも集まり、マイペースな彼らは写真を撮る。 そして次の瞬間… 大きなBGMがかかる。 ステージ奥、ちょうどメンバーたちの視線の先にスモークがたかれ… 「え?何?」 「何事っ?!」 予定と違うと焦るゆーじと何事かと驚くサスケ… マツと凪は嫌な予感がしていた。 「じゃーんっ!! サプラーーイズっ!」 「…はぁーっ?」 何故か不機嫌そうなAoiの声をマイクが拾っていた。 会場は割れんばかりの歓声だ。 「翔くんだっ!」 紅葉も客席で驚きの声をあげた。 「久しぶりー! LIT Jの初代ドラマー!翔ですっ! ドイツから凱旋帰国だよー! あはは!ビックリしたー? その顔が見たかったんだよねー!」 相変わらず明るい翔に笑うLIT Jのメンバー。 凪も知らされていなかったようで笑いながらも頭を抱えていた。 「…何ー? どーしたの? …あっ!まさか…出戻り的な?」 「あー…翔のパートナー若くてめっちゃ美人だもんね?」 悪ノリするサスケとゆーじ。 でもその顔は久々の再会が嬉しくて堪らないのを隠せていない。 「違ぇーよっ! えっと…、」 「悪い、翔! うちには今、凪という若くてイケメンなドラマーがいるんだよね。」 Aoiも参戦し、懐かしい掛け合いが続く。 「そう!お前より頭も顔も良くて、ドラムも上手い!細かい仕事も出来て、そして何より凪の作る料理が旨い!」 「ほんと、それ!」 「お前ら…完全に凪に胃袋掴まれてんじゃねーかよ!(笑)」 しばらくコントのようなやり取りをして笑い合うと、落ち着いたのかマツから順に翔と握手を交わしていた。 「あ、そーだ。 LIVE中だった。 で?何の用?」 スタッフから時間を巻くように指示がきて、Aoiが切り出す。 「…大人の事情で今回セッションとか出来ないんだけど、来月ここで俺の今やってるバンドが来日公演やることになったんで宣伝しにきましたー! マジでめっちゃカッコいい曲ばっかりだからみんなも遊びにきてねー!」 「へぇー!すげーじゃん!」 「イエーイ! あとちょっとだけ日本にいるから、関係者のみなさま!お仕事待ってます! 稼いで来いって言われてて…へへ…!」 「お前完全に尻に敷かれてるじゃんー(笑)」 ステージから捌けた翔。 メンバーは定位置に戻る。 「あー、あー…なんか、懐かしいな?」 「ほんと。みんな年くったはずなのに中身全然変わってねーな(笑)」 「…え、大丈夫かな、俺ら(笑)」 「じゃあ原点回帰な曲でも演ろうか…。 翔はLIT Jを去ったけど…変わらず俺らの大事な親友で…、同じこのステージでLIVEをやる…音楽は今も俺らを繋いでくれてる。 そして凪…!お前がいてくれて良かった! LIT Jは今日という最高の日を迎えられた!ほんと最高だ!」 Aoiに名前を呼ばれ、凪はドラムを叩き出す。 サポートではなく、正式なメンバーとしてあの日自分迎え入れてくれたメンバーとファンに感謝を込めて… この日一番の盛り上がりを見せるLIT J 「…次がラストです…。 …あ…!その前に!! 言うの忘れてた…。 俺ね……結婚しました。」 Aoiの爆弾発言に客席からは悲鳴とどよめきが響く。他のメンバーもこの日2回目のサプライズに驚く。訳が分からない!と言った表情でギターを抱えるサスケとゆーじ。 紅葉と要も聞いてなくて、でも相手は一人しかいないはずだ。 ユキは固まったままステージを見つめていた。 Aoiは続ける。 「これからも俺の全てをかけて歌うことには変わりないから…! みんなの、未来に虹がかかりますように… 『Rainbow Sky…』」

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