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第206話(2月③)(6)※微R18

紅葉もうとうとし始め、明日運転する予定の凪はノンアルコールに切り替えて翔と2人でグラスを傾けた。 「今更だけど、突然お邪魔しちゃって悪かったよ。まさか元メンバーが全員家族やら恋人が出来てて泊めてもらえないとは思わなくて(苦笑)」 翔が冗談混じりに謝罪するが、凪は気にするなと首を振る。翔一人ならあちこち泊まり歩くのもアリだろうが、サチも一緒だし自宅がベストだっただろう。 「みんな落ち着いてくれて良かったなって最近やっと思えてる(苦笑)」 「凪はLIT Jだと一番年下だけど、最初から一番落ち着いてるよな。」 「…ぁー…、どーかな…? 仕事はまぁ、いーんだけど。 LINKSもLIT Jもやりやすいし、さすがにもうスタッフやメンバーにキレたり当たったりすることはなくなったかな。 でもこいつ(紅葉)が絡むと、ね…(苦笑)」 「そりゃあしょうがないでしょー! 凪は人一倍独占欲強いからね…(苦笑)」 イタイところを指摘される凪。 「………。関係を公にして多少ラクになったっていうか動きやすくなった?けど、そこはあんま変わんないなぁって。 なんか時々歯止め効かなくなんだよね。 …そんなもん?」 「そうだねー…。 変わらないでしょ。…惚れてんだし。 それに珊瑚も紅葉くんもどんどん綺麗な色っぽくなってくる時期じゃん?年齢的にも。 結婚してるし、本人が他に目がいかなくても、めちゃくちゃ目つけられてるし(苦笑) もー、毎日ヒヤヒヤ! 俺のものなんだから俺が抱いとかなきゃ!ってなるよねー。 こっち来る前、相当張り切ってきちゃったよ。おかげで腰が死んでさ…。ヤバかった。 いや、飛行機のせいかもだけど…、いやー日本のマッサージ最高に優秀! あっ、そーいう意味でもお邪魔しちゃってごめんね?(苦笑)」 「……いや…(苦笑)」 さすがにそれ以上答えられなくて、言葉を濁す凪。でも2人が来てくれて紅葉の笑顔もたくさん見れて充実しているせいか、健全な夜も悪くなかった。 翌朝… 成田まで翔とサチを見送りに来た。 今回は愛犬たちが一緒なので空港の外でハグでバイバイだ。 「……っ、!!」 笑顔で2人の背中を見送った直後、ポロポロと泣き出す紅葉。 極力目立たないように凪は黙って背中を貸してくれた。彼のコートの端を握り、反対側は平九郎に挟まれながらなんとか車まで歩く紅葉。 凪にリード。引かれる梅も時々紅葉に視線を送り心配している様子だ。 「着いたよ。 …大丈夫? 寂しいよな…。」 「う、ん…っ! サプライズ、嬉しかったけど… また来てくれるかもって期待、しちゃう。」 「…また、会えるから。 とりあえず、翔くんは来月来るし(苦笑) もしかしたらまた誰か連れて来てくれるかもよ? あー、まだ、分からないけど…。 ごめん、無責任に期待させるようなこと言った…。」 「っ!!ううんっ!」 紅葉が落ち着いたところで、車に乗り、次に目指すのは凪の実家だ。 休憩を挟みながらの長距離移動の車内。 久しぶりの2人きり(愛犬たちはいるけど…)にお互いを意識していた。 「凪…、ここ過ぎたらもう高速?」 「ん?多分そうだけど…?」 「…じゃあキス、しよ?」 「今っ?!(苦笑)」 「早く…!信号変わっちゃう…!」 「え…、マジか…!(苦笑)」 真っ昼間だが車内でキスをねだられて凪は躊躇しつつもそっと唇を重ねた。 「ん……っ!」 満足そうな色っぽい息遣いを近距離で感じながらキスを堪能する2人…。 翔とサチの目を盗んで軽いキスはしてたが、その時とは違う空気感が2人を包む…。 プップー…! 「っ! あー、ほら…!(苦笑)」 案の定、青信号になっていたらしくクラクションを鳴らされてしまった。 「ごめんね…!」 「…危ないから…続きは、あとでね…?」 「えー? う、うんと…、あ、お風呂! 一緒に入ろ?」 いつも実家では嫌だという紅葉。 それでも大好きな温泉でイチャイチャくらいはOKらしい。 でも触れ合ったら絶対それだけでは済まなそうだ。 「ふ…っ! じゃあ…ホテル行こっか? どっか良さげなとこ探して予約しといてよ。」 「だ、ダメっ! 苺狩り行くし! ヴァイオリンの演奏もお呼ばれしてるし! スタジオの見学も行くでしょ? 子犬ちゃんのお世話のお手伝いして、平ちゃん梅ちゃんも一緒にいっぱい写真撮らないと! ほら、忙しいもん!」 「えぇー?(笑)」 言葉遊びのように笑い合いながら2人は京都を目指すのだった。 END

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