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第221話(6月) (1) ※微R18
「…んと…、Ryuくんが凪の専属スタッフ…ローディーになるってこと?」
「はい。自分のバンド…他のメンバーが就職とか進学で解散するんで…。
俺…子ども2人いるのにフリーターはマズいだろって社長(光輝)がスタッフとして雇ってくれました。裏方仕事も好きなんで有難いです。
…で、当面は一番忙しい兄さん(凪)に付くように言われて…。あの…、改めまして…中村竜之介です。
送迎とかで顔合わすことも多くなるかと思うんで…、えっと…もしお二人の邪魔してたら言って下さい。…宜しくお願いします。」
以前から交流のあった竜之介がスタッフとして採用され、礼儀正しく改めて挨拶してくれた。
竜之介と年齢の近い紅葉は新しい仲間に喜んだ。
以前イベント時にボディーガードをしてもらって顔馴染みでもあるし、
凪としても既婚で仕事においても信頼のおける彼なら自分と紅葉の側においても安心だと有り難くサポートを受けることにしたのだ。
「わぁー!そうなんだね。
お世話になります!こちらこそ宜しくね。」
「竜之介は機材とかレコーディング関係も勉強したいんだって。でももしどっかのバンドのサポートとか呼ばれたらそっち入っていいからな?」
「ありがとうございます。」
「じゃあまず機材とセット、改めて説明するから付いてきて。LIT JとLINKSで違うとこあるから…混ざらないように…。」
「はい。」
紫陽花の見頃も終わり初夏とも言える暑い日が多くなってきた6月下旬…
数年振りに合宿を行うことになったLINKS
正直、練習だけならLINKSスタジオで足りているのだが、夏フェスや新曲の準備、秋冬のツアーに向けて集中しようとメディア関係の仕事から離れて合宿を決めたのだ。
計画していく中で、LIT Jのメンバーもうちもやってみる?と言いだしたので合同合宿にすることにした。
スケジュール的にLIT Jが先に始めて、2日後にLINKSが到着予定。
今回の合宿は家族(恋人)同伴可(要相談)となったため、紅葉はLIT Jの合宿開始日に合わせて2日間休みを取り、愛犬を連れて明日から現地入りする。
そして主にLIT JのLIVE時にオープニングアクトを務めてくれている若手のバンド2組も参加することになった。
因みに若手バンドはLINKSとLIT Jの動画撮影など雑用を手伝うこと、部屋は大部屋という条件でスタジオ代と食費無料という厚待遇。
LINKSとLIT Jはそれぞれ専用スタジオと一棟ずつ居住用のコテージが用意されて、個室が与えられる。
明日からの合宿に向けて準備は進む。
「2セットフルで持って行く感じですか?
写真撮っても?」
「フルではないけど、スタジオ違うから持てるもんは持ってく…。これリストね。
あ、ごめん、予備はリストに入ってないからまだ増える。
あー、マジ助かる。
向こうでのセッティングも頼むね。
写真だっけ?撮ればいーよ。その方が早いだろ。」
「じゃあ早速進めます。」
「分からなかったら声かけて。」
「はい。」
凪と竜之介の様子を伺っていた紅葉はタイミングを見計らって声をかける。
「凪ー!」
「ん?」
「僕は?
何お手伝いしたらいいー?」
今までは2人で準備していたので、少し寂しく感じているのか紅葉は遠慮がちに凪に訊ねた。
「紅葉は自分の支度と、俺の服も適当に頼んでいい?…それから平九郎たちの準備と…
あー…献立考えないとだから食べたい物リストアップして?」
任せて貰えたことが嬉しくて明るさが戻る紅葉。
「うん、分かったー!
ふふ…!凪、合宿楽しみだねー!」
「…ん。
あ、紅葉ー?」
「なにー?」
凪は紅葉に近付いて囁く。
「今日、するよな?
合宿中できるか分からないし…。
今日このあと仕事で遅くなるけど待ってて?
…あと一応それ系の荷物も詰めて?
ってか、準備張り切るのはほどほどにして体力残しといてねー?」
「っ!え…っと…
…もう…っ!
…ん…、分かった…っ!
凪…、ほどほど…だよ?」
顔を赤くしながらもそう答える紅葉に凪も満足そうだ。
そっと唇を合わせる2人…
「凪兄さん…これって…
あ。すんません。早速邪魔しちゃって…(苦笑)」
「っ!」
「悪いな竜…(苦笑) 今行く。
紅葉…、準備頼むね。」
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