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第224話(6月)(4)

北関東 合宿地にて 星の数ほどとは言わないが、数多くのバンドが存在して、そのバンドの数以上にバンドマンも存在するわけで… 一応今回の合宿もそこそこの実力と経歴のあるロックバンドの集まりだが、バンドの方向性もバンドマンの個性も、彼らの家庭環境からマイノリティまで様々… ベテランと若手の交流も合宿の目的の一つだが、いろんな人間が集まるといろんなことが起こるというものだ。 この日、合宿場所にやってきた凪と紅葉。 愛犬2頭に加えて、昨夜から預かっている愛樹も急遽一緒に連れてきた。 みなが体調不良のため、光輝が仕事を調整して病院へ連れて行く(愛樹の面倒もみる)というのでさすがに大変だろうと子守りを任されることになったのだ。 幸い、移動中はよく寝てくれていたため順調に目的地まで辿り着くことが出来た。 凪と紅葉も休憩(と、ちょっとだけイチャイチャ)をとり、紅葉は荷物の整理、凪はスタジオ棟へドラムのセッティングへ向かった。 「うっわ……本物…! これでスッピン…?どこもいじってないってマジ…?あ。ヤバ。先輩だった! …整形してないってマジですか? ノーメイク??透明感スゲー…ですね?」 こうやって興味本意で絡まれるのはまだ良い方で、紅葉も受け流すことを覚えた。 「…?メイクしてないよ? お昼寝しちゃってたから顔洗ってきたとこ。 …んと……無理に敬語じゃなくても大丈夫だよー?えっと…コタくんとスイくん…? 同い年だよね?」 「やった! とりあえずLINE聞いていい?」 紅葉に話しかけていたコタ(ギター担当)が食い付き気味にスマホを取り出し、紅葉は少し戸惑う。 「…どうかな…?考えとくね。 あ!えっと…、凪は……LIT Jどこか分かる?」 「あー…旦那様ね…(苦笑)確か2かな。 LINKSは4。 表こっちー。あとでグループLINEにもUPされるらしいけど。」 少しキツめな目元と綺麗な顔立ちのスイ(ギター)が答える。 「ありがとー!」 「いーえー。」 LIT Jのスタジオでは凪と竜之介がセッティングをしていて、他のメンバーも音合わせをしていた。 「カッコ良い……」紅葉は小さく呟くと邪魔をしないように、凪が忘れて行ったタオルをドアノブにかけた。 そしてLINKSのスタジオへ入る。 LINKSはまだメンバーも揃ってないし、機材の調整も終わってないので、今日はヴァイオリンの練習だけする予定だ。 誠一はLINKSの居住棟でPC作業をしながら愛樹のお昼寝を見守ってくれている。(平九郎と梅も一緒。) ロビーではコタとスイが話し込んでいた。 「いやー…確かにかわいー…ってか、マジ顔整ってる!けど…、首元見た? …ギリ見えるか見えないか位置のキスマほどエロいものなくね?しかもなんつーか、つけたて?あと、あれは旦那(凪)しか見えてないねー(苦笑)」 「あはは(笑) 凪様、独占欲強いよね。 ちょっとくらい俺とも遊んでくんないかなぁ?」 「…でたー!スイ、悪い目してる!(苦笑) さすがに無理じゃね? あの方は元々ノンケでしょー?」 「でもめっちゃタイプなんだよなぁ…。 …顔と身体が。」 「スイ…ほんとイケメン好きだよな(苦笑)」 「おーい!サボってないで練習!」 「今行く……」 バンドメンバーに呼ばれた2人はスタジオへと戻っていった。 2時間… 集中して練習する紅葉に対して、タバコ休憩やお喋りが主な若いメンバーもいる。 「見習らおうねー?」 「腹減ってもう無理でーす。 近くにコンビニとかないんですか?」 「今日ってバーベキュー? とりあえずもう飲んでいいっスか?」 「……もう少し待っててくれるかなー? ごめんねー!」 「マツさん、これ…俺の弟です。」 「あぁ、連れてくるって連絡くれた? …って!…えっと、いくつ??」 「10歳…」 「……10歳…?えー…小学生かなぁ…? けっこう歳離れてるんだね。えっと?どーしよ…。」 「親の再婚で…。 急に一緒に来たいっつーから…。親仕事でいねーし…1人にさせとくのもって…すんません…。適当にゲームとかさせておくんで。」 「…う、うん、なるほど…。 とりあえず居住棟行って荷物置いてもらって…。布団足りなかったらフロントに言って出してもらって?」 「了解っス…!」 光輝の代わりにみんなをまとめるマツは大変そうだ。ここへ来てもう100回は心の中で光輝に早く来てくれと願っている。

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