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第226話(6月)(6)
※NL表現(妊娠)があります。ご注意下さい。
合宿初日の夜は交流会ということでみんなでわいわいとバーベキューを楽しんだ。
知らない環境のせいか、途中から愛樹がグズりだし、みんなであやしていたが泣き出したら止まらなくなってしまった。
愛樹お気に入りの誠一が抱っこしても、仲良しの平九郎と梅のところへ連れていっても、昨夜効果があったキーボードでピアノの音色を聞かせたり母親であるみなの歌声や映像を見せても泣き止まず…
どうしようかと困っていると、東京から駆け付けた光輝が到着した。
父親に抱っこされた愛樹はやっと泣き止み、大きく呼吸を繰り返すと少しずつ落ち着きを取り戻した。
「パパに会いたかったんだね。」
「嬉しくて泣きそう…っ!」
誠一にそう言われると、既に感動で泣いている光輝。愛娘をしっかり抱き、優しい揺れで寝かし付けていく。
「良かったね…。」
親子の絆を目の当たりにした紅葉はほっこりした気持ちと少し羨ましい気持ちが入り交じり、そう呟いた。
凪はポン…と、紅葉の頭に手を乗せると光輝たちを部屋に案内した。
光輝はガードを取り付けたベッドに愛樹を寝かせて、部屋の入口に凪、紅葉、誠一を集める。
まさかのミーティングである。
「…明日にしない?
光輝も疲れたでしょ?」
荷物を運び入れた誠一がそう提案し、紅葉と凪も続く。
「そうだよ。
今日は愛樹ちゃんについててあげて?」
「飯は?
まだならなんか作って持ってくるけど…」
「ありがとう。
でも早く…直接ちゃんと伝えたくて…!
ごめん、えっと…実は…」
電話でもLINEでもなく顔をみて伝えたいのだという光輝に3人は少し身構えたが…
「あんちゃんがもうお姉ちゃんかぁ…!
ふふ…!楽しみだね!」
「ん、そうだな。」
話の内容はみなの懐妊の報告だった。
「光輝の表情が不安そうだったからさ…、重い病気とかじゃなくて良かったよ…!」
悪いニュースではと感じていた誠一は胸を撫で下ろした。
「無事に産まれるといいね。」
「ほんと…!
だってあいつ…!
先週MVの撮影で大量の水被ってんだぞ?」
最近のLINKSは多忙なため、リビングで話す3人が心配するのも無理なかった。
仕事優先の彼らの予定を少しオーバーして授かっていたらしく、夏バテかと思われたみなの体調不良は実は悪阻だったようだ。しかも暑さでの脱水もあり入院中…。
今後の仕事については大事をとって出演が決まっていた夏フェスや音楽番組など辞退したいと頭を下げる光輝に「そんなの当たり前だ!」と誠一が怒った。
確かにいくらかのペナルティーや損失はあるかもしれないが、命とは比べ物にはならない。
みなの体調も心配だが、光輝も喜びと心配のし過ぎで相当疲れた様子で、3人の反応にホッとしたのか今は親子並んでぐっすりと眠っている。
「この合宿期間は夏休みにしていいって言ってたけど…とりあえず凪はLIT Jの練習あるもんね?」
「そーだな。飯も作らねーと…。
…あ?誰だ、こんな高い肉買ったやつ!」
今日のように毎晩バーベキューをやってたら予算がいくらあっても足りないと領収書を前に呟く凪。
「うわー…カナちゃん(みなのスタッフ、経理も担当)怒るだろうねー。
えっと…凪が残るなら紅葉くんも残るもんね?」
「うん…、残る。
確かにお肉美味しかった…!
誠一くんはどーする?」
「僕は…とりあえず光輝とフェス辞退するにあたって代替え案模索しつつ…まぁせっかく来たし?
ワイナリー巡りでもするかな?(笑)」
「…一緒にトンボ捕まえる?
お馬さん乗る?」
気を遣う紅葉に苦笑する誠一。
気持ちは嬉しいが、紅葉と違い都会育ちのインドア派なのだ。
「あ、大丈夫だよ(笑)
…星も見たかったんだけど、2~3日は雲が厚くて無理そうなんだよね…。
ってことで…、とりあえず今夜は飲み会参加してこようかな。」
「…サスケたちと?」
「そうそう!若者と飲むって言ってたから間に入ってくる(笑)
ってことで、仕事の相談はまた明日。
…ごゆっくり。」
「っ!」
「ふ…っ!飲みすぎんなよー?」
誠一の含みを持たせた言い方と笑顔に驚く2人だった…。
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