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第8話

 男同士でする準備は色々と面倒で、その間に気持ちがおさまってしまうのでは、とも一瞬思ったが、そんなことはなかった。むしろぼくを気遣ってくれる友人の優しさに触れていると、友人同士でこうすることがごく当たり前のようにも思えてくるし、そうすると体のほうも素直に快感を拾いはじめる。 「……あ、あっ! ぁん、ぁ、ぐれ、ん」 「冬弥……冬弥……」  ぼくの尻にあの立派なものを突っ込み、夢中で腰を振っている友人の悩ましい顔つきを見るほどに、きゅうきゅうと勝手に内壁は友人を締め上げて、友人は苦悶にも近い声をあげて甘い吐息を聞かせてくる。  ぱんぱん、と鳴っているのはぼくの尻たぶで、ぐちゅっぐちゅん、とやらしい音を響かせているのはぼくの尻と彼の陰茎の結合部で。ひっくり返されたかえるのような格好をして、男に抱かれてはしたなく喘いでいるなんて、ほんの数時間前のぼくに想像ができるだろうか? できるはずがない。なんでこんなことになっているのかもうぜんぜん分からないが、分かるのは、きもちよくて、きもちよくて、もうどうだっていい、ってことだけだった。  ぎゅうと抱きしめられ、キスをされて舌を入れられてとろとろに掻き回されて、その間もあのデカすぎるものがごりごりとぼくの内臓を突き上げて。突き上げられるたびに、はしたない声が漏れて、えぐられるようなナカがきもちよくて、もっとしてほしくて、たまらなくなる。こんなに奥を突き回されていいとこを擦られて犯されてきもちよくて悦んでるなんて、こんなのはぼくの体じゃない。なぶられたくさん抓られた乳首は赤くぷっくりと腫れ上がって、悲しくもびっくりもしてないのに涙はぽろぽろ勝手にこぼれるし自分でさえ聞いたことのない嬌声が漏れるし、もうぼくの体ではないみたいだった。紅蓮とセックスするための淫らな体になってしまった。 「冬弥、かわいい」  涙を一滴ずつ吸い取るように、ちゅ、ちゅ、と友人がキスを落とす。ぼくが愛おしくて仕方ないとでも言うような仕草。  ぱちゅんぱちゅんぱちゅんぱちゅん、と止めどなく続く律動とそれに伴う快楽に、心も体もぐちゃぐちゃにされる。抱きしめてくれる友人に必死にしがみつき、あん、あん、と女のような喘ぎ声をあげながら、ああ、とぼくは思った。――きもちいい、あたたかい、しあわせだ。ぼくはこうされたかった。こいつの逞しい胸板に、こうやって組み敷かれて、こうやって抱きついてみたかったんだ。たぶん。きっとそうだ。 「すげぇ、気持ちい、ああ、冬弥っ、」 「ぐれっ、ぐれんっ、も、やっあっ」 「おれ、そろそろイキそ……」 「ぼ、く、もっ……ぐれん、もう、もうっ」  何度目かの大きな快感が押し寄せてくる。友人の裸は燃えるように熱いがぼくの裸もいまはもうどこを触ってもとろけてしまいそうに熱かった。二人の体の間でぷるぷると揺さぶられているぼくのちんこが、もう吐き出すものもないのに、襲いくる快感を予期して震える。目の裏がちかちかして、頭のなかが真っ白になっていく。 「あっ! あっああっ、やぁっ、いく、いくッ」 「冬弥」  腰を一段と奥へ奥へ押し付けるようにして、ぎゅう、とぼくの全身を抱きしめ、彼は、 「好きだ。好きだ、冬弥」  ぼくの耳元で、確かにそう言った。  ずんっ、と奥を突き上げたものにぼくも半ば押し出されるように、 「すき、すき、ぐれん、ぼくっも、すき、ぃ――……ッ!」  答えて、絶頂を迎えた。  脳みそがドロドロになって何も考えられなくなる、気持ちいい以外の感情がなくなる。内腿がふるえ、かくかくかく、と足が揺れて、友人の熱い太いそれをみっちりと抱き込んでいる内壁に、どく、どく、どく、と脈動を感じる。友人が精を放ったのだとすぐに分かった。射精はなかなか収まらず、どくどくと体の中に液体が注ぎ込まれるのを自覚すると、またびりびりと快感に襲われて、イッてしまう。全部吐き出したはずのぼくの陰茎が、とろとろとろ、とだらしなく白濁を漏らして、ぼくの腹の上を汚した。 「……はあ、あ、ぁ……ん」 「……冬弥……」  振り乱して汗ばんだ額に貼りついた髪を掻きあげ、そのまま頭を撫でられる。ちゅ、ちゅ、と啄ばむようなキスを落としてくる友人に、されるがまま、快感の余韻の中でぼくはふわふわとした。 「ありがとう、すごく良かった」 「ん……ぼくも……紅蓮」  一体何度イカされたんだっけ、どっと疲れが襲ってきて、目蓋がとろんと下がる。ぬくくて心地のいいまどろみのなかで、ぼくはゆっくりと意識を手放した。 「……ぐれん、すき……」 「……うん。おれも好き」

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