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第5話

 使用したバスタオルを脱衣所のカゴに放り、キッチンと一間になったリビングへと戻る。母はキッチンでさきほど切ったバラを水揚げしていた。水を張ったステンレスボールの中に植物を入れ、茎の部分を斜めにカットする。パチン、パチンとハサミを入れる音を耳にしながら、篤郎は母の隣で何か食べるものがないか冷蔵庫を漁った。 「なあ、何か食べるものない?」 「あら、やだ。食べなかったの?」 「食べたんだけど、腹がへっちゃって」  波乗りは激しく体力を消耗する。さっきまで一緒だった幼なじみ、飯島夏海は家がサーフショップを開いていて、彼の両親は元プロサーファーだ。その影響からか、夏海は物心つくころから海に入ることが好きだったという。篤郎がサーフィンを始めたのはそんな友人に勧められてのことだった。  そうめんならあるけどという母の言葉に、篤郎は袋入りのアーモンドをポリポリと齧りながら、それでいいと返事をした。リビングのソファに座って、テレビのリモコンを動かす。数日前、ある人気俳優の不倫がスクープされて、その相手が同性だったこともあり、世間では大騒ぎだ。どこのチャンネルを回しても扱っているのは皆同じネタで、篤郎はつまらなくなってテレビを消した。不倫は確かに問題かもしれないが、それが同性同士だって別に構わないじゃないか。他人がどうこう口出しする問題じゃない。  退屈しのぎにスマホを弄っていると、母が茹でて氷で冷やしたそうめんを運んできた。 「サンキュ」

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