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第6話

 篤郎はいただきますと手を合わせると、小皿に盛ったネギやキュウリ、すり下ろしたショウガといった薬味をつけ汁に入れ、勢いよくそうめんをすすった。 「あ、そうそう、あとで源ちゃんのおうちにスイカを持っていってちょうだい」 「は? なんで?」 「田舎から送られてきたのよ。源ちゃん、スイカが好きでしょう? 前にうちで食べたときに、うまいうまいって喜んでいたじゃない」 「そうじゃなくて、なんで俺が?」  母さんが自分で持っていけばいいじゃないかという篤郎の反論に、母はちらりと冷たい視線を寄越した。 「だってあんた暇じゃない」  言葉の端に微かな棘を感じて、篤郎は言葉に詰まった。母はひとつため息を吐くと、水揚げ作業に戻った。  篤郎はほっと息を吐いた。さっき自分で消したテレビを点ける。ワイドショーを何とはなしに眺めながら、少しだけ居心地が悪い気持ちでそうめんをすすった。  高校三年の夏休みといえば、皆受験勉強や塾通いで忙しい時期だが、篤郎は塾にもいってはおらず、毎朝波乗りで遊びほうけている。この状況がまずいことはもちろんわかっていた。でもわからないのだ。自分が将来何になりたいのか、いったい何に向かって努力をすればいいのか。隣の家の住人、若くしてその才能を開花させた源との圧倒的な差を見せつけられたら、自分なんてちっぽけなものだ。  まあ、比べものにすらならないけど・・・・・・。 「ごちそうさまでした」  篤郎はため息を吐くと、食べ終わった皿を流しへと運んだ。スポンジに洗剤をつけて食器を洗う。  気が進まないことはとっとと済ませてしまおう。 「持っていくの、どれ?」  篤郎はコーヒーを淹れている母に訊ねた。

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