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第10話
そんなことどうでもいいからあつも一緒に昼寝をしようよと、縁側にごろりと横になりかけた源の腕を篤郎は掴んだ。
「どうでもよくなんかねえよ。急でもないし」
少なくとも篤郎にとっては違う。源の腕を掴む手のひらにじわりと汗をかいた。
ときどき隣の家を訪ねてくる花園画廊の源の担当者の男が、篤郎は昔から苦手だった。篤郎から一方的な敵意を向けられても、怒らずにするりと躱してしまうだけの自信と余裕。ただのガキでしかない自分と比べたら、すべてを兼ね備えているように思える大人の男。いまのふたりの関係がどうなっているのか、篤郎には知るすべもない。
なあ、源とあいつって、いまどうなってんの? 誰でもいいなら、俺だってーー。
ふいに、強い焦燥が篤郎の胸にこみ上げる。篤郎は源のTシャツの前身頃に縋りつくと、自分のほうに引き寄せた。そのまま、キスする位置まで顔を近づける。
「源、俺は? どうでもいいなら、相手は俺じゃだめなの?」
冷静な声を出そうとしても、必死さは消せない。鼓動はありえないほどにドクドクと鳴っていて、身体の外にまで聞こえそうだ。
源は困ったような笑みを浮かべ、何も答えない。
普段よりもずっと近い距離に源の顔があって、その目が篤郎を見つめている。篤郎はごくりと唾を飲んだ。頬がじわっと紅潮する。互いの唇が触れるか触れないかの刹那、源の手が顔の前に差し込まれ、ずいっと押しのけられた。
「ばーか。お前はまだ子どもだよ」
篤郎はカッとなった。源の腕を掴み、無理矢理キスしようとする。
「源、俺、もう子どもじゃない。俺にだって源の相手くらいできる」
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