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第12話

 東京の高校へ進学した中学時代の友人から遊ぼうと連絡があったとき、篤郎は最初断ろうとした。というのも、横浜の美術館で見たいと思っていた展示が、ちょうどその日が最終日だったからだ。だったら横浜まで出てもいいという友人の言葉に、一瞬妙だなと思ったものの、それならいいかと篤郎は応じた。  待ち合わせは午後からだったので、篤郎は午前中のうちに美術館へと向かった。その日の展示は、メキシコの有名な建築家のものだ。色と光を効果的に取り入れた彼のデザインは、日本でも多くのファンを持つ。中でも今回の展示のメインは、オリジナルの家具や骨董品が特別に持ち込まれていることだった。画集を売っていたけれど高くて手が出せずに、篤郎は一番気に入った作品のポストカードを二枚売店で求めた。  約束の時間の少し前に、待ち合わせ場所へと向かう。夏休みだからか、人が多かった。そのとき、「篤郎」と呼ぶ声が聞こえた。  今回の発起人、長沢のほかに、同じく中学のときに仲がよかったクラスメイト、相澤、神林、小池と懐かしい姿を見つけて、綻びかけた篤郎の顔が固まった。友人たちの並びに、なぜか連れと見られる女の子たちの姿があったからだ。その横には源への想いを知って、篤郎がコンパと名のつくものには一切参加しないことを知る夏海が気まずそうな表情を浮かべていた。恐らく今回の集まりの本来の目的を篤郎には黙っておくよう、長沢たちに口止めでもされていたのだろう。 「久しぶり! 元気だったか~?」  馴れ馴れしく肩を組んできた長沢の腕を、篤郎は邪険にどかした。 「……言えよ」 「言ったらきてないくせに。お前昔からこうゆうの苦手だったよな」  篤郎が不機嫌なことにも構わず、長沢はにやりと笑った。 「わかってるなら最初から誘うなよ」 「なんで? 夏海にきいたぞ。お前、まだ彼女いないんだろ? だったら気軽な気持ちで女の子たちと遊ぶくらいいいじゃねえか。見てみろよ、今回の女の子たち、かわいい子たちばかりだろ?」

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