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第20話
朝日に反射する水面が眩しい。まだ昼には遠いのに、チリチリと肌を焼く日差しがきょうも暑くなりそうなことを告げていた。
篤郎は大容量のペットボトルのキャップを捻ると、ミネラルウォーターを飲んだ。乾いた身体に水分が浸透するのがわかる。ついでに余った分を頭の上からかけていると、夏海がにやにやした顔で篤郎を見ていた。
「なんだよ、気持ちわりいな」
「へへっ。それって日高さんとだろー?」
「へ? そうだけど何で?」
「だってあっちゃんすごくうれしそうなんだもん。きょうずっと心ここにあらず~って顔をしてた」
図星を指されて、篤郎は赤くなった。
「べ、別にそんなことないだろ、普通だろ」
動揺のあまりどもってしまう。確かに源と個展にいくことは楽しみだったが、そんなに顔に出ているのだろうか。
「そんなことあるもんね~」
それまで篤郎を揶揄って遊んでいた夏海が、ふっと真顔になった。
「あっちゃん、よかったねー」
にこにこと、まるで自分のことのようにうれしそうな夏海に、篤郎は気恥ずかしさを感じながらも、サンキュ、と答えた。
家に帰り、シャワーを浴びてから、自室の鏡の前でああでもないこうでもないと頭を悩ませた。別にデートじゃない、ただ企画展にいくだけだと言い聞かせても、口元は自然にゆるんでしまう。せっかくの源とのデート(篤郎にとっては)だ。あまり変な格好はしたくない。かといって張り切っているのがバレバレなのも恥ずかしかった。散々迷って、まだ一度か二度しか着ていないTシャツの上から、黒の半袖シャツを羽織り、紺のパンツに合わせた。約束の時間の少し前に、隣の家の門をくぐる。
「源ー、用意はできたかー?」
普段と同じ態度をとらなければと思うのに、浮き足立つ気持ちを抑えられない。玄関の内側にひとの立つ気配がして、篤郎はドキッとした。慌てて深呼吸をする。しかし、冷静な態度も源の姿を見るまでだった。普段のだらしない格好と違い、涼しげな麻のシャツにジーンズを合わせた源は、別段お洒落をしているわけでもないのに、思わずはっと目を奪われてしまうほどに男前度が上がっていた。
ず、ずるいだろ……!
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