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第41話

「当時の僕は、正直あまりいい恋愛をしていなくてね、先生も、あのひとも一見そうは見えないけれど、寂しいひとだった。ひとを信じることができないくせに、人恋しくて、本人は気づいているかわからないけれど、誰よりも愛情を欲していた。僕たちは似たもの同士だったんだよ。てっとり早く寂しさを埋めるためには、お互いちょうどよかった。でも、きみに泣かれてからは、少しだけ変わったのかな。先生も、そんな自分に戸惑っているようだった。もちろんほかに身体だけの関係を持つ相手はいたようだけどね、少なくとも僕と寝ることはなかった。きみがずっと誤解をしているのは知っていたけど、そんな恨みごとも少々あって、きみにはちょっとだけ意地悪をしてしまいました」  言葉とは逆に、自分を見つめる日下の目は静かで、怒っているようには思えなかった。  ゴウゴウと海が鳴っている。なんて言葉を返していいかわからずに、篤郎は俯いた。 「……悪い」  自分がこの男に対して一方的に敵意を持っている自覚はあった。それは篤郎の醜い嫉妬だ。日下自身は何ひとつ篤郎に対して悪いことはしていないのに、八つ当たりをされるほうはたまったものではないだろう。  篤郎が素直に頭を下げると、日下は白い煙を吐いた。 「……まあ、僕も半ば楽しんでいたところがありますしね。きみが先生とのことで誤解して、キャンキャン吠えている姿は大層かわいかったですし」 「はあ~?」

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