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第51話

「……源のいう通りだよ。人は裏切るものだし、絶対なんてものはない。俺がいま源を好きだと思っても、いつかは変わるかもしれないよ。でも、だからといって最初からなかったものにするなよ、源!」  俺のこと、欲しいなら欲しいと言えよ……! 簡単に諦めるなよ……! 「あつ……」  怖いほどの沈黙が落ちる。やっぱりだめなのだろうかと篤郎が不安に思ったころ、ふわりと包み込むように源の腕の中に抱きしめられた。 「……あつが好きだよ。本当はもう誰の目にも触れさせたくないくらい、お前のことが好きだ」  自分を抱きしめる源の腕が微かに震えている。その声に湿ったものを感じて、篤郎ははっとなった。  源……? 「お前の健やかさも、そのまっすぐな心も、すべてが俺にとっては眩しいよ。……何度もその手を離そうとしたんだ。お前は俺なんかが関わってちゃいけない、もっと相応しいやつがいるからって」  篤郎を遠ざける言葉を口にしながら、その腕は裏切るように篤郎を強く抱く。 「……本当は、もうずっとお前のことが愛しかったよ」  息が止まる。胸が苦しくて堪らない。そっと身体を離した源の手が篤郎の髪に触れた。困ったように泣かないでくれと源に言われ、篤郎は自分が泣いていることに気がついた。けれど、そう言う源自身の瞳だって濡れているじゃないか。言葉もなく泣き崩れる篤郎の身体を、源が引き寄せるように胸に抱く。 「あつ……。ごめん、あつ……!」

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