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第57話

 くちゅくちゅと濡れた音が羞恥心を増し、叫び出したくなる。 「ま、まだかよ? もうそろそろなんじゃね?」  振り返ることもできずに平静を装って訊ねれば、やけにうきうきとした楽しそうな声で「いやいや、まだだろ。もっと柔らかくなるまでほぐさなきゃな」と言われ、こんな状況なのに背後にいる源をぶん殴りたくなった。  そのとき、源の指が篤郎の中のある一点に触れた。  へ? 「え、あ、嫌……っ!」  篤郎の口から悲鳴のような声が漏れる。 「見つけた、あつのいいところ」 「ま、待って……っ」  うれしそうな源の言葉とは反対に、まるで泣いているかのような頼りない声は篤郎の意思とは関係がないものだ。縋るような気持ちで源を振り返ったのに、やけに爛々とした底光りのする目でにっこりと微笑まれ、篤郎の背筋はぞくっと震えた。 「あつのここ、だいぶ柔らかくなったよ。俺の指を悦んでいるみたいに食んできて、かわいいのな」  は、源……っ!?  源の指がそこに触れるたびに、びりびりとした強い刺激が感じすぎてつらい。これまで自慰では感じたことのない強烈な快感に恐怖すら覚えているというのに、源が篤郎の身体にキスを落とすたびに、頭がぼうっとして何も考えられなくなっていく。 「……いれるよ」  どれぐらいそうしていただろうか。低く掠れた声で囁かれ、篤郎がえ、と顔を向けようとした次の瞬間、篤郎の後孔に源のそれが押し当てられた。 「あ、あぁっ!」  これまでぼうっとしていた頭が吹き飛ぶように、ただ苦しいということしか考えられない。 「あつ、力を抜いて」  固く強ばった身体を慰撫するように源にさすられても、痛い、苦しいという思いしか篤郎の頭になかった。ひどい腹痛になったときのような不快感と、冷や汗が篤郎の全身をびっしょりと濡らす。  痛い。痛い。苦しい……! 「篤郎……」

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