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第58話
背後から源の手のひらで額を掻き上げられ、涙に濡れた眦にキスをされた。
「苦しいならやめるか?」
ハッとして振り返ると、篤郎と同じく額に汗を滲ませ、苦しそうな表情を浮かべながらも、労りのこもった目で見つめる源と目が合った。
いま、篤郎が嫌だと言えば、源はきっと止めてくれるだろう。それは、源が篤郎を大事に思ってくれているからだ。
自分を好きだという源の気持ちを疑っていたわけではないけれど、いま初めて実感をともなって篤郎の胸に迫ってくる。痺れるような喜びが、篤郎の胸を震わせた。後ろに手を回し、源の頭を引き寄せるように口づける。
「ぜってーやめるな」
その唇に笑みを浮かべれば、不意をつかれたように見開いた源の瞳が、まるで眩しいものでも目にするかのように細められた。
「あつってば……」
源の瞳に決意ともいうべき光が灯る。
「なるべく苦しませないようにするから」
次の瞬間、ものすごい質量を持った源のそれが篤郎の中に入ってきて、息が止まるかと思った。辛さを少しでも紛らわせようと、源は篤郎の萎えた性器に手を伸ばすと、快感を探った。身体のあちこちに源の口づけが落ちるたびに、篤郎は自分を思う源の気持ちを感じた。苦しさや痛みが消えたわけではない。じりじりと源のそれが篤郎の中に進み入ってくるたびに、冷たい汗が篤郎の全身から吹き出す。けれど篤郎はもう止めてほしいと思わなかった。源がこれまで関係を持った男たちと自分を比べることもなかった。ただあふれような愛しさが篤郎の胸を満たす。
「ーーはいった」
「マジで?」
ほっとした源の気配を感じて、篤郎が振り向くと、うれしそうに笑った源に素早くキスをされた。
……源?
これまでは彼の内面を写し取るように、源の目の奥にはいつもどこか昏さがあった。まるで雲が晴れるように、その影がきれいに消えて、きらきらと輝く澄んだ瞳が自分を見つめている。篤郎は思わず見とれた。
「……動くよ」
しばらく篤郎の身体になじむのを待っていた源が、ゆっくりと律動を始める。そのとき、源のそれがさっき篤郎の感じたある一点を擦った。
「あっ! ああ……っ!」
篤郎は大きく目を瞠ると、びくんと身体を跳ね上げた。源にそこを擦られるたびに、元気をなくしていた篤郎の性器は勃ち上がり、ぽたぽたと透明な滴を零す。
「ふぁん……っ! や、こわ……っ! あ、……ん!」
女みたいな声を上げているのが自分だとは信じられない。
「……すごい。まるであつの中が縋りつくように離さない。持っていかれそうだ……」
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