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第60話
余裕をなくした源の声を気にするまでもなく、篤郎は自分のそこが源の律動に合わせて蠕動しているのを感じていた。
なんだこれ、なにこれ……。
何か自分がとんでもない場所へ連れていかれてしまいそうな恐怖と不安が篤郎の中を駆けめぐる。こんなにもセックスとは気持ちがいいものなのだろうか。それとも、源とするこれが特別なのだろうか。わからない。
「あぁん……! あ、ああ……んっ!」
いまでも充分感じすぎてつらいのに、身体の奥にある何かが篤郎にまだだと告げている。まだこれは終わりではないのだと。
「あ、あん……っ」
羞恥で焼き切れそうなほど恥ずかしい格好をして、浅ましいほどに相手が欲しいのだと自分をさらけ出す。涙と汗と涎でぐちゃぐちゃになって、格好つける余裕なんてない。セックスとは、こんなにもすべてを相手にさらけ出すものなのだと、篤郎は初めて知る。それでも、篤郎は源と抱き合えるのがうれしかった。
――愛おしい。
「あつ。かわいい……。あつ……」
自分はとても見られた顔をしていないのに、源はその頬を愛おしそうに撫で、少しの躊躇いもなく口づける。
「ふぅ、あぁ……ん!」
「あつ。好きだ、篤郎……」
あ……っ。
ふっと身体が宙に浮き上がる。頭の中が真っ白になった瞬間、篤郎をぎゅっと抱きしめる源の腕がぶるぶるっと震えた。そのとき胸を満たしたあふれんばかりの源への愛情に、篤郎はたとえようもない幸福を感じた。
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