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第4話

清司は何度か後孔を弄ると、下着から指を引き抜いた。 確かめるように動かしている人差し指と親指の間には粘ついた糸が引いているのが見える。 カッと顔が焼けつくように熱くなる。 その卑猥な粘液がまとわりつく義父の指を清正がじっと見ていたからだ。 「あ、あのっ…待ってください…」 「ん?」 穂はたまらずストップをかけた。 いつも義父にされている行為を清正に知られてもいいのだろうか。 こんな行為、たとえ尾村家の子孫を残すためという名目であっても決して赦されるものではないはずだ。 だが清正を前に、どういう風に訊ねたらいいものかもわからない。 「あの…あの…っ…あの…」 うまい言い回しが見つからず、馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返していると、動揺を察知したのか清司がフッと微笑んだ。 「あぁ、今日君の相手をするのはこの清正だよ」 「え…?」 その言葉に穂は更に惑乱する。 「穂くんも知っていると思うけど清正は海上自衛官だ。一年の殆どを艦の上で過ごしている。訓練はもちろん、規律も厳しい。彼らは僕らが想像もつかないような緊張感の元で生活しているんだよ。そういう緊迫感が続くと人は無意識に生命危機を感じるんだそうだ」 清司はそう言うと、穂の目の前に立つ清正の逞しい肩に手を置いた。 「さて、そこで雄の身体にある変化が起こる。それが何かわかるかな?」 面影のよく似た二人の男の視線が穂に降り注ぐ。 穂は思わずテーブルの上で縮こまると首を左右に振って応えた。 「生殖本能で子孫を残そうとするんだよ。そして種はより強く、濃くなる」 清司は息子の肩から手を滑らせると、股間を指す。 「つまり清正の精子はより強い尾村家の遺伝子を持つ精子ということなんだよ」 そして満足げに微笑んだ。 清司の理論は恐らく間違ってはいないのだろう。 生命の危機を感じた時、雄が生殖本能で発情するという話は穂もどこかで聞きかじったことがある。 だが、それを利用して長男の嫁に次男を差し向けるなんておかしい。 穂の身体がガタガタと震えだす。 今更怯えたところでもうすでに取り返しのつかない事をしている自覚は重重あるが、それとこれとは別だ。 夫の父親のみならず、弟とまでしてしまったらそれこそ穂は罪の意識で潰れてしまいかねない。 だが義父はそんな穂の心中など気にする様子もなく、いつものように柔らかく微笑んでくる。 「安心しなさい。僕もちゃんと手伝うからね。穂くんはいつも通りリラックスして気持ちいいことだけ考えていればいいから」

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