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第24話
「……おれの家ここ。」
ボロいアパートの一階。
どの部屋のポストにも郵便物がパンパンに詰まっている。
借金取りらしき男たちがドアを叩く音が聞こえる。
……そういう人間たちがいっぱい集まってる。
「おれの家は一番端の、あそこ。」
「その紙、家の中置いてきたらすぐ出ろよ。
三分たって出てこなかってら家に入るからな。
あ、あと靴履いたまま入れよ。
なんかあった時裸足じゃ危ないからな。」
いや、俺も一緒に入った方が……
でも、不法侵入とかにならねぇか……
悠介いるから不法侵入にはならないか?
あの人が何か考えながらブツブツ呟いている。
「大丈夫だって。
置いたらすぐ出てくるし、物もすぐ取ってこれるし。
……今の時間なら出かけてるか寝てるだろうし、……大丈夫。」
大丈夫だって言ってるけど不安はある。
もしまた昨日のようになったら……
そう思うと足が竦 む。
突然頭をクシャっと撫でられる。
驚いて振り返ると、
「よっしゃ、じゃあ頑張ってこい!
待ってるから。」
覚悟を決め、家の中へと入る。
……父親のいびきが聞こえる、寝てるみたいだ
お母さんは……帰ってきた様子はない。
こっそりとおれのカバンからキーホルダーを取り出す。
何の変哲もない、水族館で買ったイルカのキーホルダー。
お父さんが今みたいにおかしくなる前に三人で出かけた時に買ったもの。
いつも肌身離さず持っているお守りのような存在。
ぎゅっと握りしめる。
あとは……書き置き、テーブルの上に置いとけばわかるかな……
ガタッ。
後ろから音がなり驚いて振り返る。
「……かえってきたのかぁ?
どこぉ、いっれらぁぁ。」
ヤバい、父親が起きてきた。
逃げ出そうとしてもドアの所に父親が立ってる。
どうすれば……!
「にげやがってぇぇ。
おえのもののくぜにぃぃ!」
後ろは窓、そこから出てあの人に助けを求めれば……!
慌てて窓に駆け寄る。
鍵をあけて……!
「!?あ、開かない!!」
歪んでいるのかどれだけがたがた揺らしても開けることが出来ない。
ど、どうすれば……
そうこう考えているうちにも父親がすぐ近くまで来ている。
「ど、どこぉ、いくんだぁぁぁ!」
怖い、殴られる、逃げないと、怖い。
体が竦 んで声も出せない。
誰か、たすけ……
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