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第26話

「な、なんで……?」 「……ほら、警察もう来るだろうしいくぞ。」 あの人がさっさと歩いていく。 振り返りもせず、ただ前を見据えて歩いていくあの人の背中に必死で縋り付く(すがりつく)。 思いつくままに早口でまくしたてる。 「ま、待って! 何でだよ!他人なんかじゃねーじゃんか! 他人とか言ったらなんか、話、変になるしあんたお父さん殴ったから怒られんだろ! 下手したら警察に捕まるじゃんか! だから、おれと知り合いで保護してくれたっていったら……!」 「悠介。」 いつもヘラヘラ笑っているあの人がおれの言葉を(さえ)ぎるように静かに俺の名前を呼ぶ。 「……俺はただのおせっかい野郎だ。 たまたま気づいて乗り込んでお前の親父を殴ってお前を連れ出した。 まぁ、一応正当防衛ってことで怒られはするけど捕まりはしねぇだろ。」 「……そうじゃなくて!いや、そうだけど! なんで他人にならなきゃいけねーんだよ! だってあんた、何も悪くねーじゃねーか おれ、助けてくれて怒られる必要ないのに……!」 泣きそうになるのを必死にこらえながらあの人に必死に訴える。 あの人が真面目な顔をしておれに言う。 「俺はお前のことを保護なんてしてない。 助けるって言うならお前が売春しようとした時点で警察なり、何なりに連絡しなきゃいけなかった。 お前の怪我を見たときに病院に連れて行くべきだった。 未成年と知らなくてもお前に手を出した お前を部屋に連れ込んだ。 未成年と知ってもお前を帰らせなかった 家に泊まらせた。 全部これは犯罪なんだよ。」 「そ、そんなこと……」 「お前は助けてもらったと思っても俺がやったことは全部間違いだ。 やっちゃいけねぇことだ。 ………………ただ、お前が昔の俺に見えて助けてやりたいと思って間違った方法をとってしまった。」 おせっかいとも言えない、犯罪だ。 あの人がそう、静かに言う。

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