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第27話
もう、何も言い返せなかった。
犯罪
その言葉がおれに重くのしかかる。
怪我の手当してくれたのも。
ご飯を食べさせてくれたのも。
家に泊まらせてくれたのも。
話を聞いてくれたのも。
……優しく背中を撫でてくれたのも。
全て罪、許されないこと。
おれのせいであの人を犯罪者にしてしまう。
そうしたくなければ初めて会ったと言うしかない。
たまたま助けられたと言うしかない。
……そうすることでおれが売春しようとしたこともバレない。
おれを守るために、おれのために……
「……っ……」
お父さんとお母さんとの思い出のキーホルダーを握りしめながらどうしようもなく溢れてくる涙を必死に拭い、とめようとする。
あの人が手を上げ、……その手は何も触れることなく下がる。
「………………いくぞ。」
もう、名前を呼んでくれることもない。
あの人のぬくもりを感じることも許されない。
あの人はもう振り返ってはくれない。
背筋をしゃんと伸ばし前を見据え歩いていく。
おれは、涙を流さないように耐えながらうつむき、下を向いて歩き出す。
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