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第28話
あの人と戻ったあと、本当に警察が来ていてお父さんが警察と言い争っていた。
おれとあの人を見た途端、暴れだして警察の人がどこかへ連れて行ってしまった。
あの人が警察と何か話している。
おれは何も言えず、うつむき黙り込んだ。
警察がパトカーに乗るように言ってくる。
ふっと顔を上げてみればあの人は別のパトカーに乗ったところだった。
急にあの人との思い出が溢れ出てくる。
おれとあの人が出会った時。
一緒にご飯を食べた時。
怪我の手当てをしてくれた時。
他愛ない会話をした時。
おれの話を笑わずに聞いてくれて時。
背中を撫でてくれた時。
頭を撫でてくれた時。
手を引っ張ってくれた時。
(待って。)
(いかないでよ。)
(おれはあんたに伝えたいことが……)
声を出して引きとめたい。
ありがとう、ってお礼も言えてない。
ご飯美味しかったって伝えたい。
迷惑かけてごめんなさいって……
名前、聞いたことなかったな、教えて欲しい。
言いたいことがいっぱいある、けど、
『……ここから先、俺たちは他人だ。 』
「ひぐっ…………うぁっ……あ、……ずっ…………
うぇぇ……ひっ…………うわぁぁぁぁ!」
あの人が乗ったパトカーが走り出す。
おれは、どうしようもなく溢れる涙を止めることが出来ず、ただただ、泣き続けた。
───────
おれはその後、警察署まで連れていかれた。
おれは警察に聞かれるまま答えた。
お母さんは家から出ていきました。
出ていってからは帰ってきてません。
お父さんには前々から暴力をふるわれていました。
お父さんが家で暴れて、あの人が助けてくれました。
手を引っ張って外へ逃がしてくれたんです
あの人とは……
…………あの時初めて会いました。
名前も何も知りません。
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