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第30話
「ごめんねぇ、少し待っててね。」
田口さんに連れられ院長室に入る。
「お待たせ。」
そう言って持ってきたのは温かいお茶と。
……漬物。
おれが固まっていると、
「……若い子はお菓子とかがいいんだろうけど意外と悪くないんだよ。」
あの人のことが思い浮かび出す。
お茶と一緒に漬物を出てきた。
「ど、どうしたんだい?」
田口さんに声をかけられハッとして見れば涙が流れている。
止めようと腕で涙を拭っても止まらない。
止められない。
「……すみません、すぐに落ち着くんで。」
そう言えども涙は止まってくれない。
「……泣きたかったら泣いてもいいんだよ。
ここには僕しかいないから。
いくらでも泣きなさい。」
その一言で涙腺がぶっ壊れたかのようにあの日のようにおれは泣きじゃくった。
「……すんません。」
やっと落ち着き田口さんに謝る。
「気にしないで。
ここに来た子とかにはよくある事だよ。
僕も慣れてる。」
そう言いながら新しくお茶を入れてくれる。
ありがとうございます、と言ってお茶をすすり、漬物に手を伸ばす。
「……悠介くんがよければここに来るまでの話、聞かせてくれないかな?」
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