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第31話

話すべきか迷いはしたが、 (どうせ警察から話は聞いてんだろ) と思い、ポツリポツリと話した。 あの人のことは隠したまま。 「……そっか、それは……大変だったね。」 話し終えたあと、田口さんはそれだけつぶやいた。 おれは答えずにお茶をすする。 田口さんが何か考えるように俯いている。 「あの、田口さん、 まだなんかありますか。 無いなら部屋帰ってもいいですか?」 「ああ!ごめん。 ……うん、大丈夫だよ。 あ、今日の夕食の点呼はちゃんと出るんだよ たまにはみんなで一緒に食べよう。」 「……わかりました。」 しぶしぶと返事をして院長室を後にする。 「……こぐっちゃん、だよなぁ多分。 うーん……」 ​─────── 「あー、疲れた……」 田口さんと話した後小学生くらいの子供たちに捕まって遊びやら洗濯物畳みやらやって疲れた。 あげくに夕食も色んなやつに囲まれて騒がしい食事だった。 ……わいわい言いながらする食事は久しぶりだったから悪くはなかったけど。 「今日はもう風呂入って寝るか。 明日のバイトの準備して、」 ……ん?玄関前に誰かいる? おれは窓に張り付きじっと見る。 田口さんと誰かの保護者とかか? こんな時間にもくるんだな。 つか、なんで入ってこないんだ? 田口さんと話していた人が一瞬上を見上げる、 のを、見た瞬間おれは走り出す。 子供や職員さんを押しのけて玄関へと一目散に駆ける。 あの人は……! 玄関には扉を施錠している田口さんがいる。 「田口さん!」 「悠介くん、っ。」 おれは田口さんを殴りかかるような勢いで掴む。 「田口さん、鍵開けてください! おれ、あの人に……!」 「悠介くん落ち着いて。」 「お願いします!」 おれは頭を下げ頼みこむ。 「……悠介くん、もう夜遅いから外出は許可出来ないよ。 ちょっと僕の部屋で話そうか。」 「!おれは、」 「僕の部屋で説明するよ。」 有無を言わさない物言いにおれは口をつぐむ。 玄関を振り返り……拳を握りしめ田口さんの後を追う。

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