33 / 38

第33話

「あー……やべぇな。」 夜中にこっそり起きだし体の傷を確認する。 今は九月、まだまだ暑い時期だ。 半袖ですら暑くてたまらない。 おとうさ、……いや、あいつから受けていた傷は幸いにも腕や顔はアザしかなく半袖でも問題はなかったが…… 「足と腹の傷がやべぇ…… つか背中もやべーよな」 足や背中や腹には包丁で切られた傷がある。 それを隠すために長ズボンをはいていたためすごく蒸れる。 そのせいで傷が悪化して化膿している。 「……どうしよう。 ばんそうこう貼るだけじゃもう無理か……」 ベットの上に座り込みうんうんと考える ……小暮さんが手当てしてくれた時はなんか薬を塗ってくれてた、気が、する。 明日あたり薬買ってきてどうにかするか。 なぜが傷の部分が熱をもっていることを特に気にとめずズボンを元に戻し眠った。 ……?なんだ、体が熱い?いや寒い? 体が上手く動かせない……頭がボーッとする。 「おーい、悠介。 お前今日バイトとか言ってなかったか? まだ寝てて間に合うのかよ。」 同室の田丸(たまる)に話しかけられる、が返事をするための声が出せない。 「おーい悠介、無視すんなよ。 …………仕方ねぇな、優しいオレが起こしてやるか。 起きろよー……ってあれ? 悠介、お前なんか顔赤くないか?」 急に目の前に伸びてきた手に目を見開き身を縮こまらせる。 「……わりぃ。 ちょっとまってろ、先生呼んでくる。」 バタバタと出ていく足音を聞きながら体を母親のお腹にいる胎児のように体を丸める。 ベットの柵をゴンゴンと叩かれ布団から顔を出す。 「悠介、先生きたぞ。」 「悠介くんちょっとごめんね。 触ってもいいかな?痛いことしないから。」 おでこに何か近づけられたと思うとピピッと音がなる 「あー……かなり熱あるね。 悠介くん、ちょっと移動しようか。 起きれ、なさそうだしどうしようかな。」 「オレが悠介運ぶからはるちゃん先生布団運んで。 こいつちっちゃいし軽そうだからオレでもできる。」 「気持ちは嬉しいけど……」 先生たちが話しているのを聞きながらおれは眠気に襲われ意識が沈む。 『悠介、りんごすりおろしてきたよ ほら、あーん』 お母さんはおれが風邪をひくといつもりんごを食べさせてきた。 おれはりんごはあまり好きではない。 でも栄養がたくさんあるんだからと食べやすいようにしてくれていた。 「お母さん……」 ひやっとしたものが頭にのせられる。 重い瞼ををゆっくりと開く。 おかあ、さんじゃない。 誰だこの女の人? 「あ、ごめんね起こしてしまって。 寝てて大丈夫ですよ。 …………えっと、多分悠介くんとは初めて会うかな。 皆からはるちゃん先生って呼ばれてます。 よろしくね。」 「よろしくおねがいします……?」 「寝てる間に色々手当てさせてもらいました。 ……怪我はね、放置したら危険です。 こんな風に熱が出ることもあります。 怪我したら私に言ってください。 約束ですよ。」 静かに諭すように言われる。 あの人、……小暮さんとはまた違う温かさ。 ……これってなんだろう。 「悠介くん寝てて下さい。 風邪は寝て治すのが一番の特効薬ですから。」 そっと冷たい手で頭を撫でられる。 ……最近、たくさん撫でてもらってるな。 嫌、じゃないけどなんか、むず痒い? 「治ったら田丸くんにもお礼言いましょう。 感謝の気持ちは大切です。」 頭を撫でられる心地良さに身を投じ眠りにつく。

ともだちにシェアしよう!