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第34話

ピピッ 「熱、下がりましたね。 今日一日寝たら明日は部屋に帰りましょうか。」 「あ、ありがとうございました。」 「……どういたしまして。 田丸くんにもお礼言ってくださいね。」 そう言ってはるちゃん先生が部屋を出ていく。 おれは一人になった部屋で布団の上にゴロンっと寝そべる。 ……風邪なんて久々にひいたな。 あんなふうに看病されるのも久々だ。 ……胸がふわふわする感じがする。 なんだろう、これ。 まだ熱があるからなのかな。 きっとそうだろう。 布団にくるまり眠りにつく。 「おい、悠介迎えに来たぞ。 さっさと起きて部屋帰るぞ。」 「!?」 乱暴に掛け布団を取られ一瞬で目が覚める。 「驚きすぎだろ、ほら早く早く。 ずっといたら迷惑になるから。」 「お、おう。」 田丸にならい布団を持ち部屋を出る。 「おし、布団はここにひいて…… 枕はどこに置けばいい?」 「い、いやあとは自分でやるから。」 「そか。」 あっさりと離れ自分の机へと戻る。 「あ、あのさ、田丸、 その、……ありがとな先生呼んでくれて。」 「んーん、別に普通だろ? 困った時はお互い様ってやつだろ。」 田丸は何でもないことのようにケロッとした顔で言う。 田丸に背を向けベットを整えていると、 「なーなー悠介、お前晩御飯まで暇だろ? せっかく同室になったよしみにちょっと喋ろうぜ。 オレ今スッゲー暇なんだよなー。」 「おれ、安静にしてろって言われてんだけど。」 「だってお前入ってきた時に自己紹介したぐらいじゃんか。 あとは何話しかけてもああ、とか、うん、しか返してくれねーし。 なあー、しゃーべーろーおーぜー。 それぐらいなら怒られねーだろ。」 「わかったわかった、わかったから。 静かにしてくれ。」 でかい声でしつこく言われ根負けしイスに座り田丸と向き合うような形になる。 「で、喋るって何?」 「悠介、お前友達いないだろ。」 「あ?!」 初っ端から失礼なことをぶっこまれる。 「だからオレが友達になってやんよ!」 「はぁ!?」 何言ってんだこいつ? あ然としていると急に手を掴みブンブン振りだす。 「いえーい、今日から友達ー!」 ニコニコと嬉しそうな笑みを浮かべられる。 な、何だこいつ? 馴れ馴れしすぎるし距離感がバグってる。 頭おかしいのか? 唖然としながらされるがままでいると田丸が二カッと笑う。 「悠介、お前来たときから笑わねーしいつも寂しそうな顔してたから。 そんな顔も出来んだな。」 「……わざと?」 「当たり前だろ! 最初からこんなんだったらキョリ感おかしすぎんだろ!」 「自覚あるんだ。」 顔を見合わせてぷっと笑い合う。 「やり方荒すぎんだろ!」 「いやだって他にどうすればいいかわかんねーからよ。 オレ、あんまり友達とかいねーし。」 ひとしきり笑い合って落ち着く。 少し考え田丸に聞く。 「なあ、田丸。 お前ってさなんでここに入ってるんだ? い、いや言いたくなかったら別にいいけど……」 「ん? ああオレは小三の頃からここに居たり出たりしてるぞ」 「出たり入ったり?」 「そ。オレ、かーちゃんと相性悪くてさ。 家に帰ると最初はいいんだけど時間が経ってくると自分の思い通りにならないオレに怒り出すんだよ。」 「……?」 「あー簡単に言うとな……」 オレのかーちゃん完璧主義みたいなやつなんだよ。 何をやるにも完璧じゃないと許せない! って感じで。 で、その息子のオレもすべてしっかりさせないと気がすまないって感じで。 勉強、家事、仕草、歩き方、話し方……全部完璧じゃないと気がすまないって感じで。 一つでもできないとごはん抜きになったり叩かれたり…… かーちゃんがヒステリック起こして家中の家具壊しちまったこともあったな。 まあ、それで色々あって保護されることになったっていう感じ。 「……びっくりしただろ? あーほら、オレここにいるやつとかとちょっと違って普通? に見えるってよく言われるし。 実際かーちゃんとの仲も悪いわけじゃないし。」 「……そう、なのか」 いや、普通に重くね? なんでこいつこんな普通に喋ってんの? 「おいおいおい、ちょっとしんみりしちったじゃねーか。 はいはいこの話終わり! 面白い話しようぜ! あ、そうだ。 悠介、お前隣の徳丸って喋ったことある?」 「は? 徳丸ってたしか……小さくてナヨナヨしたやつ?」 気を紛らわすためにお茶を飲みながら返事をする。 「そーそーアイツ。 アイツな、背中に入れ墨あって……汚っ!」 驚いて漫画のようなリアクションをしてしまう。 お茶が変なところに入って咳き込む。 「は!? あいつタトゥー入ってんの?!」 「そーそー、つかお茶拭けよ。 風邪治ったら見せてもらいに行こうぜ。 アイツノリノリで見せてくれるから。」 「……」 「あと、オレの妹も一階にいるんだけどな、今度紹介するわ。 道沢桜って言うんだけどな、オレが言うのも何だが美人でな……」 「えっ、田丸って名字じゃねーの?!」 「今更かよ! オレの自己紹介何も聞いてなかったな? オレ道沢田丸だからな。田丸が名前。」 「変な名前。」 「変とか言うなよ!」

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