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第5話

 * * *  昨日のいやらしいハッキングは、練習中には現れなかった。どのくらいのパターンが登録されているのかは知らないけど、世界中の過去のデータを収集しているはずだから、数時間の練習程度では同じものに当たらなくても不思議はない。 (ああいう反則的なパターンこそ、僕が乗り越えなきゃいけないものなのに)  メロンパンを食べ終えて訓練室に戻ると、斗真がいた。訓練室は、ひとつじゃない。別の部屋に行こうとすれば、腕を掴まれた。 「待っていたんだ。さっき、優弥と合同練習をしたらしいね」 「したけど、何?」 「僕とも、して欲しい」  力のこもった目で言われて、うなずいた。ここで断ったら、どうして優弥はよくて、自分はダメなんだと迫られて、めんどうな事になりそうだ。優弥より先に、勝負をしようと言われていたし。 「ありがとう」  気配を緩めた斗真が、サポーター席に移動する。 「試合会場は森の中。シューティング形式でかまわないか?」  ロボット大戦の中には、機体同士を戦わせるのではなく、シューティングゲーム形式のものもある。迎撃速度や、ポイントアイテムの奪取特典の合計を競う。 「シューティング?」 「そう。昴には、僕の生み出す世界と戦ってもらう。クリアできれば昴の勝ち。リタイアなら、僕の勝ちだ」 「それだと、プログラマーの領域にならないか?」  いかにクリアされない場面を構築するかを競う、プログラム科の生徒がおこなう訓練をするつもりなのか。 「瞬間的な場面操作は、サポーターの空間把握能力や、敵機への洞察力が問われるだろう? 僕の実力をわかってもらいやすいと思うんだけど」  なるほど。確かにそうだ。 「わかった」  納得をして、プレイシートに入った。起動させて、ARゴーグルを装着する。  空気の抜ける音がして、プレイシートの屋根が隙間なく閉まれば、ARゴーグルに森の景色が映し出された。実際に、森の中にいる気分になる。こういう没入感が、ロボット搭乗型のゲームがeスポーツの中で長年、最高のプレイ人口を誇り続けている理由だ。 (さて……と)  キーボードを叩いて、敵の探知を行う。微細な変化に標準を合わせて、引き金を引いた。短い悲鳴を上げて、球体に手足のついた敵機が落ちた。猿のように動く敵機を、ゴールに向かいながら次々に撃ち落としていく。  さすがだと、うなりたくなるくらい絶妙なタイミングで、斗真は敵機を出現させる。 (だけど、焦るほどじゃない)  序盤だからと油断はしない。ゴールに進むにつれて、どのくらい高い難易度で挑んでこられるのだろうと、ワクワクした。 『さすが、昴。僕の惚れた人魚姫だ』 「姫と呼ぶのは、いい加減やめてくれないかな」 『クリアできたら、呼ぶのを止めるよ』  ニヤリとして、敵機を打った。 「ついでに、過度なスキンシップも迷惑だから、やめてほしい」 『昴ばかりが要求を言うのは、不公平じゃないかな』 「なら、斗真は何を望む?」 『昴を』 「え?」 『昴を僕だけの姫にする。もちろん、悲劇の人魚姫ではなく、泡にならない愛されるお姫様だ』  あっけにとられても、敵機を見逃したりはしない。打ち落としながら返事する。 「つまりは、パートナーになれって事?」 『そう。人生のパートナーだ』 「大げさだな」 『言葉通りなんだけどな』  少し考えてから、答えた。 「いいよ」  負ける気はない。 『なら、どんな汚い手を使ってでも、勝たせてもらうよ』 「僕だって、手段は選ばない」  敵機が接近戦タイプから、遠距離タイプに代わる。かと思えば、また接近戦タイプが現れた。 (楽しい)  変幻自在の敵機の種類に、血が滾った。こちらも相手に合わせて武器を変え、迎撃していく。機体と自分が一体化していく錯覚に落ちていく。ARの視界が現実と重なって、森の世界に精神が馴染んでいった。 「あっ」  木の幹に絡まっていた蔓が伸びて、機体の腕を捕らえようとしてきた。叩き払って、次に襲ってきた蔓を避けながら敵機を打ち落とす。自分が笑っているのを感じて、さらに興奮が増していく。とてもスリリングだ。意識を研ぎ澄ませてゴールを目指す。 「っ!」  背筋に軽い電流を流されて、体がビクッと跳ねた。蔓が機体に絡まって、動きを遮られる。銃で敵機を打ちながら抵抗するも、細い蔓の力が強くて身動きができなくなった。 「く、そ」  もがいても、蔓を引きはがせない。敵機が近づいてくる。武器を握った敵機の腕が迫ってくるのが見えた。 (やられる)  覚悟を決めて、奥歯を噛みしめる。敵機は目の前で動きを止めた。 「え……なんで」  ARの視界が動く。木の上に移動させられた。不安定な場所。蔓に持ち上げられている。いったいこれからどうなるのかと、左右を見回せば、肌にゾワゾワと何かが這いまわった。 「ひっ」  硬くて細い物に肌をまさぐられる。服の中に入り込んだそれは、胸の先に到達すると、そこをつまんでくすぐった。 「っ、な……なんっ、ぁ」  蔓の姿が得体のしれないモンスターの触手に変わる。モゾモゾ動く触手に、僕の体が捕らわれる。両方の乳首をくすぐられて、まさかと血の気が引いていく。 「くっ、そ……ううっ」  体中に力を込めて、引きはがそうとしても動けない。ズボンに触手が迫って、脚を振って抵抗したけど無駄だった。ボタンを外されて、ファスナーを下ろされる。 「んっ、ぁ」  下着の隙間から入り込んできた触手に、急所を捕らえられた。根元から螺旋状に絞られて、先端をくすぐられる。 「ふっ、ぁ、あ……んっ、く、はぁ」  クビレとか先端とかを、無数の細い繊毛に似た硬い物でコチョコチョとくすぐられれば、あっという間に僕のナニは大きくなった。この感覚は、知っている。 (そうだ、これは昨日とおなじだ)  ARに没入しすぎていた意識を引き戻して、大声で叫んだ。 「斗真!」  ARの視界も、肌に触れる感覚も変わらない。意識が混乱しないよう、目を閉じて視覚情報を遮断する。 「斗真、終わりだ!」  僕の手足は、映像内で触手に姿を変えているマニュピレーターに捕らわれている。操作をしているのは、斗真だ。冗談にしては、趣味が悪すぎる。 「斗真! もう止め……っ、は、ぁあ」  敏感な箇所の溝を撫でられて、ゾクゾクと甘美な悪寒が背骨を駆け上がった。何度も何度も刺激をされて、先端から液がこぼれる。ギュウッと全体を締め付けられて、ドクンドクンと脈打っているのがよくわかった。 「ぁ、斗真……ぁ、いたずらが、過ぎる……っ、んぁ」  淡く擦られ続ける乳首が、ムズムズしてきた。呼応した股間が、痺れに似た劣情に包まれる。腰の奥が熱くなって、尻まで妙な感覚に襲われた。 「は、ぁ……あ、ああっ、ん、斗真ぁ、あ、やめ……あっ、ぁあ、あ」 『サポーターがいなければ、こんな状態になっても抵抗ができないだろう?』 「んぁ、斗真」 『甘い声だね、人魚姫。王子に自分が助けたのだと告げられないで、泡になってしまった、かわいそうなお姫様。サポーターがいなければ、助けを求める事もできずに、触手の餌食になってしまう』 「ひっ、ぁ、ああ……やめ、ぁ、あ……斗真ぁ、あっ」  根元の奥にある袋の裏をくすぐられて、アソコが突き上げられたような衝撃に見舞われた。目の奥に火花が散って、イキそうになった。 『昨日、邪魔が入らなければ、昴は最高に気持ちのいい時間をずうっと味わっていられたんだよ。こんなふうにね』 「ぁ、は……んぁ、あ、昨日って……あれは、あっ、あ」 『そう。僕のプログラム。正式な試合では、あんな事は起こらないけど、非公式……とくにアングラの試合では、珍しくもなんともない』  目を閉じたせいで、体をまさぐるマニュピレーターの動きを鮮明に感じてしまう。だけど目を開ければ、ARの視界に意識が少なからず影響を受ける。身をよじって、なんとかプレイシートを開けられないかと腕を伸ばした。 「くっ、う……は、ぁあ」 『無駄だよ、昴。人は快楽には勝てないんだ。気持ちがいいよね? もっと気持ちよくさせてあげる。どんなに硬いものでも、熱くすれば溶けるんだ。昴の体も心もトロトロにして、僕の虜にしてあげるよ』 「んぅっ、じょ、うだんじゃ……な、ぁあっ」  キュッとナニのクビレを扱かれて、声が跳ねた。乳首の刺激がくすぐったさから快感に変わって、肌が淫らに火照っていく。アレの根元に溜まった欲望が、噴き出す瞬間を待ち望んでいた。 「く、そ」 『快楽の虜になれば、もう僕からは離れられないよ』  クスクス笑う斗真は、こんな手段を取ってまで僕が欲しいのか。どうして特科に入れるほどの実力を持ちながら、こんな卑怯な手を使うんだろう。 「なん、で……こんな……あっ、ぁ」 『どんなに求めても、すげなく断られてしまうからだよ。こんな手段を取らざるを得なくなったのは、君のせいだ……昴。君が、僕の誘いに少しも興味を示さないから』  ギュッと強くナニを締め付けられて、先端から液が飛び出た。 「ひっ、ぅ……そんな、ことで……っ?」 『そんなこと? 僕にとっては、とても重要な問題だ。ずっと前から、君に目をつけていたんだよ。僕だけじゃない。優弥や他の連中だって、昴の事はチェックしているさ。サポーターもつけずに、勝ち続けた漆黒の獣。しなやかな戦闘スタイルから、君は自分が黒豹とあだ名されているのを知っている?』 「んっ、知って……っ、それが、どうした」 『では、誰にも心を開かない、甲鉄に覆われた氷姫は?』 「それは、勝手に斗真が言って……っ、は、ぁあんっ」  アソコの締め付けが外れて、複数のマニュピレーターに全体を撫でまわされる。くすぐったくて、気持ちがよくて、そこの刺激に心も体も支配されてしまいそうだ。 『いつもひとりで、誰にも興味を示さないお姫様が、こんなに可愛い声を出すなんて、知っているのは僕だけだろうね』 「ふぁ、あんっ、こんな事……してるって知られたら、あっ、斗真、ぁ」 『大丈夫だよ。準備は万全だ。昨日のような失態は犯さない。ちゃんとロックをしてあるからね。昴は安心して、気持ちよくなっていいんだよ』 「いや、だ……ああっ、ん」  トロトロと、淫らな液が溢れて止まらない。脚の間を伝うほど、漏らしてしまっている。このままじゃシートを汚してしまう。こんなところでイッて、機体に液を飛び散らせたくない。 「ふ、ぁあっ、ああ」  堪えたくとも、マニュピレーターの動きは巧みで、誰かにされた経験のない僕は、声を抑える事もできない。 (違う……昨日、僕は)  時哉に、された。口でされたのは、機体を汚さないための配慮だったんじゃないかって、思いつく。だけど、それにしたって、ためらいもなく咥えて、しかも飲むなんて信じられない。 「ふぁあっ、あん、あっ、ぁあ」  思い出したせいで、興奮が増してしまった。まぶたの裏に時哉の笑顔がちらつく。せっかく目を閉じてARの情報を遮断しているのに、自分でイメージを作ってしまうなんて。これじゃあ、逆効果だ 「く、ぅうんっ、ぁ、あ……あ?」  ピタリと刺激が失せて、手足に絡むマニュピレーターの拘束が緩んだ。荒くなった息を抑えようと、わざとゆっくり呼吸をしながらゴーグルを外してプレイシートを開くと、キーボードを高速で叩きながら焦っている斗真が見えた。 「くそ、なんで……昴!」  サポーター席から飛び出した斗真の手が、立ち上がろうとした僕の肩を掴む。 「うっ」  プレイシートに押しつけられて、のしかかられた。 「逃がさないよ、昴。僕の手で快感に溺れさせてあげる」  ギラギラした目の斗真に迫られて、ゾッとする。押さえつけられた肩が痛い。だけど、抵抗できないほどじゃない。 「ふっ!」  体を丸めて、みぞおちに膝蹴りをお見舞いする。モロに食らってうめく斗真の力が緩んで、押さえつけられていた肩が自由になる。押しのける勢いで、顎に拳を打ち込んだ。派手に倒れた斗真が、起き上がらないうちにプレイシートから出て扉に向かう。 「待て! 昴」  そう言われて、待つバカはいない。扉を開けて飛び出せば、抱き止められた。 「うぷっ」  思い切りぶつかった相手を見上げれば、険しい顔の時哉だった。 「こっち」 「えっ」  腕を掴まれて、時哉が走るままに足を動かす。人気のない廊下を走って連れていかれたのは、うっそうと木が茂っている森の中だった。 「ここなら、誰にも見られないから」  息を切らした時哉に言われて、何を心配されているのかと首をかしげる。 「その、恰好」  指摘をされて、服が乱されていた事を思い出した。それどころか、勃起をしたままだ。 「あっ、ぅあ……これは、その」  慌てて股間を押さえてしゃがみ込む。時哉もしゃがんで、僕と目線を合わせた。 「怖かっただろ? 昨日の今日だもんな……でも、無事でよかった」  頭を軽く叩くように撫でられて、ジワリと涙腺が緩んだ。昨日も泣いたのに、今日もまた泣くなんて情けない。鼻をつまんで堪えたら、抱きしめられた。 「間に合ってよかった。もうちょっと、早く対処できればよかったんだけどな。ごめん」 「なんで、時哉が謝るんだ」  グスッと鼻を鳴らして言えば、髪に息が吹きかかった。しっかりと抱きしめられて、ぬくもりが伝わってくる。離れたくなくて、じっとしていると時哉が座った。引き寄せられて、地面に膝をつく。時哉の胸に顔をうずめる形になって、ドキドキと心音が耳に響いた。これは、時哉の心音だろうか。それとも、僕の? 「どうして、あんな事になっていたんだ?」  ためらいがちに問われて、ポツポツと説明した。  斗真が僕とパートナーになりたがっている事。それを断り続けている事。自分の実力を知ってもらうために、対戦をしたいと申し込まれた事。その結果が、アレだった事。その理由。  聞き終えた時哉は、重くて長い息を吐きだした。苛立っているのだと、気配で伝わる。 「僕は、誰ともパートナーにはならない」  最後につけ加えれば、強く抱きしめられた。 「どうして?」 「僕ひとりで充分だから」 「今回のような事もある。パートナーがいれば、避けられたかもしれない」 「だからって、サポーターを選ぶ気にはなれない」  選ぶとしたら、僕の邪魔にならない相手だ。レベルの劣る、お飾りのパートナーとして選ばれる相手は、プライドを傷つけられる。少なくとも、この大学に入学できた者は憤慨するだろう。自信の無い人間は、受験すらしないはずだから。 (つまり、ここではパートナーを見つけられない) 「昴は、パートナーをどう考えている?」 「え?」 「試合によって変えるもの? そういう選手もいるかもしれない。だけど、公式戦の上位にいる人は、人生も共有する覚悟を持ってパートナーと過ごしてる」  たしかに、夫婦であったり恋人であったり、あるいは兄弟なんて選手もいる。時哉は昔、父親とパートナーだった。そういえば、どうして時哉はサポーターをしていた父親と離れて、プレイヤーからパートナーになろうと決めたんだろう。 「俺は、半端な気持ちで昴とパートナーになりたいと望んでいるんじゃない。人生をかけたパートナーになりたいと考えている」  両頬を包まれて、上向かされた。目の奥をじっと覗き込まれて、気持ちのこもった言葉をかけられる。 「きっと斗真も、そのつもりだったんだろうな。やり方は最低だけどさ、あいつなりに本気だったんじゃないか。どうあっても昴が振り返らないから、強硬手段に出たんだろ。腰から付け入ろうとするなんて、古典的というか、なんというか、褒められた事じゃないけどさ」  奇妙にゆがめられた時哉の顔には、怒りと呆れと、もうひとつ別の感情が滲んでいたけど、それが何かはわからなかった。 「身も心も手に入れたい。だけどどうやっても、なびいてくれない。だからまず、体を手に入れるって考えるのは、自己中過ぎて擁護する気も起きないけどさ。気持ちがわからないわけでもないってのが、困るよな」  苦々しい笑顔に、首をかしげた。 「時哉も、そんな気持ちになったりするのか。手段を選ばず、手に入れたいなんて思う事が?」 「ある」  即答されて、目を丸くした。あんな卑怯な手段を、わからなくもないって言わせるほど、時哉に求められている相手がいるなんて。 「一体、誰?」  ムラムラとみぞおちのあたりに嫉妬を抱えて問えば、ポカンとされた。 「おまえ、俺に何度も口説かれている自覚はあるか?」 「え、え?」  コツンと額を重ねられた。 「俺が欲しいのは、昴だよ。昴のすべてが欲しい。何もかもを理解したい。だから昨日は大変だった」 「昨日って」 「キス、したくてたまんなくなったから」  満面に血が上って、頭がクラクラした。 「キ、キスって」 「俺が誰のアレでも咥えるなんて、思ってないよな?」  ちょっと怒った顔で聞かれて、さらに顔が熱くなった。 「くっ、咥え……そっ、あ、う」  全身の血が沸騰しているみたいに熱くなって、妙な汗が噴き出した。忘れていた股間の疼きが復活して、膝を擦り合わせる。モジモジしていると、時哉の手が伸びてきた。 「あっ」 「つらいだろ? 出しちゃえよ」 「いや、でも……あっ、あ……時哉」  容赦なく扱かれて、グングン高まっていく。僕のアレを時哉に握られていると思うと、腰が砕けそうなほど心も体も気持ちよかった。 「んっ、ぁ、時哉……汚れる、から、ぁ」 「じゃあ、また飲む」 「ひゃっ」  押し倒されて、咥えられた。昨日みたいに口の中で扱かれて、慌てて頭を引きはがそうとすると見上げられた。時哉の口から、僕のアレがはみ出ている光景にめまいがした。 「は、ぁ、あ……時哉、あっ、あ」  舌で先端を舐められたかと思うと、口腔で絞るように擦られて、頭の中がグチャグチャになる。 「んぁ、あっ、時哉、あっ、出るっ、出る、から、ぁ……あっ、ああっ、く、ぁあっ」  やめてくれと訴えても、時哉は口を離さない。しっかりと僕の腰を掴んで、逃げようとすると引き戻された。口内に含まれた僕のアレは、時哉の舌に転がされて、しゃぶられて、ダラダラといやらしい液を流しながら脈打っている。 「ふぁ、あっ、時哉ぁ、あっ、んぁ……め、ぁ、ダメ、だ、ぁあっ、出るぅ、あっ、からぁ、あっ、時哉、あっ、ああっ」  ギュッと舌と上顎に強く挟まれて吸い上げられると、自分でも驚くくらい、あっけなく弾けてしまった。情けなくて恥ずかしくて身動きが取れないでいると、手首で口を拭った時哉に額にキスをされた。 「本当は口にしたいんだけど、お前の気持ちをもらってないからな」 「は? え、あの……時哉」  ガシッと顔を掴まれて、真剣な表情を向けられた。こっちも気が引き締まるくらい、真面目な顔で見つめられる。 「俺は、昴とパートナーになりたくて、サポーターに転向したんだ。昴以外と組む気はない。ここに入学して、本物の昴と接して、その気持ちはますます強くなった。俺は昴が欲しい。本気だ」  鋭い視線で熱っぽく、だけど噛み砕くようにゆっくりと伝えられた時哉の気持ちに、胸の底が燃え盛る。 「もっともっと、昴が知りたい。昴に俺を知ってもらいたい。昴の試合は全部チェックしてる。得意な部分も苦手な部分も把握した。昴自身の事だって、色々と覚えた。気持ち悪いと思われるかもしれないけどさ。俺は、昴のファンなんだ」 「ファンって」  呆然と答えれば、頬を撫でられた。 「ファンを通り越して、恋をした。昴を俺のものにしたいし、俺は昴のものになりたい。誰よりも近い場所で、誰よりも親しく過ごしたい。昴の人生が欲しい」 「なんだか、それってプロポーズみたいだな」  夢の世界にいる気分だ。現実感がまるでない。だから、他人事みたいな言葉が口をついて出た。クシャッと時哉の顔が崩れる。 「プロポーズだと思ってくれていい」  泣き笑いの顔で苦しそうに告げられて、一瞬だけ心臓が止まってしまった。ヒュッと喉が鳴る。時哉の目に、からかいの色はない。思考回路が完全に停止して、時哉の言葉も状況も処理ができない。 「なん……え? 僕、そん……えっ、ぁ、あの……ええと」  混乱していると、ポンッとまた、叩くように頭を撫でられた。 「返事は、よく考えてから出してほしい。俺が本気ってのは、わかってくれただろ? OKなら、キスもそれ以上もさせてほしい。身も心も俺に投げだすつもりで、答えてくれ。中途半端な気持ちなら、振ってくれてかまわない。まあ、それで諦められるような、ヤワな気持ちじゃないけどな」  手を振った時哉の背中が、遠ざかっていく。姿が見えなくなるまで見送って、しばらくしてからようやく思考回路が仕事をはじめた。 「え、えっ……?」  また時哉に助けられた。アレをナニされて飲まれた上に、プロポーズだと思っていいって……時哉が、僕とパートナーになるために、プレイヤーからサポーターに転向したって……え? そんな、本当に?  与えられた情報がグルグル回って、まとまるどころか余計に混乱してきた。時哉と対戦するために、ずっとひとりで腕を磨き続けてきたのに、僕のプレイを見て、時哉はプレイヤーを止めたなんて。 「頭、痛い」  顔をしかめて、木の幹を支えにヨロヨロと立ち上がる。シャワーを浴びて、サッパリしてから甘い物をたくさん食べよう。しっかり脳のエネルギーを補給するまで、考えるのは止めにする。 「プリンアラモードと、何にしよう」  食堂のメニューを思い出しながら、とりあえず部屋に戻った。

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