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第8話
* * *
汗みずくになって、プレイシートにぐったりと横たわる。エネルギー切れ。もちろん、機体じゃなくて、僕自身の。
たっぷりと栄養を取っておいたのに、スタミナが切れるなんて信じられない。それほど長く、時哉と戦っていられたなんて、幸せだ。
(ずうっと続く気がしたんだけどな)
永遠に終わらない、ふたりだけの時間だと思ったのに、きちんと終わりはやってきた。あと少し、時哉に届かなかった。悔しいけど、ものすごくうれしい。
やっぱり時哉は特別だ。
「危なかった」
プレイシートが開いて、時哉が顔をのぞかせた。時哉の頬が紅潮している。目がキラキラと輝いていて、全力で相手をしてくれたんだなってわかった。
「完敗だよ」
右手を差し出せば、引き上げられた。抱き合って、互いの背中を叩いて健闘を称え合う。
「負けた。だけど、変だな。ちっとも悔しくないんだ。とてもうれしい。僕は、まだまだ強くなれる」
「ああ。昴はもっと強くなれる。けど、ギリギリだったな。あんなに追い詰められたのは、初めてだ。昴の研究をしておいたおかげで、なんとか勝てた」
「僕の、研究?」
「俺の部屋に来いよ」
時哉に手を引かれて、部屋に招かれる。スッキリと片付いた部屋を見回していると、本棚を示された。
「これ、昴の試合を録画したやつ」
ファイルを取り出して渡される。マイクロチップが並んでいて、日付と場所が記されていた。僕のデビュー戦から、大学入試の試合。入学してからの練習試合まで網羅されている。
「え……これ」
「古い映像を探すのは、ちょっと苦労したけどな。たぶん、全部あると思う」
どうだ、と視線で問われて、ふたたびファイルに目を落とした。日付をなぞっていく。すっかり忘れていた試合もたくさんある。
「なんで、こんなもの」
「こんなものとは、失礼だな。俺の宝物なんだぞ?」
ひょいとファイルを取り上げられた。慈しむ目で、時哉はファイルを見つめる。
「衝撃だった。俺と同い年で、あんなに見事なプレイができるヤツがいるなんて。痺れたよ。最高だってな。そっから、昴の試合の映像をすべて集めた。リアルタイムでなるべく見るようにもした。アングラな試合を見るために、親父に頼んだりしてな」
うっとりと目を細める時哉に、感動と嫉妬を覚えた。過去の僕を見つめる時哉の横顔は、とても満たされている。あんな表情を向けられている昔の僕が、ものすごく憎らしい。
「時哉!」
肩を掴んで、僕に顔を向けさせる。
「僕の最高の姿は、さっきの試合だ。時哉と対戦したプレイが、最高の僕だ。そんな昔の僕を見ないで、ここにいる僕を見てよ。比べ物にならなかったはずだ!」
時哉の笑顔が深くなる。
「ああ。さっきの試合、最高だった。極上の昴を味わえた。欲しくて欲しくてたまらない。昴を俺の手で完成させたい。まだまだ昴は成長できる。もっと美しく、世界中を魅了するプレイヤーになれるんだ。俺は、昴を俺の手でもっと高い場所に連れて行きたい。誰も手の届かない、伝説と呼ばれても足りないくらいの場所に」
両頬を手のひらで包まれて、熱っぽい目で見つめられる。心臓がドキドキと高鳴って、体が震えた。
「昴。約束したな? おまえはもう、俺のものだ。俺だけの昴。おまえの最高を更新し続けてやる。俺だけを見て、俺だけを感じて、俺とひとつになって、極上の昴を見せてくれ」
ゴクリと喉が鳴った。時哉も、僕と同じで僕を見続けてくれていた。形は違うけど、僕を追いかけてくれていたんだ。
(うれしい)
口を開いて、気持ちを伝えようとしたけど声が出なかった。こぼれた息を拾うように、時哉の唇が僕に触れる。
「んっ、ぅ」
チュッチュッとついばまれながら体重をかけられて、ベッドに倒れた。抱きしめられて、舌を口の中に押し込まれる。
「んっ、ふ……ふぅ、うっ、う」
上顎のギザギザしたところを舌先でくすぐられて、ムズムズした。頬裏とか、ほかにも色々と舌でまさぐられる。呼吸が苦しくなってきて、鼻から息が漏れた。肌が熱い。試合の興奮とは違う感覚が、体中に満ちていく。
「ぁ、は……時哉」
「昴。もう、俺のものだ……だろう?」
約束をした。負けたら、なんでも言う事を聞くって。だから時哉が僕を「自分のもの」だって言うのなら、僕はそうなる。
(違う。なりたいんだ)
時哉のものになりたい。全力で挑んで、永遠に続けばいいと願った時間。あの間に、僕は時哉のものになっていた。終わって欲しくない。もっともっと、時哉でいっぱいになりたい。満たされたい。時哉を与えられたい。時哉だけを感じていたい。そう、望んだ。
つまりそれは、時哉のものになるって事なんだと思う。
そして同時に、時哉も僕のものになるって事なんじゃないのかな。
気づいたら、ゾワッと全身の産毛が逆立った。時哉の手のひらに、なだめられる。
「昴」
熱っぽい時哉の声に、ブルッと震えた。体を起こした時哉が服を脱ぐ。キレイな筋肉をまとっている体に触れたくて、手を伸ばして脇腹を撫で上げると、身をよじられた。
「くすぐったい」
お返しだって、服を剥ぎ取られて同じ事をされた。
「ん、ふふっ、ぁ、はぁ」
くすぐったくて身もだえて、だけど普通のじゃれ合いとは何かが違っていた。ゾクゾクと悪寒に似た甘美なものを感じて、肌がほんのり赤くなる。
「俺だけを見て、俺だけを感じていろよ。さっきみたいに」
「うん」
首筋にキスをされて、鎖骨を吸われて、平たい胸をまさぐられて、突起をつままれた。
「ぁ、んっ」
クリクリとこねくり回されれば、股間が熱くなった。マニュピレーターにされたみたいな、いやらしい指の動き。あの時は逃げようとしたけれど、これは時哉の指だから、刺激をこぼさず受け止める。
「ふ、ぁ、あんっ、ん……ぅ」
赤ちゃんみたいに乳首に吸い付かれて、クスクス笑いながら髪を撫でた。カリッと歯を立てられて、ピリッと電流が走って、アソコの先からいやらしい液がこぼれた。
「は、ぁ……時哉」
モジモジと膝を擦り合わせたら、下着ごとズボンを脱がされた。太ももを開かれて、大事なところをさらけ出される。
「これを食うのは、三回目だな」
「えっ、ぁ……は、ぁあんっ、んぁ、あっ」
まだ半勃ちのソレを口に含まれて、口の中でグニグニと捏ねるみたいに刺激をされれば、あっという間に硬くなった。ビクンビクンと脈打つほどに育ったソレを、時哉はおいしそうにしゃぶっている。
「は、ぁ、時哉ぁ、あっ、ああ……あ、んっ、んぁ、あ」
ニヤニヤしている時哉に食べられている僕の先から、液があふれて止まらない。ジュルジュルと音を立てて吸い上げた時哉は、僕の体を反転させて、尻を広げた。
「ふぁっ、や、何……あっ、んぁあ」
窄まりに液体が注がれる。鼻息が尻の谷にかかって、ソコにキスをされているんだと気がついた。全身が羞恥に震える。
「何やって……んぁ、あっ、は、ぁああっ」
ゴシゴシと手のひらで猛っている前を扱かれて、窄まりの中に舌を差し込まれたら、言葉が喘ぎに変わってしまった。シーツを握って、いやらしい悲鳴を上げる。
「は、ぁんっ、ぁ、ああ……時哉、ぁ、時哉ぁ」
グチュグチュと濡れ音が響くほど、時哉の手のひらに包まれた僕の先端はグショグショで、時哉はたっぷりと濡れた手を僕の尻に移動させると、舌を入れていた場所に指を突っ込んだ。
「ひぃっ、ぁ、時哉、ぁ、ああっ」
「昴が、すごい濡れてくれるから助かる。まさか、こんなに早くヤレるとは思わなかったからさ。準備が何もなくって。だけど、こんだけ漏らしてくれるんなら、昴の汁で充分だな」
「何、それ……っ、ぁあっ、ひ、ぁううっ、んぐっ、ぅ、は、ぁああ」
体の内側を開かれている。時哉の指に、内側がすがるように絡んだ。時哉は袋を口で揉みながら、僕の液をたっぷりと絞って濡らした指で、尻の奥を開いていく。
「んはっ、は、ぁあっ、あ、あぅう……んっ、くぅ……ひっ、ぃい」
濡れた指が動くたびに、尻の口がキュキュウと絞まったり、クパクパ開いたりした。内側がうねって、うごめく指に反応している。
「ぁ、はぁあ、あっ、んぁ、あ、時哉ぁ」
「もっと、もっと俺を感じろよ、昴。俺以外の何も、わかんなくなるくらいにさ」
もう、とっくにそうなっている。じっとしていられなくて、時哉がくれる感覚を、もっともっととねだっているみたいに、勝手に尻が揺れてしまう。
(気持ちいい)
引き出された欲望が渦巻いて、体の隅々にまで広がって、まるでさっきの試合みたいだ。種類は違うけど、極上の恍惚が待っているんだと、本能で悟った。
「ぁ、ああっ、ん、ひっ、ぁ、ああ」
グッと狭い箇所を広げられて、のけぞった。めくるめく快感に襲われて、プシッと先から勢いよく、いやらしい液を吹き出してしまう。
「もう、平気か? 苦しかったら言えよ」
指が抜けて、内側がさみしくなった。ヒクヒクと尻の口が動いている。そこに弾力のある硬い物があてがわれた。
「ゆっくり、入るからな」
「ふぇ? ぁ、あ、ああ、ぁ、ああぁっ」
ググッと硬くて熱いものに押し広げられる。傾斜のあるものが窄まりを通り過ぎて、くびれた部分に収縮した口がすがりついた。
「は、昴……すげぇ、絞めつけ……ここだけでも、すっげぇ気持ちいい」
興奮に掠れた声に、心がジンワリと熱くなった。時哉も僕を感じてくれている。うれしい。もっと、もっと時哉に僕を感じてもらいたい。
「ぁ、時哉……もっと」
背中に向かって腕を伸ばして、首をねじった。肩越しに、驚いた時哉が見える。
「大丈夫なのか?」
「ん」
何を心配されているんだろう。
「じゃあ、遠慮しないぞ」
目元を引き締めた時哉は、ものすごくカッコよかった。キュウンと心臓が縮こまる。
「時哉っ、ぁ、ひっ、ぃ……あ、ああぁああ」
ズンッと深くて重い衝撃に襲われて、長い悲鳴を上げてしまった。喉の奥に何かがせり上がってくる。体を突き抜ける衝撃に促されて、僕は羽化した蝶みたいに背をそらして射精した。
「はひっ、ひっ、ぁ、ああ」
「くっ、まだ……昴、もう少し、がんばってくれ」
ビクンビクンと跳ねるアレから液をまき散らしている最中に、体の内側を硬くて熱いものでガツガツ掘られて、目の奥がチカチカした。自分の体が自分のものではないような感覚。不安定で恐ろしいのに、ひどく気持ちいい。得体のしれない場所に連れていかれようとしているのに、妙な安心感があった。
時哉と一緒だから、大丈夫。僕を連れて行こうといているのは、時哉だから。行きつく先は、きっと極上だ。
「んぁあっ、あ、は、ぁあっ、あっ、時哉ぁ、時哉」
「っ、昴……昴、く、ぅ」
短くうめいた時哉の熱波が、体の奥に押し寄せた。
「ひっ、ぁああ!」
内側が波打ちながら収縮して、注がれたものを吸い上げる。爛れたように熱くなった内側を、余韻を味わうようにゆるゆると擦られた。
「は、ぁあ、あ……あ」
ブルブルと痙攣して、糸が切れたみたいにベッドに倒れた。体中が熱くて、重たくて、ものすごく気だるい。オーバーワークの後だって、こんなに疲れはしないってくらい、芯からぐったりした。
「はぁ、昴」
背中に時哉の重さがかかった。うなじにキスをされて、顔を向ければ頬にもされた。
「最高……いや、極上だ」
とろけた時哉の笑顔と声に、僕もとろける。心がふにゃふにゃして、体はとても重たいくせに、空中に浮かんでいる気分になった。体を反転させられて、向かい合わせで抱きしめられる。
「俺のものだ、昴。俺の昴……そうだよな?」
うなずいて、時哉の背中に手を置いた。目を閉じて息を吸えば、時哉の匂いに満たされた。
「まだ、足りない。今度はもっとゆっくり、昴を確かめたい。隅々まで……いいだろ?」
ふわふわとした陶酔に浸る思考は、まったく役に立たなかった。何を言われているのか、把握ができない。でも、時哉がしたい事なら、きっとすばらしくいい事だ。
「うん」
返事をすれば、うれしそうにキスをされた。僕もキスを返す。それから体中にキスをされて、強い衝撃に襲われて、わけがわからなくなって、ひたすら満たされた感覚だけを抱えて、眠りに落ちた。
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