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第46話 真っ暗闇でかくれんぼ

 怖がりなんだ。  お化けも暗闇も、ジェットコースターも怖い。怖いものは全部遠ざけてた。でも、ジェットコースターは怖くなかった。乗ってみたら、楽しかった。お化け屋敷はドキドキした。暗い夜道の運転も怖くて嫌だったけれど、辿り着いた場所でとても綺麗な夜景が見れたから、来て良かったと思った。目を瞑って歩けた。怖いものを遠ざけず触れることができた。  正嗣がいたからだ。  けれど、その正嗣は虫が苦手で。白いTシャツに虫が止まったら大慌てで。俺は虫がちっとも怖くないから、俺が取ってあげた。慌てる正嗣を見て。 「……正嗣」  とても愛しいと思った。君にも怖いものがあるんだと分かったら、なんだかとても愛しくて、たまらなくなったんだ。 「んっ……ン」  車内にキスの音。 「ん」  夜の散歩デートをして、虫に大騒ぎしながら車に戻った。車内に戻ると、さっきまでとは違う静かさがあって、ドキドキした。外も静かなんだ。民家なんてないし、来る時も車に一台もすれ違わなかったくらい。けれど、車の中は狭い空間にぎゅっと静けさが詰め込まれた感じがして、なんというか。 「……ン」  車に乗った瞬間、さっき感じた愛しさが、車内に溢れてこの狭い空間をそれでいっぱいにしてしまった感じがして、とても、とてもキスしたくなったんだ。 「正、嗣」  とても好きだって思って、とてもキスがしたくなった。 「もう、最上さん、その顔、反則」 「……あっ」  キスをしたら、今度はすごく触れたくなったんだ。 「あっ」  車内に濡れた音。 「最上さんのこれ、すごい濡れてる」 「あっ、だって恥ずかしいっ」 「うん。すごく恥ずかしそう」  だってここは車の中だ。部屋じゃない。外で、他に車は止まってないけれど、でもこんなところでこんなことしてるんだから。 「あっ、それダメっ、正嗣のと擦れて」 「ん、気持ちい」 「あ、あ、あっ、正嗣のっ手と、おっきいのっ、が」 「最上さん、エロい。腰揺れてる」 「ん、だって」  車内に甘い甘い自分の声が響いてる。狭い車の中、後ろの席に移動して、後部座席に座った正嗣に跨るように腰を下ろして、互いのペニスを擦り合わせてたら、腰は揺れてしまう。気持ち良くて、ドキドキして、正嗣の少し苦しそうにする表情が色っぽくて。 「あ、ン……」  首を傾げて、背中を丸めると、キスをくれた。舌先を挿入されて、しゃぶりつくと、そのまま正嗣の口腔に連れて行かれ、舌が蕩けるほど絡め取られる。キスに一生懸命に応えてると、正嗣の大きな手が脇腹を撫でてそのまま服の中に潜り込み、さっきから布の擦れにすら反応してた乳首を摘んだ。 「んんっ」  声が溢れなかったのはキスで塞がってたから。 「あっ、やぁっン」  声が溢れたのは、乳首を摘んで、カリカリ爪先で引っ掻かれて気持ちよかったから。 「あ、正嗣っ」 「最上さん、可愛い。感じてる」 「あっ……」  腰を揺らしながら、敏感な乳首をいじられて、切なくなってたそこに指が揺れた。 「あ、ここ、外っ」 「うん」  外なのに、切なくてたまらなくなったそこに指を挿れられて、蕩けてしまう。 「あぁ……ン」  正嗣の指。 「ここ、柔らかい」 「だって、デート、だから、少しだけ、しておいた」  準備してきたんだ。 「何それ、もう……ホント」 「あ! あンっ」  つぷぷ、って、指が奥に入ってく。 「あぁ」  そして、前立腺を撫でられて、中を指がもっと柔くしてくれる。 「後でっ、部屋ですると、思って、あっ、だめ、今、乳首噛んじゃっ」  片方を口に含まれ、歯で甘噛みされながら、もう片方を爪先でカリカリ引っ掻かれて、中は空いてる方の手で、指で、柔く撫でられて。 「くぅ……ン」  鼻にかかった甘えた声を上げながら。 「あ、あ、恥ずか、し……いっ」  外なのに。 「うん。ごめん。ここで最後までするつもりなかったんだけど、止められなくなった」 「あっ……」  身じろいで、正嗣が大きな手で俺の腰を鷲掴みにする。 「挿れさせて、最上さん」 「あ、あ」  体勢が変わる。ペニスを重ね合わせてる時と違う。 「あ、あ、あ、正嗣っ」  セックスの体勢になる。 「っ、最上さん」 「あ、あ、あ、あ」  そのことに期待してしまう自分が恥ずかしいのに、けれど、それよりも、愛しい人と今すぐしたくてたまらない気持ちが勝ってしまう。 「あ、あ、あ、ン、熱い」  ゆっくり、入ってくる。  ズププって、太くて硬い熱の塊に身体の芯を貫くように、体重をかけて。 「はぁっ」  身体で咥えると、満ち満ちてく感覚に自然と感嘆の吐息が溢れた。 「最上、さんっ」 「正嗣の、熱くて、大きくて、ン」  だって、とても好きだから。 「気持ち、い……」  首を傾げて、拙いけれど、でも、今、俺の中が馴染むまで待っていてくれる正嗣にキスをした。さっきの真似をして自分の口腔に舌を使って招いて誘ってしゃぶりついた。 「んっ、ン」 「最上さん」  声が溢れなかったのは、キスしてたから。 「あ、あ、正嗣っ、あ、ああっ!」  それでも声が溢れてしまったのは。 「あ、あ、あン、だめ、そこっ」  熱に浮かされたように俺を見つめながら、抱き締めて下から突き動かしてくる、正嗣のが。 「正嗣の大きくて、熱くて、も」  たまらなく気持ち良くて、声を我慢なんてできそうになかったから。 「気持ちい……」 「最上さん」 「イっちゃう」  正嗣に抱きつくのに一生懸命な俺を、きつく抱きしめてくれるから。 「ン、好き……正嗣」  あんなに怖くてたまらなかった暗闇に隠れて、たくさん甘い声を上げていた。

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