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第62話 もう一つの、思い出たち

 俺は本当に田舎で、小学校から、中学校まで、学年にクラスは一つずつ。しかも小学校にいたっては、その一クラスの人数さえ少なかった。高校になったらクラスが複数に、といっても二つだけだけれど、でもその、一学年にクラスが複数あるっていうのがとても不思議だったっけ。  そう話すと、正嗣は、じゃあ、教科書忘れたら大変ですねと笑った。  正嗣の通っていた学校は大きな小学校だったそうで、一つの学年にクラスは大体四つ。昼休みともなれば廊下は騒がしくて、ぼーっとしてると走ってきた子にぶつかってしまうから、ちょっと怖かったって。  うちは学芸会も人数足りないから学年では分けずに、一、二、三年生が一つ、みたいに分ける方式だった。  俺は目立たない役を選んでたよ。  そしたら、正嗣もだって教えてくれた。少し意外だったから、それが顔に出たんだろう。正直だなぁって正嗣が笑って、そして、高校デビューだって言ったじゃないですかって。  それから、中学の時の遠足が本物の山登りでしんどかったこと。マラソン大会は町内総出での応援になって、有名な駅伝大会よりも盛り上がったこと。  コンビニは車で行くのが当たり前だったこと。買い忘れがあるとどうにも悲惨な気持ちになったこと。  食事をしながら、俺は、色んな話をした。正嗣がとても楽しそうに、俺の話を聞いてくれるから、俺も、話すのが楽しかったんだ。 「正嗣……」  窮屈で、プライベートなんてこれっぽっちもない狭いあの場所が好きじゃなかったけれど。 「? 荘司?」  彼に話していると、変わるんだ。  思い出す場所が変わる。狭くて窮屈で、息苦しい場所じゃなくて。小さな本屋さんがあって、そこで毎週、漫画雑誌を買う時におまけでもらえる飴玉が甘くて美味しかったこと。こたつが掘り炬燵で、中を自分一人の秘密基地にしては叱られたこと。冬には父の大きな雪かき用スコップでソリをしていたこと。田舎の、なんにもない所でも、俺は案外楽しんでいたことを思い出す。ずっと、ずっと忘れていたそういうことを思い出す。  いや、自覚していなかったけれど、楽しいこともあったんだと、気がつかされる。 「荘司?」  正嗣だったから。 「どうかしました?」  そしてまた、恋しさが膨らんで溢れそうになる。 「も、中、大丈夫だ」  正嗣がくれる愛撫のキスにいつの間にか着崩れた浴衣を解くこともなく、大胆にベッドの上で足を広げた。 「あの、早く、その、あまり見てないで、くれ」  けっこう恥ずかしいんだぞ。こんな人前で大股開くのなんて。 「いえ……荘司の浴衣姿、って相当そそるだろうって思ってたけど、想像以上でした」 「な、何を、馬鹿なことを……ん」  真っ赤だろう頬にキスをされただけで、反応してしまうくらいに、熱っぽい身体。指で丁寧に解された中はすごく柔らかくなって、彼を待ち望んでる。 「あ、んまり、焦らさないで、くれ」 「待ってて」 「あ、だめっ、そのまま」  慌てて、抱きついてしまった。旅行鞄にあれを取りに行こうとする正嗣を止めるために。 「このまま……」  抱きついたところで、正嗣はベッドから転がり落ちることもなく俺を簡単に受け止めて、そのままちっとも苦しくなさそうに俺を上にして寝転がってしまった。そして、俺は、その逞しさにとろりと蕩けながら、甘えてる。 「このまま、欲しいっ、ぁっ……」  正嗣に跨って、浴衣をかき分け、どきりとするほどガチガチに硬くなったペニスを後ろ手で何度か撫でながら、唇にキスをする。  見えないけれど、今、すごく大きくなった。 「ん、んっ……ンッ……」  ほら、とっても大きい、  手の中でむくむくと熱を溜め込んでいくペニスにドキドキしていると、肩をするりと浴衣が滑り落ちてしまった。  もう浴衣なんてはだけて、ただの布切れだ。なんとなくで腰に巻きついている帯のおかげでなんとなく留まっているだけ。 「挿れて……正嗣、ぁっ」  ペニスの先端が孔に触れただけで、感じてしまう。 「あ、あ、あぁぁっ」  ゆっくり抉じ開けられて、孔の中が悦んでる。 「あ、あぁっ……ん、正嗣のっ、挿って、きたぁ」  太くて、硬くて、すごく熱い。 「あ、あ、あっ」 「中、すごいね。荘司……熱くて」 「ん、ぅ……ん」 「こっちもトロトロ」 「あぁっ! だめ、前、触ったら」  キュッと手に握られて、正嗣の指の隙間からカウパーが溢れて、その手を濡らしてしまう。 「あ、あ、あ、」  くちゅり、ぬちゅりと扱かれると、とても気持ち良いから腰が勝手に揺れて。 「あぁぁぁ」  身体を起こして、このくねる身体にキスをくれた。つんと尖った乳首を齧られて、中がきゅうんと太いペニスにしゃぶりついてしまう。握られたペニスが大喜びで嬉しそうに雫を溢した。そして――。 「荘司っ」 「あ、あ、あ、あ、ん、そこ好き」  前立腺のところを正嗣のペニスで擦られるとたまらないんだ。 「もっとして、そこっ、あ、あ、あ」  だから大胆に自分からも腰をくねらせてペニスを欲しがると、君が怒った顔をした。 「やぁっンッ」  しかめっ面で俺の奥をぐっと抉じ開けて、たまらなくいっぱいにしてくれる。 「あ、正嗣っ」 「あ、あ、あ、イクっ、イクっ」  愛しい人でいっぱいになれるなんて。 「荘司っ、っ」  愛しい人をいっぱいにできるなんて。 「あ、あ、あ、あっ、ああああああ」  なんて、これは嬉しいことで溢れているんだろう。

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