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第67話 自分のいない場所

 俺なら、咄嗟に隠していただろう。  けれど、正嗣に自分のことをああやって「恋人」だと、ちゃんとされるのはとても、とても嬉しかった。  忘年会に集まったのはとても親しかった大学時代の友人たち。正嗣がゲイなのは知っていて、その忘年会の時にそれぞれの恋愛近状報告をし合っている時に正嗣も話したんだそうだ。  俺のことを。  ――ずっと憧れていた人がいて、その人と偶然知り合えて、今、付き合ってるんだって言いましたよ。  みんなにすごくすごく祝わってもらって照れ臭かったと笑っていた。照れ臭くて、そして、すごく俺に会いたくなって、あの日は二次会に参加することなく帰ってきたんだと教えてくれた。  ――笑っちゃうんですよ。もう帰れ帰れって言われて、二次会は強制退場だったんです。  毎日一緒に夕飯を食べていたから、あの晩は一人で済ます、久しぶりの夕飯がなんだか味気なくてつまらなかった。  正嗣は今頃、会場に着いたかな。乾杯をした頃だろうか? サラダに揚げ物、美味しく楽しく食べているだろうか? 友だち達と和気あいあいで過ごしているだろうか。時計を見ながらそんなことを考えていた。  ――会いたいな、なんて小さく呟いたからかな。  俺がそんなことを考えていた時、正嗣が俺のいない場所で、俺の話をしていてくれる。 「……荘司」  俺のことを考えていてくれる、それがたまらなく嬉しかった。 「あ、指っ……ごめっ、まだ、準備してなっあ、あ、あっ」 「謝らないでください。二人でセックスするんだから、準備だって一緒にしたい」 「あっ」  君に好きだと言われるととても嬉しい。けれど。 「あっ、ン」  君に俺のことを好きだと、誰かに言ってもらえるのもとても嬉しいんだと、知ったんだ。 「まだ準備なのに、そんなキュンキュン、中をさせないでください」 「あ、だって……ン、あっ正嗣の指に、あ、中されるの、だめ」  指でイッてしまいそうなんだ。 「あっン、今日は、ダメ、かも」 「荘司?」  正嗣の長い指で中を広げられながら、指が前立腺も押してくれる。すごくすごく気持ち良くて、孔の口がきゅっと指を締め付けてしまう。それがたまらなくて、足を大胆に開きながら、自分の枕をぎゅっと抱き締めていた。今日は、俺の部屋。けれど、君の私物も色々置いてあるから、君の宿屋でもある、俺の部屋。 「中、悦んでる、すごく、嬉しくて」 「荘……」 「おかしくなっちゃいそうなんだ」  身体を捩りながら、肘をついて身を起こした。角度が変わって、また身悶えてしまうくらいに孔を柔く仕立ててくれる指に喘ぎながら、愛しい人なんだと俺のことを友人達に話してくれた唇をぺろりと舐めて。 「挿れて欲しいけど……でも、きっと挿れたらおかしくなっちゃう」  そう言いながら、もっとしてと言わんばかりに、中を愛しい人の指に絡み付かせた。 「あっ……」  指が引き抜かれるのさえ快感で。 「待ってて、今」 「今日はこのままがいい」 「……」 「ゴムなしがいい」 「……じゃあ、後で一緒に風呂、入りましょう。俺がします」  そう言って、おでこにキスをくれた。後処理、されるの恥ずかしいんだ。後処理なのにそれにさえ喘いでしまうから。はしたないだろって、我慢してても、正嗣にされるとたまらなくて。 「それはっ」 「ダメ。ゴムなしなら」 「ンっ」  今度は深くキスをされながら、正嗣の重さに甘えた吐息が溢れた。 「続き、しても?」 「……あ」  そして、向かい合わせの体勢になるだけで期待が膨らんで。 「あンっ」  その胸でツンと尖っている乳首を甘噛みされただけで、前から透明な液が滴って。 「あ、だめ、前触っちゃ、やっ」  濡れて、お腹にくっつきそうなほど感じて硬くしてるペニスを指先で撫でられただけで感じて。足を抱え直されただけで胸が熱くなった。 「あ、あ、あっ」 「荘司……」  シーツをぎゅっと握りながら、脚をできるだけ開いて。 「あ、あ、正嗣のっ」  孔の口にペニスの先が触れる。 「あ、あ、あーっ」  そのまま、ローションの絡みついた中をゆっくりゆっくり抉じ開けられて、あられもない声が溢れるほど、正嗣のペニスに広げられて。 「荘司」 「あ、あああああああっ」  ずずずって入ってから、中の柔らかさに正嗣が熱い息を乱して、クンって根本まで中に突き立てた瞬間、達してしまった。 「あっ……ン」 「荘司」 「イッちゃった……ぁ……ン」  お腹の上に白を散らして。 「やっぱ、ゴムつけとけばよかった。保たない」  根本まで咥え込んだ、正嗣のペニスにキュンキュンって中を絡み付かせてる。太くて硬くて、熱いペニスに。 「中、スゴイうねってる。挿れただけで、イきそ」 「い……よ」  そのペニスをぎゅうううって締め付けながら、まだ射精の快感に身悶える身体をもっと開いて、シーツを握っていた手を正嗣に伸ばした。引き締まった腹筋を撫でて、ドクンドクンと荒々しく鼓動する心臓に手を重ねて、そして、首にしがみ付いた。 「たくさん、俺の中でイッて」  抱きつきながら。 「イッて欲しい……」  正嗣を甘イキをしてる身体で抱き締めた。

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