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スポデイ頑張る編 3 即席広報課、最上です。
広報の人って、あんまりデスクにいないものなのかな。
基本的にどの課も受付があって、そこに市民の皆さんが問い合わせをしにくる感じで。もちろん、受付カウンターにも人は常にいるし、中のデスクにも書類業務や電話応対の職員がいるから、人がほとんどいないっていうのが珍しくて。
「すみません。来てもらってしまって。俺が行けばいい話なんですけど、ほら、今、この通りでして」
「あ、いえ」
「今日は視察が多くて、現地確認に出向いてたりもしてるので、俺しかいないんですよ」
「そうなんですね」
そう頷いたところで、電話が内線の通知音が鳴った。高梨さんは「ちょっと、ちょっとだけ待っててください」と言って、両手で俺に待つようジェスチャーをしてから、急足で電話を取った。
「はい……はい。その件はですね……」
一人じゃ、忙しそうだ。
そこでもう一台の電話から無慈悲にももう一通、電話がかかってきてしまった。
たまに、こういうこともある。とくに延長受付の時間は、うちの課でも対応は二人だけだから、一人が対応している時に電話がかかってきてしまって。そんな時に限って、また別の電話だったり、受付に人が来てしまったり。しかも受付終了間際だったりして。そこまで誰も来てなかったのにぃっ、って慌ててしまうんだ。
「はい。こちら、えっと、広報課です」
本当は課、違うけれど。
「はい。今、担当の者が席を外しておりまして……はい。伝言賜りました……はい。わたくし、最上、と申します……失礼します」
とりあえず、伝言係だけでも。
「あ、すみませんっ、電話、とりあえず、大変そうだったから出ちゃいました。これ、伝言です。担当? は石井さんって方、です?」
「すみませんっ、めちゃくちゃ助かります」
「い、いえ、そんな大したことは」
と、そこでまた「おーい」と呼びつけるように電話の内線通知音が響いて。
「すみません」
そして、また高梨さんが電話応対をしている間に、今度はカウンターに人がやってきてしまって。
「お、俺、行きますねっ」
そう小さな声で伝えると、表情をくしゃりとさせて、申し訳ないって感じに会釈をしている。課が違うから対応できることなんて限られているけれど、でも、一人じゃ大変だろうから。少しでも力になればと――。
「は、はいっ」
そしてカウンターの応対が終わったと思ったところで、またもや電話が鳴って、俺は飛びつくようにデスクに置いてある電話のひとつに飛びついた。
「すみません。なんか、手伝ってもらっちゃって」
「いえ、全然」
「ご自身の仕事は大丈夫でしたか? いつまで経っても帰って来ないなって怒られたり」
「あはは、大丈夫です。途中、同じ課の人が通り過ぎて、たぶん、なんとなく察してフォローしてくれたと思います」
途中、橋本さんが通ったんだ。俺がカウンターにいた時に。ちょっとびっくりした顔をしてから、カウンター内に俺と高梨さんしかいないの見て、状況は理解してくれたと思う。
「課は違いますけど、同じ市役所内ですから。助け合わないと」
そんなふうに次から次に来る問い合わせに対応していたら、やっと他の職員が帰ってきてくれた。そしてなんだか忙しかったのね、と、指定の時間じゃないけれど、対応してくれたことのお礼代わりに休憩をプレゼントしてくれた。
「はい。これ」
「いいのに」
「いや、めちゃくちゃ助かったんで」
「……すみません。じゃあ、遠慮なく」
買ってもらった温かいコーヒーの紙コップを片手で持ちながら、マスクを顎下へとずらした。
ふぅ、と二回ほど息を吹きかけてコーヒーを冷ます。ほろ苦いけれど、落ち着くその味に、ホッと溜め息が溢れた。
「…………あの、俺、なんか変です?」
「? あ、いえ、全然」
じっと、飲むところを見つめられると、緊張してしまう。
「最上さんって、テキパキしていて、なんかすごいなぁと」
「そんなことは」
「課違うのに、すんなり広報担当しちゃってましたよ」
「ただ電話で伝言受けて、カウンターで話聞いておいただけです」
「物腰も柔らかくて」
「いえいえ」
「途中、怒ってらっしゃる方からの電話対応してもらっちゃったの、本当にすみません」
「? どうして怒ってるって?」
「受話器越しに聞こえてました。あれ、申し訳なかったなぁ」
そう、途中、怒っている市民の方からの問い合わせが来たんだ。
「たまに、やっぱりうちの課でも怒ってしまう方いるんですよ」
仕方ない。子どものことでお母さんもお父さんも一生懸命なんだ。自分のことの時以上に、気になるんだろう。
「そういう時に対応上手な人がたくさんいるんで」
とくに橋本さんなんてすごいんだ。最初、怒鳴る勢いで怒ってる人が最後笑顔で帰ってく、なんてこともあるくらい。
「先生がいっぱいいるんです」
「……すごいな」
「そうなんですよ」
「いや、そうじゃなくて、最上さん」
俺? ですか?
「話してみたら、めちゃくちゃ話しやすくて」
「!」
そんなこと言われたの、初めて、だ。
「もっと早くに話しかけてたら……って、あはは」
いつもマスクをしていることもあるけれど、それ以上に俺が「拒否」の反応をしていたと思う。人に対して。
「って、あれです! スポデイのことで話があったんでしたっ」
だから話しやすいなんて言ってもらえて、すごくとても嬉しかった。
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