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8月5日(水)

8月5日(水) 「北斗、起きて…ご飯の支度するから」 何だ…お嫁さんみたいなこと言うの。 うっすら目を開けると、目の前に星ちゃんがいて、俺を覗き込んでいる。 俺は星ちゃんに腕を伸ばすと、彼にしがみ付いて言った。 「お嫁ちゃんが作ってくれるの?嬉しいなぁ~、ん~、チュッチュッチュ!」 星ちゃんは俺を無視して、俺をしがみ付かせたまま体を起こした。 「早く起きて、ヘッドホン、取りに行くんだろ?」 そうか…そうだった。 でも、一晩明けると妙に怖くなってきて、行くのが億劫になる。 「星ちゃんは今日、何するの?」 先を歩く彼の後ろを追いかけて、キッチンに向かう。 「今日は渉と博と三人で、ボートに乗って、釣りに行ってくるよ~!」 なぁんだ、もう釣りバカに予約されちゃったんだ… 俺はしょんぼりしながら言った。 「ちぇっ!つまんないの!」 いいんだ、今日は一人で過ごそう… 俺には一人の時間が必要だから、別に苦じゃない。 それに一人になれるんだったら、踏ん切りがついたタイミングで、あの大人に、会いに行けるじゃないか… 「春ちゃんと歩は?」 キッチンで卵焼きを作り始める星ちゃんに聞く。 「さぁ、でも着替えを済ませていたから、どこかに行くんじゃないかな…」 そうか…俺は本当に一人ぼっちなんだな。 「お魚、釣れるかな?」 彼の様子を覗き込んで俺が聞くと、星ちゃんは楽しそうに答える。 「こんなに綺麗な湖だもん。きっと大物が釣れるよ!」 おれはボートは怖くて乗れない… 水が怖いんだ。 だから、陸から離れては生きていけない… 「何の魚が居るの?鮭?」 俺がそう聞くと、星ちゃんは卵焼きをお皿に移しながら言う。 「鱒とか釣れたら良いな~。ブルーギルとか…外来種は嫌だ。」 「どうして?」 「美味しくないし、外来種は在来種を食べちゃうんだ…生態系が崩れちゃう悪いやつなんだ。」 ふぅん… でも、そしたら在来種を守るためにも、外来種を食べてあげれば良いのに。 変なの。 鱒を釣ったら、フィッシュアンドチップスを作ってもらおう… 「北斗、みんなを呼んで?ご飯が出来た。」 俺は星ちゃんにそう言われて、一階に行ってみんなを呼んだ。 「ご飯出来たって~!!」 渉と博は釣りの格好をして、釣竿を出してメンテナンスしている。 これが釣りバカです。って分かんだね。 歩と春ちゃんも綺麗な格好をしているから、本当に俺はここの警備員になるみたいだ。 「北斗、叔父さんの所に行くなら、鍵をかけてから行ってね?」 歩の別荘のカギを渡されて、首から下げられる。 「失くさない様にね!」 「は~い。」 春ちゃんが心配そうに俺をじっと見ている。 良いんだよ。大丈夫。あの大人は優しいから。 だから、俺は春ちゃんを見て、にっこりと笑った。 「星ちゃんの目玉焼きは硬いの…中がパサパサじゃないか。も~!」 俺がそう言って目玉焼きを一口でペロリと食べると、星ちゃんが笑って言った。 「どうせ北斗は一口なんだから、関係ないだろ?」 う~ 俺は唸って星ちゃんを見る。 釣りに行っちゃうなんて…寂しいよ。 俺を置いてけぼりにして… ちぇっ! 「じゃあ、戸締りはしっかりしてね。」 釣りバカ三人を表まで見送る。 目の前のボートに乗り込むと、俺に手を振って出航していく… 湖の上をすべる様に、進んで行くボートを見送る。 遠くで星ちゃんが俺に手を振った。 俺は大きく手を振って、悲しみを表現した。 でも、きっと気付かないだろうな… トボトボ別荘に戻ると、歩と春ちゃんがお出かけする。 「戸締りだけはしっかりしてね。」 さっきも言われたことを、また言われる。 「は~い。」 俺はそう言って、今度は道路の方に歩いて行く二人を見送る。 こちらを振り返った歩が手を振ってくれる。 だから俺も大きく手を振って、悲しみを表現する。 でも、きっと気付かないだろう… そして、俺は一人になった… ヘッドホン…いつ取りに行こうかな… それって、つまりエッチしようって事だよね。 きっと、多分、そう言う事だよね… 怖いな。 ベランダに出て、手すりに掴まって湖の遠くを眺める。 星ちゃん…今頃、釣りしてるのかな… 一人になるのが好きなくせに、本当に一人になると寂しくなるなんて、勝手なやつだ。 ヘッドホンを耳に付けて、音楽を流す。 聞きかけのクラシックが流れて、突然始まる大音量に体が驚いて、ビクッとする。 ぼんやりしながら湖面の遠くをじっと眺めている。 チラチラと湖面に光が反射して綺麗だ。 耳にフルートの音が響いて、集中して聴くとジンジンと頭が痺れてくる。 目を瞑って、再現されたフルートの音域に、高性能なヘッドホンに感謝しながら耳を澄まして聴き入る。 ふと、背中を温かい何かが包む感じがして、ゆっくり目を開く。 手すりに掴まった手が、俺を挟んで両側に二本増えていて、誰かが後ろに居ると分かった。 そして、それが誰なのかも分かった。 俺の背中に体を添わせて、温めるみたいに包み込んでくる。 俺は振り返りもしないで、じっとその熱を背中に感じている。 「みんな出掛けちゃって…俺、ボッチなんだぁ…」 後ろの人に、そう言うと、彼は俺の髪の匂いを嗅ぐように顔を寄せてくる。 ヘッドホンを首に下げようと、手を上げると、手を掴まれて手すりに降ろされる。 俺の両方の手のひらを握って、優しく体を温め続ける大人の男… それが気持ちよくて、俺はまた目を瞑ると、耳の奥に流れる音色に集中して聴き入った。 不思議だな…何でだろう…とても満たされて、落ち着く。 俺の首筋にそっとキスを落として、体に彼の太い腕が滑ってきて、俺の腰を掴んで締め付ける。もう片方の腕で、俺の顔を後ろに向かせると、彼の目と目が合って、微笑みかけられながらキスをした。 まるで恋人みたいに、優しく愛おしそうにキスをされて、混乱する。 だって、俺は男だし、それに子供だ。 俺はこの人の、名前も知らないのに… 全てを受け入れてしまうのは、どうしてなんだろう… ヘッドホンを首に落ろして振り返ると、俺は彼の体に抱きついて、顔を埋めていく。 「勝手に入ったら、泥棒なんだ…」 俺がそう言うと、彼は笑って言った。 「何度も呼んだ。」 そうか…俺の耳が塞がっていたのか。 それは…おかしいな。 おかしくってケラケラ笑いながら、歩の叔父さんの胸に顔を埋める。 「お店があるから、すぐに帰るね…。」 そう言って俺にキスをして、髪を撫でて、愛おしそうに見つめてくる彼の目に、どんどん混乱する。 まるで、本当に愛されている様な錯覚がして、戸惑う。 思わず、体を離した。 「歩の叔父さんは、ご飯を食べた?俺は食べた…でも目玉焼きが硬かった…」 そう言って、ベランダの椅子に腰かけて、俺を見つめる彼を仰いで見る。 「朝はあんまり食べないんだ…年を取ると胃がもたれやすくてね…。」 そう言って笑うと、俺に手を伸ばして来る。 俺は、何の疑いもなく、その手を掴んだ。 グイッと椅子から立ち上がらせられて、代わりに歩の叔父さんが椅子に腰かけた。 おかしくて見下ろして笑うと、両手を広げて言った。 「北斗、おいで。」 胸がキュンとして、恋に落ちそうになる。 何だ…この気持ち… 俺は彼の言うままに彼の足の間に腰かけて、後ろから抱きしめられた。 温かくて、包まれて、安心する。 彼が俺の手を取って、自分の手と比べて見る。 「北斗の手は細くて、美しいね…」 俺の指の間に自分の指を入れて、恋人繋ぎをして、親指で優しく撫でる。 俺はそれをじっと見つめて、惚ける… 彼の左手の甲に大きな火傷の痕が残っていて、俺はそこを反対の手で撫でてみた。 「火傷したみたいだ…」 そう言うと、彼は笑って教えてくれた。 「昔、調理中に油がかかったんだよ…痛かった。」 火傷って、こんなに痕に残るんだ… 「可哀想だね。俺の大好きなチキンを揚げてる人も、沢山火傷してるのかな…」 俺はそう言って、彼の火傷の痕にキスした。 彼は俺の顔を後ろに向かせると、愛おしそうに見つめて、何度も、何度も、キスしてくる。 「歩の叔父さんは…まるで、俺の事が好きみたいにする…」 耐えきれなくて、そう言って…予防線を張る。 馬鹿な自分が勘違いしない様に…予防線を張った。 「北斗…好きだよ。おかしいかい?」 「おかしいよ。だって、会ったばかりじゃないか…」 そう言って笑うと、歩の叔父さんは微笑んで言った。 「おかしくない…何も、おかしくない。」 そう言って、俺にキスすると強く抱きしめられて、苦しくなる。 寂しいのかな…またそんな気持ちが沸き起こって、俺は、歩の叔父さんの髪をそっと撫でてあげた。 癖っ毛の柔らかい髪が指の間を通ってすり抜けていく。 「柔らかい髪だね…」 俺がそう言うと、彼は嬉しそうに、また俺にキスした。 甘くて…トロけそうなくらい温かくて、夢でも見ているみたいだ。 俺は堪らなくなって、彼の正面から座り直すと、体を付けて抱きしめた。 「何でだろう…すごく落ち着くんだ…きっとその声が低くて良い声だからだと思う…」 俺はそう言って、彼の首に顔を寄せてスンスン鼻を鳴らした。 彼は俺の腰を抱いて、愛おしそうに髪にキスすると、頭を優しく撫でて抱きしめてくれる。 目を瞑って、彼の鼓動を感じて、彼の息遣いを感じる。 深くて、大きな息遣いに、俺の体が浮き沈みしていく。 それが面白くて、クスクス笑うと、彼も笑って俺の顔を覗いて来る。 「変な人だと言われたことは無い?」 俺が尋ねると、彼は微笑んでくる。 それがすごく可愛らしくて、俺は彼の髪の毛を優しく撫でながらキスをした。 舌を入れて、愛おしく思いながら、熱いキスを彼にした。 腰が震えて、興奮してくる気持ちと体を察せられない様に、ゆっくりキスした。 「北斗…今日、来てくれる?」 俺の顔を見上げて彼が寂しそうに聞くから、俺は頷いて答える。 「多分…」 そう言って、また彼にキスをする。 堪らないんだ…この甘いキスを止めることが出来なくて、何度も何度もしたくなる。 彼の唇から熱い息が漏れて、俺の体が熱くなる。 俺はすっかり勃起してしまったようで、彼は俺のモノを撫でて笑う。 「北斗、どうする?」 「抜いて…」 俺は彼にお願いした。 彼は膝立ちした俺のズボンのチャックを開けて、お尻まで下げると、膝の上に座らせて、勃起したモノを優しく撫でて握った。 「ん…はぁはぁ…あっ…ああ…」 俺はすぐに気持ち良くなって、彼の肩に掴まって体を反らせて、快感を感じる。 「北斗、キスして…」 彼の声が痺れた頭に聞こえて、俺は彼を見て、舌を出してキスした。 扱かれたモノが気持ち良くて、腰がゆるゆると動く。 キスした舌を強く吸われて、頭が痺れてくる。 「あっああ…きもちい…んん、あっ…はぁはぁ…あっ、や、やだぁ…イッちゃう…」 彼の肩に顔を持たれさせて、グングン襲ってくる快感に、耐えながら悶える。 もうダメだ…すぐにイッちゃう… 「待って…待って、イッちゃう…イッちゃうからぁっ!」 俺はそう言って、我慢しようとしたんだけど、激しくなる彼の手によって、その努力は無駄に終わって、腰を震わせると激しくイッてしまった… 快感の余韻に酔う様に微睡むと、彼は恍惚とした表情で、俺に熱いキスをくれた。 どうなってるんだろう… これは…愛されてるみたいだ… まるで、愛されてるみたいだ… 不思議だよ… どうしてなの…? 会って間もないのにそんな気持ちになるの? 彼の甘い言葉を、鵜呑みにしてはいけない気もして… この人の無駄に甘い優しさが、怖かった。 「じゃあ、待ってるね…」 そう言って最後にキスすると、ベランダの外階段を降りて、彼は道路の方へと歩いて行った。 俺はその後姿を、見えなくなるまで、目で追い続けた。 体だけの関係なんじゃないのかな… 惹かれていく気持ちを…抑えなくても良いのかな… そんな訳ない…相手は大人だ。 エッチが出来れば…きっと誰でも良いのさ… それに、俺には星ちゃんがいるじゃないか。 引っ張られるなよ…北斗… 俺は部屋のカギを全て閉めてリビングに行くと、ヘッドホンを消音にした。 今は一人だから… 手にバイオリンを持ち、もう片方の手に弓を持って、姿勢を正しく立ち、バイオリンを首に挟む。弓を美しく構えて、見えないバイオリンで弾いていく…一音一音…確実に出すように、伸ばして出すように…エアバイオリンで、エア練習をする。幼い頃から触ってきたバイオリンの感覚は、想像だけでも十分に再現できた。指を弦に置いて、弓を弾いて音を出す。振動まで伝わってきそうなくらいに、脳内で再現した。 それを三時間…ぶっ通しで練習する。 その後、エアチェロを二時間練習して、エアピアノを練習している所で、ピンポンとチャイムが鳴った。 外から聞こえる騒がしい声から、星ちゃん達が帰ってきたと分かった。 玄関を開けると、嬉しそうに笑う星ちゃんと渉、博が居た。 「釣れた?」 俺が聞くと、クーラーボックスから大きな鱒を取り出して見せた。 「わぁ…怖い…」 俺はそう言って、ちょっと身を引いた。 だって、目がギョロギョロ動いていて、まだ生きていたんだ… 星ちゃんは意気揚々とクーラーボックスを肩に掛けてキッチンに運ぶ。 俺はその後ろを付いて行った。 「どうするの?ころすの?」 俺が階段を上りながら聞くと、星ちゃんは言った。 「苦しんでるから、早く絞めてあげる。それで、美味しく調理して頂く。」 命を…? 俺は彼の後ろを追いかけてキッチンに向かった。 「ごめんね。いただきます。」 そう言って、星ちゃんは大きな魚の頭を押さえた。 エラの横に包丁を入れる。 次にしっぽの部分に包丁を入れると、水道水で洗い始める。 「まだ生きてるのに…」 俺は可哀想になって、その光景を惨劇だと思った… 「血抜きしないと…美味しく食べられないからね…」 うあぁ… すっかり息絶えた魚をまな板に載せて、上手に下ろしていく。 慣れた手つきが彼が釣りバカだと教えてくれる。 「俺、お昼ご飯食べてない。それ食べる?」 俺が聞くと、星ちゃんが言った。 「揚げて食べよう。」 フィッシュアンドチップスだ…! 渉と博もキッチンに来て、星ちゃんの包丁さばきを見てる。 どうだ、格好いいだろう! 俺の星ちゃんだぞ? 三枚に下ろされた切り身を、博が粉を付けていく。 合同作業だな。 俺は渉と、二人の手慣れた調理を見学し続ける。 パチパチと言う油の音と共に、ジューッと勢いよく音がして、魚を揚げる。 さっきまで生きていた鱒さん…いただきます。 お芋も一緒にあげて… 四つのプレートに盛り付けていく。 歩の別荘に置き去りにされた、熟成されたビネガーをダイニングに置く。 「良い匂いがするっ!」 興奮しながらダイニングテーブルに置かれるお皿を見る。 大きな魚の切り身と、お芋のフィッシュアンドチップスだ! 「わ~!いただきます!!」 そう言って、俺はビネガーをドバドバかけて一口食べる。 星ちゃんがお味を気にして、俺の顔を見ているから、俺は彼の方を見て言った。 「めちゃめちゃ美味しい~!!」 新鮮なお魚は身がプリプリしていて、血抜きのおかげか、臭みも無かった。 お米の消費が激しくて、俺は一回しかお代わりが出来なかった… とても美味しくて充実したお昼ご飯だった。 「北斗、何して過ごしてたの?」 クーラーボックスを、外で洗う星ちゃんに聞かれる。 俺は近くのベンチに座って教えてあげる。 「音楽を聴いていた。」 俺の答えに、クスッと笑うと、星ちゃんが言った。 「ゆっくりできた?」 だから、俺も笑って答える。 「うん。」 着替えたのに魚臭い彼と、湖畔のベンチで、のんびり過ごす。 本を持つ星ちゃんの手に、鼻を近づけてクンクンと匂いを嗅ぐ。 「うあぁ…くさ~」 俺がそう言うと、星ちゃんは笑って俺を膝に寝かせた。 星ちゃんのお父さんも釣りバカだ…だからあんなに手際よく魚を捌けるんだろう… 俺がお父さんから教えてもらった事よりも、実践的で役に立つ。 ヘッドホンから、シューベルトのますが流れてきて、俺は思った… さっきのお魚は成仏できたと…勝手にそう思った。 日が暮れて、湖の湖面を夕陽が照らして光らせる。 幻想的だ… 星ちゃんが俺の肩をつんつんとする。 俺は顔を上げて、ヘッドホンを首に下げる。 「歩たちが帰ってきた…行ってみよう?」 俺は頷いて、星ちゃんと別荘の中に戻った。 「…みんなに良いお知らせを持ってきました…」 そう歩が言って、博が鼻をクンクンさせている。 俺は星ちゃんの手を握って、あの人の手と比べていた。 「じゃ~~~ん!チキン買ってきたよ~!」 お~! 歩は良い匂いのする大きな袋をみんなに見せて、褒め称えられた! 「俺はチキン大好きだよ!」 何故かそう主張する様に、俺は叫んで言った。 でも、チキンだけじゃ足りないよ… 「帰りに、偶然叔父さんに会って、みんなにって買ってくれたんだ。」 一人、何本、食べて良いんだろう… 「歩の叔父さん、めっちゃ良い人だな~!イケメンだし!お店持ってるし!」 博がそう言って、歩の叔父さんを持ち上げる。 春ちゃんは俺の方を見て、嫌そうな顔をして見せる。 俺はそれを無視して、歩に聞いた。 「ねぇ、一人何本食べて良いの?」 「三本…」 足りないよ…足りない… 俺は項垂れて星ちゃんに言った。 「これじゃあ生殺しだよ…せめて六本は食べないと…食べた気がしないじゃない?」 俺がそう言うと、星ちゃんが言った。 「お昼のお魚…焼こうか?」 まだ残っていたんだ! 俺は頷いて、星ちゃんにお願いした。 キッチンに行って、チキンを各自のお皿に盛る。 「俺…ドラムの…」 チキンをお皿に持っていく春ちゃんに、俺が好みの部位を伝えると、ムッと怒った顔をした…。 そして、コソコソ声で言ってくる。 「お前、いつチキンが好きだって言ったの?あいつ、お前が好きだろうからって…これ買って、歩に持たせたんだぞ?」 え…いつ、そんな事言ったっけ… 思い起こしても、思い出せないくらい…どうでも良い会話だったようで、俺は頭を悩ませた… 星ちゃんのお魚も焼けて、俺は自分のお皿を持ってもらいに行く。 「お塩?お塩で食べるの?」 俺が聞くと星ちゃんが頷いた。 「いただきま~す!」 俺は星ちゃんに許可を取って、サイの部分をドラムと交換してもらった。 俺はチキンと言ったら、脚なんだ~ 「北斗、結局、今日、叔父さん所行ったの?」 「あ~まだだ~!」 歩に聞かれて、俺はそう言って答えた。 険しい顔をする春ちゃんを無視して、俺は歩に言った。 「後で行ってみる~。」 俺がそう言うと、博と渉が声を揃えて言う。 「チキンのお礼、言っておけよっ!」 「はいはい~。」 俺はそう言って、星ちゃんのお魚に塩を付けて食べる。 チキンと一緒に食べると、淡白な味が、より淡白に感じた…。 「星ちゃん、このお魚…唐揚げが美味しいかもしれないね。」 俺はそう言って、注文を付けた。 星ちゃんはそんな俺を無視して、焼き魚を黙々と食べた。 食後休憩をした後、俺は歩の叔父さんの所に一人、出掛ける。 玄関を出て、歩き始めると道路に出る所に誰かが立っていた… 「北斗…本当に一人で行くの?」 春ちゃんだ。 俺にそう声を掛けるから、俺は頷いて答えた。 「春ちゃんも、一緒に行く?」 そう言って手を伸ばすと、春ちゃんは俺の手を繋いで歩き始めた。 春ちゃんに見守られながら、初体験なんて…どうかしてる。 でも、あんまり気にならなかった。 むしろ、心強かった。 「チッキン~!ウマウマ~」 俺が歌を歌うと、春ちゃんが怒って言った。 「どうかしてるよっ!やめておけ。今なら間に合う!」 何がだよ… 俺は春ちゃんを見上げて言った。 「別に良いんだよ。だって、あの人は優しいもん。」 そうだ…異常に優しいんだ。 騙されてても良い… その時だけでも、自分を大事にしてくれるなら、それで良かった。 何回か来たお店の前に春ちゃんと来る。 入り口を開けようとすると締まっていて、電気も消えてるみたいだった。 「あれ~?」 首に下ろしたヘッドホンから漏れる音楽が、静かな周りと相反して、クライマックスに向けて盛り上がりを見せている。 「あ…ここ好きな所だ。」 そう言って、耳にヘッドホンを付けて春ちゃんの傍に行く。 うっとりして、好きな部分を聴きながら、春ちゃんに項垂れる。 「なんて綺麗なんだろう…こんな曲…どうして作れるのかな…?」 頭をグリグリして、曲のクライマックスに高揚する。 「春ちゃん、昔の作曲家はクズみたいな生活をしていたのに、どうしてこんなに美しい曲が書けると思う?人格と才能は比例しないの?良い人では、良いものは作れないのかな?少し出来の悪い人の方が…素晴らしいモノを作っている気がするよ…」 そう言って、春ちゃんの顔を見上げる。 春ちゃんは上を向いて、俺に口をパクパクさせている。 それが面白くて、彼の口に指を入れて舌を掴んで笑った。 春ちゃんは俺の頭を叩くと、俺の顔を持ち上げて上へ向かせた。 二階の窓に明かりがついてる。 そっか…二階が部屋だった。 俺は春ちゃんと手を繋いで二階に向かう。 カンカンと音が鳴る階段で、春ちゃんの足音がうるさくて嫌だった… コンコン ノックをして待つ。 交響曲第七番イ長調 第二楽章…ベートーヴェンだ… 俺の心境なの?それとも… そんな事を考えていると、目の前のドアが開いた。 中から、明るい光が差して、あの人が立っていた。 後ろの春ちゃんを見て、俺を見る。 「春ちゃんが見学したいって…」 俺はそう言って春ちゃんの手を強く握った。 歩の叔父さんは不思議そうな顔していたけど、中に入れてくれた。 俺はまだ、ヘッドホンも、春ちゃんの手も、外せないでいる。 ずっと同じメロディを繰り返して、どんどん佳境に向かっていくこの曲に縋って… 気持ちを盛り上げる訳じゃない…覚悟を決める為に… この曲を頭の中に…入れていく。 俺のヘッドホンに誰かが触れて、首の方に降ろされる。 振り返って相手を見ると、歩の叔父さんが、目の前に立っていた。 「北斗は、いきなり3Pをしたいの?」 不思議そうに俺の顔を覗いて聞いて来る。 「何?3Pって…」 俺はすぐ目の前に迫る顔に尋ねる。 「ん~、3Pっていうのは、三人でエッチするって事だよ…」 そう言って、俺の唇にねっとりとキスして、腰を抱き寄せる。 春ちゃんが、俺の手を離して、俺はもう逃げられなくなった。 ヘッドホンから漏れて聞こえる曲が変わる。 ベートヴェン交響曲第九番、第四楽章… 「あの…俺、お風呂に入っていないんだ。だから…お風呂に入りたいんだ…だって、星ちゃんは長風呂なのに、先に入りたがるから…だから…いつも…お風呂が最後になって…それで、あの…」 「一緒に入ろうか…?」 まだ名前も知らない、この人と? 俺は少し考えて黙り込んだ。 ヘッドホンの音が静かな部屋に響いて聞こえる。 「第九の合唱の部分、聴いてるの?」 歩の叔父さんが少し笑って聞いて来る。 「うん…別に喜んでるわけじゃなくて…合唱に入る前の所が好きなんだ…静かで、軽快で…でも、すごい不安定だ…そのバランスが良い…特に」 俺は緊張してるの? 饒舌に語りだした唇に、歩の叔父さんが、また熱いキスをする。 好きでもないのに、会ったばかりなのに…こんなに官能的に出来るなんて…大人って、なんて汚くて、さもしい… 俺の服を脱がせて、浴室に連れて行く。 俺は春ちゃんの方を見る余裕なんて無かった… ヘッドホンから聞こえる第九が…これからって時なのに…首から外される。 俺は立ち止まって、床に置いたヘッドホンを見下ろす。 そこからオペラ歌手の声が聞こえるのを確認してから、一緒に浴室に入った。 そこからは頭の中で、再生する。 ドイツ語の歌詞が頭の中で壮大に歌う。 浴室の壁に俺を押しつけて、熱いキスをしながら、丁寧に俺のモノが扱かれる。 押し寄せる快感に、キスした口の端から喘ぎ声が漏れる。 石鹸を申し訳程度に付けられて、体を撫でられながら気持ち良くなって、キスする。 頭の芯が痺れて、理性がシャワーで流れていくみたいに、無くなっていく。 あぁ…ここからが好きなんだ… 頭の中で再生してる、大好きな第九の部分…さっきまでの雰囲気とはガラリと変わって、突然訪れる軽快なリズム…ピッコロの音が…美しく目立って曲をリードする… 俺のお尻に歩の叔父さんの指が入ってきて、違和感に体が震える。 「あぁっ…待って!俺、あなたの名前も知らないのに…こんな大事な事、したくない…!」 俺はそう言って、シャワーで濡れた彼の髪を掻き分けて、目を覗いて見た。 ギラギラして、まるで野獣の様な目に、胸が跳ねる… 「北斗…俺は護(まもる)って言うよ。まもちゃんって、そう呼んでいいよ…」 ギラギラした目つきとは逆に、優しくて、落ち着いた低い声に、ギャップを感じる。 「うん…まもちゃん…」 俺がそう言うと、まもちゃんは嬉しそうに笑って、俺の頬に舌を這わせて、お尻の中に指を入れてくる。 「んん…、はぁはぁ…あぁ、まもちゃん…怖い…もっと、ギュッてしてて…」 彼の体を抱きしめて、熱くて大きな体に自分の股間を押し付けて、腰を緩く動かしながら、お尻を弄られる。 あぁ…気持ちいい… 「北斗は官能的だね…可愛くて、たまらないよ…」 そう言って、俺の喘ぐ口に指を入れて、舌を撫でる。 俺はその指をしゃぶって、お尻に入るであろう彼のモノを触って扱く。 「あぁ…可愛い…」 そう言うと、俺の背後に回って、背中を舐める。 今までそんな所、人に舐められたことが無かった俺は、足がガクガクするくらいに感じて、立っているのがしんどい。 そのまま俺のお尻の中を弄っていく。 お腹に圧迫感を感じて、呻き声が漏れる。 苦しいのか…痛いのか…気持ちいいのか分からない感覚に、ただ足が震えて、怖い。 「あはぁ…はぁはぁ…んん、あっ…うっ…んん…苦しい…」 俺がそう言うと、まもちゃんは指を抜いて、俺の背中に覆いかぶさってきた。 「初めては、二人きりでしようね…」 耳元で、低くていやらしい声が俺の鼓膜を揺らす。 その声に背中がビクッと反応して、腰が震える。 俺の腰を大きな両手が掴んで、引き上げられたお尻に、硬い、何かがあたる。 そのままズズッと、お尻の皮膚を巻き込みながら、中に何かが入ってくる。 「いやぁ…ぁああ…」 お尻に中の色々を巻き込みながら、奥まで何か大きなものが入ってきて、お腹が苦しくなる。 「はぁはぁ…はぁはぁ…うっ、苦しいよ…」 開けっ放しの口からよだれが垂れて、壁に押された胸が苦しい。 「まだ全部入ってないけど、北斗の中…すごく熱くて、キツクて、気持ちいいよ…」 吐息みたいな声を出して、興奮してるのが声から伝わって、頭が痺れる。 中に入ったんだ…俺の中に… 壁に押し付けた体を起こされて、乳首を掠める様に触られて、腰が震える。 「んん…あぁあん、はぁはぁ…ううっ…ん、ぁああ…あっ、ああん…あっ、あっ…」 どんどん気持ち良くなってくる自分が怖い。 弄られて敏感になった乳首は、撫でられるたびに快感が走って、摘ままれてこねられると、よだれが出るくらい気持ちがいい。自分のモノがガンガンに勃起して、痛くなる。 「あぁ、ほら…もう根元まで入ったよ?どう?北斗…痛い?」 俺の背中を舌で舐めながら、まもちゃんが言うから、俺は首を横に振った。 「はぁはぁ…北斗のおちんちんは…もう、イキたそうだね…?こっちも触る?」 俺のモノを指で跳ねさせて、まもちゃんが誘う様に聞いて来る。 俺は彼の胸に頭をもたれさせて、頷いておねだりする。 「してぇ…俺のおちんちんも弄って…イカせてよぉ…」 俺の中の彼のモノがグンと硬くなって、俺の中を満たす。 「北斗は…本当に可愛くて…たまんないんだよ…」 そう言って、俺のモノを手に握ってゆっくりと扱くと、腰を緩く動かして、俺の奥まで突いて来る。 快感が体中を満たして、理性なんてとっくのとうに無くなって…ひたすら訪れる快感を感じて、翻弄されて、味わった。 「あぁああ!いやぁ…中がきもちい…!いや、やあだ…おかしくなっちゃう!まもちゃん!だめ、だめぇ!イッちゃう!ぁああっ!イッちゃうよ!!」 足がガクガクして、体中の鳥肌を立てて、俺は激しくイッてしまった。 余韻じゃない…快感が抜けなくて、ちょっと触られただけで、イッたばかりのモノがビクンと跳ねる。 「可愛い…北斗…」 そう言って、俺の体にシャワーを掛けると、熱いキスをして浴室から出す。 床に置き去りにされていたヘッドホンから、もう違う曲が流れていて、好きな所を聞き逃したのに…あまり気にならなかった… 体をタオルで拭かれて、ぼんやりと彼の顔を眺める。 いつもこうやって筆おろしみたいな事してるのかな… 彼の頬を手で包んで自分に向ける。 野獣のような目ではなく、普通の穏やかな目に戻った彼にぼんやりしたまま聞く。 「毎年…何人の人が…犠牲になるのですか?」 俺の問いに、まもちゃんは意味が分からない…と困惑した顔をしたけど、しばらくしてから吹き出して笑い始めた。 「俺はそんな事しない…」 絶対嘘だ… でも、そんな事どうでも良くて、彼の体を手のひらで撫でて触った。 大人の体… これが…30代の体…なんだ。 腹筋も割れて…胸板もついてる…俺も、30代になればこうなるのかな…? ぼんやりとしながら、彼の体を手で撫でる。 「北斗…その顔が…すごく可愛いんだ…」 そう言って、俺の頬を撫でるとキスしてくる。 俺のぼんやりした顔が…可愛いんだ… 知らなかった… そのまま熱いキスで、また体が興奮してくる。 春ちゃんの事などすっかり忘れていた俺は、浴室から出て、彼を見て驚いた。 「あ、春ちゃん…」 そう言って、彼の元へ行こうとすると、腰を掴まれて、ベッドに連れて行かれる。 なんだか、彼氏の前でレイプされる女の子みたいだ… そのまま仰向けに倒されて、上に覆いかぶさるまもちゃんを見つめる。 彼の胸板を手で撫でて、厚みを感じる。 まもちゃんが俺の顔の横に顔を沈めて、俺の頭をグイッと押して、首筋を舐め始める。舌が這って、吸われるから、また頭の中がクラクラして気持ち良くなっていく。 荒い息遣いを耳の奥に感じて、自然と自分も興奮して、息が荒くなる。 彼の顔に自分の顔を頬ずりさせながら、触られる指の感覚に喘ぎ声が漏れる。 「あっ…ん、はぁはぁ…あぁ…まもちゃん…きもちい、もっと、もっとして…」 そう言って、彼の背中に手を回して、肉付きを感じる様に手で撫でていく。 あぁ…春ちゃんより、厚くてしっかりしてる… 俺の首筋から、胸の方に舌を這わせて、片手で乳首を摘ままれる。 体が敏感に反応して、腰が疼いて、足を広げてしまう… 彼の太ももが俺のモノにあたって、擦る様に、腰を動かしてしまう… 「北斗…可愛いよ…大好き、こんなに可愛い子。どうしよう…」 早く挿れて欲しくて…彼の腰を掴んでおねだりする。 「まもちゃん…俺に挿れてよ…ねぇ、はやく挿れて…?」 そう言って、彼の唇にキスして、口から吐息を漏らす。 堪らない、肉欲の塊みたいだ… 手のひらで、彼の腕を触って、筋肉の付いた太い腕に興奮して、勃起する。 腰のがっちりした体格にうっとりして、何度も撫でる。 「北斗…挿れて欲しいの?」 俺の顔を髪の隙間から覗いて、そう聞いて来るから、俺は頷いて答える。 彼は俺の足の間に体を入れると、俺の足を持ち上げて指を入れてくる。 またここからなのかな… そう、少し、煩わしく思ったけど、気持ちいいから…我慢した。 「んん…はぁはぁ、まもちゃぁん…きもちい、それ、あっ…ああ…」 感じまくる俺のモノが勃起して、揺れてるのが分かる。 まもちゃんはそれを口に咥えると、お尻に挿れた指と一緒に俺の中を刺激する。 グチュグチュ音を立てて、口で扱かれた俺のモノは痛い位に勃起して、今にもイキそうにビクビクと震える。 口から出されて、手で扱かれる。 「あぁっ!イッちゃう…だめ、まだイキたくないのに…あっあっ、まもちゃん…イッちゃうよ…や、やぁん、だめぇ!んん…あっあああ!!」 彼の手に扱かれて、俺はイッてしまった…。 快感が抜けるのを待たずに、息を整える間もなく、まもちゃんは俺の中に自分のモノを押し当てると、腰をグッと押し付けて、中に入ってくる。 気持ちいい…!! 「あっああ…きもちい、まもちゃぁん、きもちい…!はぁはぁ…あっあ…ああん!」 腰が震えて、仰け反った首から汗が垂れていく。 太ももが震えて、彼のわき腹にあたる。 「北斗…奥まで入ったよ…どう?」 俺を見下ろして、恍惚の表情を浮かべる彼にどう?と聞かれて、答えに困る。 俺の中を堪能するみたいに、腰を緩く回していく姿がすごくエッチで…興奮する。 早くさっきの快感が欲しくて、自分の腰を動かして、彼に催促する。 「まもちゃん…動かして…もっと、気持ちよくして…」 俺がそう言うと、彼は顔を少し歪めて、俺のモノを扱いた。 「ぁあっ!ん、や、やあだ、中で気持ちよくして…中で…あっああ…はぁはぁ…」 俺の腹から両手で撫でる様に体を撫でまわして、愛撫してくる。 それが、思った以上に気持ちよくて…体がいちいちビクビク跳ねる。 俺は腰を動かして、彼が動かない分、気持ちよくなろうとした。 「北斗は、せっかちだ…」 そう言われても、早く中で気持ちよくなりたい… 彼の両手が乳首まで来て、既に立っている俺の乳首を優しく指先でこねる。 「ああっ!!だめ、だめぇ…ちくび、きもちいの…ダメなの…まもちゃん、や、やぁだ…」 首を振って、彼の手を抑えて、イキそうな事をさせまいと阻止する。 まもちゃんはクスクス笑って、体を屈めると、俺の乳首をねっとりと舐める。 彼の体が屈むと、俺の腰が一緒に上に上がって、彼のモノが奥まで入ってくる。 お腹に圧迫感を感じて、怖い。 俺の乳首を舐めながら、まもちゃんが腰を動かし始めて、奥にガンガン当たってくる。 彼の顔がすぐ近くまで来て、俺の唇に舌があたる。 俺はその舌を口の中に入れると、自分がされたように、彼の舌を絡めて吸った。 まもちゃんの腰がねっとりと動いて、俺の中が気持ち良くなってくる。 頭が真っ白になって、快感だけを感じて喘ぎ声が大きくなる。 「まもちゃん…きもちい!ああっ!きもちいの、それ、凄い…好き…あぁああ!」 彼の顔を手で撫でて、彼の目を見て伝える。 もっとそれをして!と… 彼は口元を緩めて笑うと、俺の口にキスをする。 その時の目がトロンとしていて、可愛かった… 乱れた髪がすごく色っぽくて…声が低くて、目がトロンとした、体の大きな大人… 凄くエッチが気持ちよくて…俺をおかしくさせる大人の男… 堪らない… 「はぁはぁ…北斗…イッちゃいそうだ…もうイッても良い?」 俺は押し寄せる快感に翻弄されて、彼の体にしがみ付いて頷いた。 汗が滴って、俺の体に垂れてくる。 堪らない… 俺の中が敏感になって、きっかけがあればすぐにでもイケそう… 彼の乳首をペロリと舐めて、鳥肌がゾワッと立つのを見る。 すぐに俺の中で彼のモノがビクビク震えて、その後激しく波打った。 俺の中に熱い何かが溢れて、気持ちよくて、体が痙攣するみたいに震える。 そのまま感じた事の無い快感に身を任せて、激しくイク… 「熱い…熱いの…でた…」 そう、俺が呟くと、俺の髪の毛を掻き分けて、愛おしそうにまもちゃんがキスをした… 堪らなく気持ちいい… 俺の上に覆いかぶさって俺をじっと見つめてくる。 彼の頬を撫でて、うっとりと見つめる。 何だろう…この気持ち… 好き…?じゃない… 愛…?でもない… でも、何か大事な事を共有したような…そんな気持ちだ。 体を起こして、彼にキスする。 「また、いつか…する?」 俺が聞くと、彼は俺の頭を抱いて頷いた。 俺の中から、彼のモノを出すとドロッと精液が出てくる… 「お風呂で綺麗にしてあげる。」 そう言われて一緒にシャワーを浴びる。 彼の背中にくっついて、離れたくないと思ってしまう… もう離れたくないって…思ってしまう。 変なの… よく、知らない人なのに… お尻を綺麗に流してもらって、さっきと同じ、服を着る。 ヘッドホンを首に付けて、疲れた顔の春ちゃんに手を繋いでもらう。 そして、振り返ってまもちゃんに手を振る。 「まもちゃん…またね…」 そう言って彼の部屋を後にする… 「間違ってるよ…北斗。」 そう言って俺の方も見ないで、春ちゃんはどんどん先に歩く。 「…うん」 そう呟いて、夜空を見上げる。 星が今日もきれいに瞬いて、俺の行いを目撃される。 「春ちゃん?」 俺は春ちゃんに駆け寄っていく。 「すごく気持ち良かったんだ…」 そう言って、彼にキスする。 春ちゃんは驚いていたけど、俺の腰を掴んで、強く抱きしめて言った。 「お前は昔から…無鉄砲で、どうかしてる…」 そうなんだ…知らなかった… そう思いながら、彼の胸に頭を預けて目を瞑った。 暖かくて…柔らかくて…このまま眠ってしまいたくなる。 「遅いっ!」 別荘の前で春ちゃんと別れて、一人で戻ると、星ちゃんが俺を見て怒った。 「ヘッドホン、これの方が良かったから…結局交換しなかった。」 「どうせ北斗の事だから、叔父さんのオーディオ機器で何曲も聞いてたんでしょ?」 そう言って、歩が良いアドバイスをくれる。 俺は適当に話を合わせて言った。 「良いスピーカーが四台もあったんだ…」 これは本当のこと。 「だから、それで交響曲をいくつか聞いて…すごく耳が気持ちよかった…」 そう言って笑うと、星ちゃんは用意していたタオルセットを俺に渡して言った。 「もう!ネッシーに連れて行かれたかと思ったよ!」 俺はお礼を言って、タオルセットを受け取ると、そのまま風呂場に向かった。 「温泉~」 そんな風にいつもの調子でお風呂に向かう。 素敵だったな…髪の毛の向こうから、俺を覗く目…堪らなかった… 洗面所に入って鍵を閉める。 そのまま服を脱いで、さっきと同じように裸になる。 自分の裸を鏡で見て…見たくなくてすぐに視線を逸らした。 浴室に入って、体を洗う。 さっきも洗ったから、少し適当に洗う。 髪を洗って、顔を洗う。 スッキリして、浴槽に入る。 「あ~~~、きもちい…」 こんなお風呂なら、長風呂できる… ここに窓があれば…露天風呂みたいになるのに… 頭にタオルを乗せて、浴槽に体を伸ばす。 「まもちゃん…は…かっこいい…」 そう呟いて、ぼんやりと頭の中で流れ始める音楽に意識を向ける。 ボレロ… 約15分間…同じメロディーが続く中、楽器がどんどん増えていくんだ… 最初は退屈だった時間を回収するみたいに、最後は盛大に盛り上がって、かっこよく終わる…。この曲を聴いた後は、何故か達成感を感じる…おかしいよね… 最後の少しだけ変わる所が好きだ…もう終わるよって…教えてくれてるみたいで… 頭の中で、ティンパニーが鳴り響く。 あぁ…終わっちゃうんだ… もうすぐ終わる… あぁ…終わった… 湯船に15分間浸かってボレロを頭の中で聴いた… 少しのぼせたみたいに、ふらつきながらお風呂を出る。 洗面所で歯磨きをしながら、用意してもらった新しい下着と部屋着を着る。 今日も星ちゃんと一緒に寝よう… カギを開けて、着替えを部屋に置きに行く… 「どうして?」 「良いだろ…?」 そんなひそひそ声が聞こえて、足を止める。 声の方を見ると、春ちゃんが歩とベランダで何か話していた。 「どうしたの?」 伺う様に聞くと、二人は誤魔化すように声を揃えて、何でもないと言った。 俺は蚊に刺されるよ?と言って自分の部屋に戻った。 既に星ちゃんがベッドに寝転がりながら本を読んでいる。 俺は隣に飛び乗って、布団をかぶって星ちゃんの腹の上に手を置いた。 1㎝下には筋肉があるって…星ちゃんが言った、柔らかいお腹。 「ね、力入れて?」 俺がお願いすると、フン!と言ってお腹に力が入る。 「腹筋が出て来たね。」 そう言って、指でなぞって笑う。 そのまま瞼が重くなって、目を瞑る。 「星ちゃん…おやすみ…」 「ん、お休み。」 星ちゃんの声を聞いて落ち着く… 俺は今日、星ちゃんに言えない、危ない事をしてしまった… 後悔はしてないけど…少し怖かった。

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