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8月29日(土)_01
8月29日(土)
「北斗…おはよう。」
まもちゃんが俺の髪を撫でて、優しく起こしてくれる。
俺は彼の方に手を伸ばして、彼の肩を掴んで引き寄せる。
「おはようじゃない。おはようはもうしない。もう朝は来ないんだ。だから、おはようはしない。」
俺はそう言って、彼の体に抱きついて、ベッドに引きずり込む。
「ずっと寝ていたら、永遠に朝は来ないし、次の日も来ないよ?だって、夢の中に居るんだからね。だから嫌な事がある時は寝ちゃえば良いんだ。」
こうやって毎日朝起きるのが嫌だ…
まるでカウントダウンする様に、日が無くなっていくから…
大嫌いなんだ…
俺がそう言ってごねていると、まもちゃんは困った顔をして言った。
「北斗…バイオリンが聴きたいんだ…弾いてよ。」
そうか…
俺も丁度、そう思っていたんだよ?
俺は体を起こしてベッドに座った。
「うぅ…痛い…」
そうだ、俺はさっちゃんの暴行により、負傷していたんだった…
部屋着の上を脱いで、布団の中を覗いて、剥がれた湿布を探す。
でろでろになった湿布を再び体に張り付ける。
だって痛いんだもん…
「ふふ…新しいの付けてあげる。」
そう言ってまもちゃんは寝ぼけた俺にキスすると、新しい湿布を取り出した。
「ほい!」
そう言って張られた湿布は、めちゃめちゃ冷たくて、目が覚める。
「ん~~~~!」
俺は身を屈めて湿布の衝撃を耐える。
俺の背中をまもちゃんが大きな手のひらで撫でる。
それが気持ち良くて、そのまま目を閉じる。
眠たい…眠っちゃいたい…
「北斗…バイオリン弾いてくれよ…」
全く!
みんな俺のバイオリン中毒なんだ!!
俺は体を起こして部屋着を着なおすと、ベッドから降りてバイオリンケースを持ってくる。
「あ…」
まもちゃんの名前が焼き印で押された場所のすぐ下に、俺の名前が丁寧に彫られていた。
藤森北斗…
「ふふ…凄いな…さすが職人だ。藤の漢字がこんなに美しく彫れるなんて…やっぱり手先が器用なんだね。」
俺はそう言って、彫られた名前を指でなぞる。
まもちゃんは俺の様子を見て、優しく微笑む。
目が潤むのを堪えて、バイオリンをケースから取り出す。
「さぁ、まもちゃんは何の曲が聴きたいのかな?」
俺は取り繕う様に、明るくそう言って、バイオリンを首に挟んで彼を見下ろした。
ベッドに座りながら俺を見上げて、まもちゃんは言った。
「北斗、シシリエンヌを弾いて…」
了解~!
俺は姿勢を美しくして、バイオリンを伏し目がちに首に挟んだ。
そして、視線をまもちゃんに向けて、弓を美しく構える。
弓を動かして、俺のシシリエンヌを弾いていく。
あんなにこの曲を哀しく弾いていたのに…今はただただこの旋律に酔いながら弾いている。美しく、消えて行ってしまいそうなこの曲を、味わいながら弾いていく…
決して呑まれる事無く…旋律を楽しみながら、情景を思い描いて弾きあげていく。
それはまるで映画を見る様だ。
まるで自分の事の様に感動して涙を流すけど、見終わった後はそんな感情が消えてなくなるような…そんな俯瞰した感覚。
これを人はオン、オフと呼ぶの…?
どっぷりと曲に浸かるのも悪くない。でも、こうして俯瞰して弾くのも…悪くない。
だって、この方が表現したい情緒を意のままに表現できるんだ…
自分じゃない、曲でもない。
3人称視点で…曲の情緒を表現できるんだ…
曲を弾き終わると、まもちゃんは俺の顔を見上げながら涙を落とした。
俺はバイオリンを挟んだまま、彼を見下ろして聞いた。
「まもる…どうして泣いてるの…」
まもちゃんは俺の右手を握って泣きながら微笑んで言う。
「とても…美しいんだ…」
そうか…
「では…次は何を弾きましょう?」
そう言って、伏し目がちに笑って、彼を見る。
「そうだな…愛のあいさつを聴かせて?」
そうリクエストを受けて、俺は口元を緩めると、弓大きく構えて、彼を見つめる。
「護。愛してる…」
そう呟いて…愛のあいさつを弾いて聴かせた。
それは彼を包んで、俺も包み込む音色だ。
まもちゃん…離れたくない気持ちが…どうしても、無くならないよ。
また会える希望を貰ったのに、俺は…甘ったれだから、離れたくないって、ごねてしまうんだよ…
今日が永遠に終わらなければいいのに…!
そう、毎日思ってしまうんだ…
この愛のあいさつを俺は何度弾いただろう…
美しい旋律は変わらないのに、弾いた場面が頭をよぎって胸に込み上げる。
最後までこの曲に彼への思いを込めて、美しく優しい愛のあいさつを彼に届ける。
曲を弾き終えると、俺はバイオリンと弓をだらんと垂らして、彼に抱きついて甘える。
「もう…やだ…」
そう言って彼の肩に顔を埋めてシトシトと泣く。
まもちゃんは俺の背中を支えて、優しく何度も撫でる。
俺の感情が落ち着くまで、優しく撫でて、俺の弱さを受け止めてくれる…
朝の支度を済ませて、まもちゃんが出掛ける準備をしてる。
俺は携帯とにらめっこして固まっていた。
“これから眠る。”
そんな事まで連絡するの?おかしくない?
携帯に送られてきた暗い部屋の写真と、伊織のメッセージを見ながら途方に暮れていたんだ…
「北斗…お散歩に行こう。」
そう言ってまもちゃんが俺の背中に抱きついて来る。
俺はこのメールに返信したいんだ…
でも、なんて書いたらいいのか…ずっと悩んでるんだ。
「なぁんで、こんなことまで連絡するのかね?おかしいね、やっぱり変態だから、ちょっと普通とは違うんだね!」
まもちゃんが俺の携帯を覗いて、少しいじけてそう言う。
「このメールになんて返信するのが正解なの?」
俺は大人のまもちゃんを見上げて尋ねた。
まもちゃんは俺の携帯を取ると、俺をベッドに寝かせた。
「出かけるんだろ?」
そう言って起き上がろうとする俺を、まぁまぁ…と優しくベッドに戻す。そして着替えたばかりのシャツを捲り上げて、湿布の張られた体を露出させる。
そして、いやらしく俺の乳首をツンと触る。
「なっ!なぁんだ!」
俺が嫌がると同時に写真を撮る。
「これを送ってやれ~い。」
そう言って俺の携帯で勝手に文字を打って、伊織に送信する。
最低だな。
俺は携帯を取り返して、彼の打った文字を確認する。
“これから、お楽しみです!”
最低だな。
すぐに返信が来る。
でも、もう見ない。
まもちゃんは右手に小さな手提げを持って、反対の手で俺と手を繋ぐ。
俺はまもちゃんの手に引かれながら玄関へ向かう。
「湖を探検するの?」
俺が聞くと、まもちゃんは頷いて答えた。
朝ご飯もまだなのに…死んじゃうよ。
「お腹空いたのに~!」
俺はそう言いながら靴を履く。
「ちょっと遠くのカフェまで歩いて行って、そこで朝食を摂ろう?凄く綺麗な景色なんだよ。」
まもちゃんがそう言って玄関の鍵を閉める。
俺のお腹がそこまで持てばいいけど…
「まもちゃん?どのくらい歩くの?」
遊歩道を手を繋いで歩く。
「ん~、湖の反対側だから…30分くらい?」
マジかよ~。直生と伊織の別荘の近くだ…遠いな。
「おんぶして…」
俺はそう言って立ち止まると歩くのを放棄する。
まもちゃんは俺に背中を向けて少ししゃがんだ。
飛び乗って、昨日のケガが痛む。
「いてて…」
そう言いながらおんぶしてもらう。
痛いけど、大好きな彼の背中に乗っていたいんだ…
温かくて、大きくて、大好きなの。
明後日には…もうこんな風に触れなくなるんだから…
だから、痛くても彼に触っていたい。
「あ~!北斗がオギャッてる!」
博の声が聞こえる。
魔の危険地帯…歩の別荘前エリアに来たんだ…
俺は顔を下に向けて言う。
「人違いです…」
そう言ってまもちゃんの腹を足で叩く。
それはまるで馬への合図。
「ヒヒン!」
まもちゃんはそう言っていななくと、わざと、歩の別荘の近くに行って皆に挨拶して回り始める。とんでもない、暴れ馬だ!
アレキサンドロよりも、やっぱりこの馬は全然言う事を聞かない!
「うわ、ダセ!」
春ちゃんがそう言って俺の痴態をみんなに言いつけて回る。
「あぁ…北斗、マジかよ。」
渉が呆れた声で俺に“マジかよ”って言う…
「おはよう~。もう帰る準備してるの?気が早いなぁ~。」
そんなみんなの声なんて意に介さずに、まもちゃんがそう言って誰かに話しかける。
「どっかの誰かさんが居ないせいで、片付けが大変なんです。今から取り掛からないと、31日までに間に合わないから。」
星ちゃんがそう言って俺の足を叩く。
俺は知らない振りして、まもちゃんの背中に顔を埋めて言う。
「人違いです…」
ヨッコラショと俺を背負い直して、まもちゃんは歩き出す。
「これはこのままにしててくれたら後で片付けに来るよ?」
「あ、叔父さん、おはよう。…その後ろの…もしかして。あぁ…全く。北斗は…。これからどこかに行くの?」
歩だ…!
俺はまもちゃんから顔を上げて歩に挨拶した。
「おはよ~!」
バーベキューの鉄板を片付けてる歩を見下ろして、にっこり笑ってご挨拶したのに、歩は俺を見上げると呆れた顔をして言った。
「全く!赤ちゃんじゃないんだから、自分で歩くの!」
「いやだ。」
俺はそう言って、まもちゃんの背中に顔を埋める。
だめだ!
このエリアは俺にとったら危険地帯だ!
俺は体を起こして、マモ~ルの腹に踵で2回合図を出して、髪の毛を引っ張って、手綱を引く。
「マモ~ル、行け!髪をむしるぞ?」
「ヒヒン!」
まもちゃんはそういなないて、歩の別荘前から先に進みだした。
「ダメなの~。ダメ、ダメ~!」
俺はそう言って彼の肩から両手を下に下げて、べったりとくっ付いて、まもちゃんに注意した。
「なぁんで?良いじゃない。イチャイチャしてる所、見られても良いじゃない。」
まもちゃんはそう言って体を揺らした。
可愛い事言うんだ!
「んふふ。」
俺はそう笑って、彼の胸の前で手を組んだ。
そのままマモ~ルに乗って、足場の悪い湖のほとりを散策する。
「疲れた。」
突然のスタミナ切れ。
俺はマモ~ルから降りて、彼を休憩させる。
体を撫でて労ってあげる。
「よ~し、よし。良い子だね。もう少しスタミナがあると良いのに…年だから、仕方がないね?」
俺はそう言って、まもちゃんの左手を自分の体に絡めて、右手で優しく撫でながらえっちらおっちら歩き始める。
二人三脚並みに動きづらい上に、対格差があって、一歩の違いに足が取られる。
「いつか転ぶよ?」
まもちゃんがそう言って立ち止まる。
「じゃあ抱っこして?」
俺はそう言って彼の目の前に行って両手を広げた。
体を離したくないんだもん。
仕方ないよね?
まもちゃんは俺を見てにっこり笑うと、正面から俺を抱っこする。
彼の背中に両手を滑らせて優しく撫でながら、彼の髪を撫でる。
「まもちゃん?疲れた?」
彼を見下ろして尋ねると、まもちゃんは俺を見上げて言った。
「疲れた。でも、頑張ってあげる。」
何それ…可愛いな。
俺はまもちゃんをギュッと抱きしめて、彼の髪の毛にハフハフする。
まもちゃん大好きだ…俺のために頑張って!
しかし、しばらく歩いていると、だんだんと胸の中のまもちゃんの息が上がってきてしまった。
「もうダメかな~ここまでかな~?」
俺はそう言って、彼の表情を伺う。
もう年だ…仕方がないよね。
「まもちゃん、もう良いよ。降りる。」
俺はそう言って、彼の顔を覗いた。
優しく頬を撫でて、頑張ったまもちゃんを誉めて労う。
「よしよし、頑張ったね。もう良いよ?」
俺がそうすると、まもちゃんは俺の顔を見上げて、ニヤッと笑った。
「ラストスパートだ!!今年こそ…県大会に行くんだ!!」
そう言って、まもちゃんは俺を抱っこしたまま走り出した!
「あはははは~!!すごいぞ!護!!」
俺は笑いながら風を切る。
なんてすごい馬なんだ!底力があるんだ!
しかし、とうとうマモ~ルは失速して、立ち止まってしまった。
俺はゆっくり彼から降りて、ギュッと抱きしめてあげる。
「まもちゃんって凄いね。ずっと俺を抱えてここまで歩くなんて…誰も出来ないよ?やっぱりまもちゃんは凄いんだね。惚れ直しちゃった。」
そう言って彼の体に甘えてスリスリする。
それはちょうど直生と伊織の別荘の前。
「ここ、直生と伊織の別荘だよ?」
俺はまもちゃんに教えてあげた。
「良い所に別荘があるんだ。」
まもちゃんはそう言ってじろじろと見た。
「また来年、来るかな?」
俺はまもちゃんの左手を握ってそう聞いた。
まもちゃんは俺を見て首を傾げてぶっきらぼうに言った。
「さあね!」
おっかしい…妬いてるんだ。
まもちゃんに連れられて、もう少しの距離を歩いて行く。
「あそこだよ~!」
まもちゃんの指さす方に、湖沿いに建てられたお洒落な外観のカフェを発見する。
ウッドデッキの上にパラソルとテーブルの並ぶカフェ。
イタリアっぽく見えるのはタープの色使いのせいなのか…
それとも、白く塗られた木のせいなのかな…?
「おわぁ、オシャンだね~。」
俺はそう言ってまもちゃんと一緒に歩いて向かう。
「いらっしゃ~い!お~、まもちゃん!」
顔見知りなのか、気の良さそうなお姉さんに出迎えられて、まもちゃんは世間話してる。
俺はまもちゃんの傍から離れて、店内を見渡す。
天井が高くて、開放感のある店内には所々に観葉植物が置かれていて、ハワイのサーフカフェみたいだ。お客さんもほどほどに入ってる…
「北斗、おいで一番いい席に座ろう?」
俺の手を引いて、まもちゃんがウッドデッキに出る。
水の音がする。
俺は立ち止まってまもちゃんを見上げる。
まもちゃんは俺を見下ろして、優しい目をする。
「怖い?」
そう聞いて、俺の目の奥を探る様に見つめてくる彼。
「いや、怖くない。」
俺はそう答えて、彼の目を見て笑う。
風の強くない湖の上は、鳥が何羽かぷかぷかと浮いて、気持ちよさそうにしてる。
「見て!まもちゃん。鳥が泳いでる。」
俺はそう言って、彼の指定した”一番いい席“に腰かけると、湖の鳥を見てはしゃいで笑った。
知らないうちにまもちゃんが注文を済ませて、テーブルにコーヒーとオレンジジュースが運ばれる。
「まもちゃん?昔、小学校の林間学級でさ、遊覧船に乗ったんだよ。その時は、胸がドキドキして機嫌が悪くなって、星ちゃんに怒られたんだ。でも、ここに居ても平気だよ?凄くない?」
まもちゃんの指定した席はウッドデッキの一番端…地面から一番離れた場所。
この下には底の無い水があるんだ。
俺は意外にも自分が湖の上に居るのに動揺しない事に驚いていた。
「ふふ、星ちゃんが気の毒だな。」
まもちゃんはそう言うと、湖を見ながらコーヒーをすすった。
朝の穏やかな湖。
「北斗?今日と明日はお店はお休みだ。」
まもちゃんはそう言って俺の手を握る。
「一緒に居よう?」
俺はそう言って微笑む彼の笑顔に釘付けになった。
だって、ものすごく…かっこいいんだ…
惚れちゃう…いや、惚れてるんだ。
「…うん」
俺は視線を落として、恥ずかしそうにそう言うと、チラッと彼の顔を見た。
俺の顔を見てだらしなくニヤけるから、せっかくのドキドキが消えて行く。
俺の目の前に焼いた分厚いトーストとサラダ、ベーコン、目玉焼き、ウインナーの乗ったプレートが置かれる。
まもちゃんは卵サンドとポーチドエッグの卵尽くしのプレートが置かれる。
「まもちゃんって、卵が相当、好きなんだね。」
俺はそう言って、フォークを持つと、ウインナーを刺して持ち上げる。
そのままポリポリかじって、食べていく。
店内から漏れて聞こえる音楽は、お洒落なパーカッションのシャンゼリゼ通りの歌。
これ、この前も聴いたな…
俺はそう思いながら、鼻歌で一緒に歌ってみる。
「ふふっ」
まもちゃんは俺を見て少し笑った。
鼻歌を歌いながら、彼の寄越したサングラスをかけて湖を見る。
キラキラして眩しかった湖面が見える。
小さな鳥がウッドデッキに遊びに来て、俺のパンくずを拾いに足元にチョコチョコと近づいて来る。
「北斗の食べ方が汚いから、小鳥が片付けに来たんだ…」
まもちゃんがそう言って笑うけど、トーストはどうやったってパンくずが落ちるよ?
「俺のせいじゃない。」
俺はそう言って笑って、目玉焼きを一口で食べる。
「あぁ…」
呆れた顔のまもちゃんを無視して、全部口に入れて一気に噛む。
グジュッと音をさせて、口の端から溢れた黄身が漏れて顎を伝って落ちる。
「全く…」
まもちゃんがそう言って、席を立って俺の方に体を屈めると、いつもの様に舐めて拭ってくれる。
「んふふ。」
俺はそう笑って満足すると、湖を眺めて鼻歌を歌う。
お店がお休みならのんびりしよう…
プチトマトじゃない切られたトマトをサラダから掘り起こして、フォークで差してまもちゃんに差し出す。
彼はそれを口を開けて受け取る。
大きなトマトの切り口が苦手なんだ。
内臓が漏れてるみたいに見えて、苦手なんだ。
店内の曲が変わって、バラ色の人生…ラ・ヴィアンローズが流れる…
いい歌だね…まるで俺の気持ちみたいだ。
プレートの上を食べつくして、まもちゃんの半分残ったポーチドエッグをフォークに乗せる。
そのまま口に運んで、一口で食べる。
そして、鼻歌を歌う。
まもちゃんの傍で、彼に思いを寄せながら、愛について歌う歌を鼻歌で歌う。
「ふふっ」
また、まもちゃんが笑った。
これは笑う内容じゃないのに、全く!
頬杖をついて、彼の目を見つめながら、ラ・ヴィアンローズを鼻歌で歌った。
「このお店はイタリアっぽいのに、フランス語の曲を流す。」
俺はそう言ってまもちゃんの足を足で突っつく。
「ぶふっ!良いんだ。そんなの気にするの北斗ぐらいだから、良いんだ。」
まもちゃんはそう言って俺の頭を撫でる。
俺はそれを黙って見つめる。
条件というのは大事だ。
この場所に流れるならイタリアの曲が断然良い。
ヴェネツィアの雰囲気を少しでも体感できるじゃないか…
「さて、帰るか…」
まもちゃんがそう言って席を立つ。
俺は彼の後に席を立って、彼の背中を追いかける。
「まもちゃんの連れの子、めっちゃ可愛いね。紹介して?」
お会計の時、お店のお姉さんに絡まれる。
「北斗って言うんだよ。可愛いだろ?このほっぺ見て?プニプニしてるんだ。」
まもちゃんはそう言って俺のほっぺをプニプニして見せる。
「うん。って言うかさ…可愛いよね。君がもし男以外もOKなら、お姉さんとどう?」
軽いな。
「え、ちょっとやめて。何なの…」
まもちゃんはそう言って俺を背中に隠してお会計をする。
「だって、可愛いんだもん!良いじゃん!けち!」
倫理観が欠如してるんだ。
お姉さんとまもちゃんが言い合いをする中、俺は先に外に出て店前の花壇を見る。
帰ったらお店の前の花壇にお水をあげよう…
今日も残暑で暑くなるらしいから、沢山あげよう。
湖のほとりの向こうに道路が見えて、街並みが見えた。
こっちはこんな風に栄えてるんだ…初めて知った。
「だから、そういう問題じゃないんだよ?はい、また来るね~!バイバイ~!」
そう言いながらまもちゃんがお店から出てくる。
「全く!ダメだね!北斗?遊び人には気を付けなさい?」
そう言って俺の頭を撫でると、俺の見ていた街並みの方へ向かって歩き始める。
俺はまもちゃんの左手を掴んで、手を握ると彼を見上げて聞いた。
「まもちゃん、どこいくの?」
「ちょっと用事があるんでごわす~」
ごわす…それも死語かな?
地面が土から石に変わり、レンガ調のブロックで舗装されたお洒落な通りに出た。
小さな商店が並んだその場所は、まるでお洒落な商店街。
その内の一つ…仕立て屋さんの看板のお店に入って行く。
ショウウインドウにはトルソーが置いてあってメジャーが掛けられている様子から、このお店がオーダーメイドの洋服店だと予測した。
まもちゃんは、直生と伊織に続いて、コスプレにハマってしまったのかな…
あんなに彼らのセンスに感心していたからな…あながち…
いや、まもちゃんは意外とそういう所は現実的だ。
「あれ、北斗。おはよう。」
考えを巡らせていると、知ってる声に声を掛けられて、驚いて相手を見る。
「あ…なんだ、橘さんじゃん…」
そうだ、まもちゃんのお店の常連さんで、いつもお洒落な格好でお店に訪れていた彼、橘さんがそこにいた。
「北斗…出来てるよ?一度手を通してみて?」
俺はそう言われて、奥に案内される。
「何が出来てるの?」
俺は橘さんの顔を覗いて尋ねる。
全然話が読めないんだもん。やんなるよ。
「じゃあ…脱いでみようか…?」
溜めて言うなよ…
まもちゃんが見守る中、橘さんの前でパンツだけになる。
「どうしたの?これ?」
俺の湿布を見て、橘さんが驚いてまもちゃんに聞く。
「派手に…転んだんだ。」
まもちゃんは俺を見つめながらそう嘘を付いた。
俺はそんな彼を見つめてにっこり笑う。
「これは、痛そう…」
そう言いながら、橘さんが渡した水色のシャツを着る。
柔らかくて、肌触りが良くて、驚きながら羽織る。
「凄い、柔らかい!」
俺がそう言って笑うと、橘さんも笑ってボタンを手際よく留めてくれる。
「シャツは良いね。」
パンツとシャツ姿は妙に面白い。
まもちゃんは俺を見てこっそり笑ってる…気付いてるぞ!
「じゃあ、ズボンも穿いて見て?」
そう言って渡されたのはワインレッドのスーツのズボン…
「綺麗な色だね~?」
俺はそう言ってズボンを履いてみる。
ウエストがゴムで伸びる様になっているのか、簡単に穿けた。
「ピッタリだ!!格好いいね!」
そう言って橘さんが喜んでまもちゃんを見る。
まもちゃんは俺を見てうっとりすると言った。
「すんごい、良い!」
マジか?
「じゃあ、ベストを着ようね。」
そう言っていつも橘さんが着ている様な襟付きのベストを渡される。
俺はそれを着て、ボタンを留める。
こげ茶色でうっすらと赤いチェックの入ったベストは、高級感が出て我ながらイケメンに見えてくる。
鏡に映った自分の姿を、くるくる回りながら何度も見る。
「んふふ!これは俺のビジュアルを爆上げさせるね!」
俺がそう言って笑うと、橘さんが最後にジャケットを渡した。
やばい。
俺、これ着てどこ行くの?!
ワインレッドのジャケットを羽織って、まもちゃんに見せると、彼は仰け反って興奮して言った。
「すんごい!良い!」
語彙力よ…
「ピッタリだ…本当に、最近の子供はスタイルが良すぎて困るね…モデルさんみたいだ。」
橘さんはそう言って、俺に黒い蝶ネクタイを掛ける。
「んふふ。なぁに?仮装パーティーでもするの?コスプレ祭りに行くの?」
俺はニヤニヤしながらまもちゃんに尋ねる。
まもちゃんは俺をうっとりと見つめると言った。
「北斗にプレゼントだよ。やっぱり赤だね。とってもよく似合ってる…。」
「へ?」
「良かったな?北斗?その年でオーダーメイドのスーツなんて…持てないぞ?」
そう言って橘さんが俺のスーツの裾を持って下に引っ張る。
「俺に?俺の?」
俺はそう言ってまもちゃんに何度も尋ねる。
彼は嬉しそうに俺を見て頷いて言った。
「これならコンクールでも着られるだろ?」
燕尾服より、ずっと良いよ。
「わぁ…そうなんだ…嬉しい。ありがとう。」
俺はそう言って下を向くと、何故だか涙が落ちて、ズボンの裾を見る橘さんの頭を濡らした。
「ちべて…」
橘さんはそう言って立ち上がると、満足そうに言った。
「坊ちゃん、良く似合ってますよ?これなら白いバラもよく似合いそうだ。」
鏡の前の自分を見て、うっとりする。
俺の姿を嬉しそうに見つめるまもちゃんと、鏡越しに目が合って、胸が痛くなる。
そのまま振り返ってまもちゃんに抱きついて、泣く。
「まもちゃぁん!貧乏なのに!ありがとう!」
俺の言葉にまもちゃんが苦笑いして、橘さんが大笑いする。
俺がまもちゃんの前で、クルクル回って、スーツを見せびらかしている間…
橘さんが破られたくすんだピンクのシャツを直してくれてる。
「こんな破れ方して…転んだんじゃないな…誰かに襲われたんだ…」
橘さんがブツブツ言いながら繕ってくれる。
「持ってきてたんだね。あのシャツ…」
俺はスーツを脱ぎながらまもちゃんに言った。
本当に、この人は…俺の知らないうちに何でも準備しているんだ。
それは俺が子供だから気が付かないのか…
それとも、嘘つきの彼だから上手にそつなく気付かれないうちに出来るのか…
どちらでも構わない。
俺の為に成されるその全てに愛を感じて、堪らなくなる。
繕われたピンクのシャツはまるで元通りの様に復活した!
俺はそれを抱きしめて泣きながら喜んだ。
「良かった…良かった…!ありがとう…橘さん、ありがとう!」
帰りはそのシャツを着て帰る。
破られた袖は元通りに繕われて、よく見ないと分からない。
「ん~!!最高だ!」
俺はそう言ってクルクル回って喜びを表現する。
まるでブロードウェイばりのオーバーなアクションで、まもちゃんに抱きついて、キスする。
「護…!なんて素敵な人なんだ!俺の為に…貧乏なのに、無理してオーダーメイドの服を準備してくれた!!」
俺はそう言って笑うと、まもちゃんの左腕に手を通して彼の体にもたれながら歩く。
「そんなに…貧乏じゃない。」
まもちゃんはそれが気に入らないのか…
俺は彼の顔を覗き込んで訂正した。
「そんなに貧乏じゃないまもちゃんが、無理して…」
「無理してない…」
まもちゃんは俺をジト目で見てそう言った。
面倒くさいな…
「まもちゃんが俺に素敵な物をくれた!」
俺はざっくりそう言って彼の頬に再びキスをした。
帰り道だから…仕方なく、歩の別荘の前を再び通る。
星ちゃんが一生懸命ベランダの窓を拭き掃除してる。
「ぷぷ!見て?星ちゃんが労働してるよ?」
俺はまもちゃんにそう言って教えてあげる。
まもちゃんは俺を見ると、呆れた顔をして言った。
「北斗も、一緒にお手伝いしなさいよ。」
は?なんで?
ベランダによく出ていたのは渉と博だ。
あいつらがあそこでイチャイチャしてたんだ!
「いやだ、俺は家に帰ってまもちゃんとエッチするんだ。」
俺はそう言ってまもちゃんを引っ張って通り過ぎて行く。
あんな事言ったくせに、まもちゃんはニヤけながらついて来る。
お店の前に戻ると、じょうろに水を入れて花壇に水をあげる。
「北斗~?上に行こう?ね?早く上に行こう?」
そう言って俺の体に纏わりつくまもちゃん。
余りに必死な様子に…ちょっと引くよ。
「お水をあげないと、くたびれちゃうんだよ…」
俺はそう言って、お花に十分にお水を与える。
じょうろを置いて、まもちゃんと一緒に二階に上がる。
玄関の鍵を閉めて、スーツを壁に掛ける。
クーラーをガンガンに付けて、まもちゃんが俺をギラギラした目で見つめてくる。
凄い気合いだな…ちょっと引くよ。
俺は玄関から上がると、ギラギラしたまもちゃんを素通りして、テーブルの傍に腰かけて、大きなスピーカーに携帯をつなげる。
そこからバイオリンのプレイリストを再生させて、音を聴き始める。
「あ~ん!北斗!?ぬわんで?ぬわんでそれするの?」
そう言ってまもちゃんが俺の背中に覆いかぶさって来る。
「聴いて…これ、俺がコンクールで弾く曲なの…バイオリンの為のソナタなんだよ。美しいだろ…?」
そう言って背中のまもちゃんの顔を覗く。
彼は俺の顔を見て、微笑むと言った。
「じゃあ、これを聴きながらこっちに来たら良いよ?」
俺の体を足からすっぽり抱えると、持ち上げてベッドに運ぶ。
凄い執念だ…ちょっと引くよ。
「ねぇ、まもちゃん?俺、怪我してるの、忘れないでね?」
ベッドに降ろされて、俺は慌ててそう言って彼の顔を見る。
「忘れたりしない。俺の為にケガしたんだから…忘れたりしない。」
そう言って目をぎらつかせて、俺の体の上に覆いかぶさると、彼は熱いキスを俺にくれる。
耳の奥に美しいバイオリンが響いて聞こえて、目の前のギラついたまもちゃんを彩っていく…
それがとても官能的で…美しくて…目を奪われる。
俺の服を全て剥ぎ取ると、まもちゃんは自分のTシャツを脱ぐ。
そのまま俺の股間に顔を埋めて、愛おしそうに口に入れていく。
「んっ…まもちゃん…はぁはぁ…」
快感が一気に訪れて、腰が震える。
彼の手が俺の胸に這って来る。
そのまま乳首を撫でられて、体が仰け反っていく…
彼の荒い息遣いが聞こえて、スピーカーから流れるバイオリンの音よりも、大きく俺の耳の奥を揺さぶる。
彼の柔らかい髪の毛を撫でながら、快感に仰け反って、彼の素肌に触れて興奮する。
もう明後日には会えなくなるんだ…
こんな話、信じられないよ…まもちゃん。
こんなに一緒に居たのに…こんなに愛してるのに…離れなきゃいけないんだ…
「まもちゃぁん!嫌だよ…嫌だ…」
そう言って顔を両手で覆って、泣きながら喘ぐ。
体が震えるのは快感のせいなのか、込み上げる感情のせいか分からない…
俺のモノを熱心に口で扱いて、まもちゃんが愛してくれる。
俺の体を撫でて、愛してくれる…
「はぁはぁ…んんっ!まもちゃ…あっ、あっああ…ん、ひっく…ひっく…うっうう…んっ」
体をベッドに仰け反らせて沈めていく。
このまま死んでしまいたいよ…
まもちゃんの髪の毛を撫でて、彼の舌を感じて腰が震える。
俺のモノを舐めて扱く、彼の舌を感じて、頭が真っ白になる…
まるで、離れる悲しさを忘れる様に、俺は彼の与える快感だけを求めた。
「あっああ!まもちゃん…イッちゃう…イッちゃうよぉ…」
俺はそう言って、彼の両腕を掴んで強く握る。
腰がビクビク震えて、俺は彼の口の中で射精した。
気持ち良くて、つま先が伸びて、体が細かく震える。
体を起こして、俺の股の間にうずまる彼の体を起こして、キスをする。
愛してる…大好きだ…お前が欲しい…
気持ちを込めて、激しく熱く、甘いキスをする。
口の端から息が漏れて、彼の声が聞こえて、興奮する。
護は俺の物だから、大事に、丁寧に、扱うんだよ…
こうやって髪を優しく撫でてあげると、喜ぶんだ…
目を見つめてあげると、見つめ返してくれる…
それは俺が彼を愛してるからなんだよ。
大事に出来ない人は手放してあげて。
彼はとっても繊細なんだ…
「北斗…可愛い…愛してるよ…」
そう言って俺の唇に何度もキスして、目を潤ませる。
俺は泣いてるよ…だから、まもちゃんも泣いてよ…
「は、は…離れたくない!」
俺はそう言って彼の体に抱きついて、彼の首筋を舐めて吸う。
俺のだ…俺の護だ…!
「あ~れ~」
まもちゃんはそう言って、そのまま仰向けに倒れていく。
俺は彼の上に跨って、自分のモノを扱いて喘いで見せてあげる…
まもちゃんの大好きな…乱れた俺を沢山見せてあげる。
「あっああ…まもちゃん…はぁはぁ…気持ちい…気持ちいよぉ…」
そう言って、彼を見下ろしながら、いやらしく腰を動かす。
まもちゃんは俺の太ももを撫でながら、だらしない笑顔で俺を見上げてくる。
そのまま四つん這いになって、彼に覆いかぶさる。
腰を落として、彼のズボンのチャックを開けていく。
彼のモノを優しく撫でながら、ズボンを脱がしていく。
そのまま口の中に彼のモノを入れていく。
こんなに大きくして…まもちゃん…可愛いんだから…
俺は愛を込めて彼のモノを口で優しく扱いてあげる。
まもちゃんの息が荒くなって、俺の髪の毛を優しく撫でる手が時々強くなる。
「まもちゃん…気持ちいの…?」
俺は彼の腹をサワサワと撫でながら、甘ったるい声で聞いた。
ふふッと笑い声がして、俺の口元が緩んでニヤける。
気持ちいいんだ…まもちゃん、俺にフェラしてもらって…気持ち良くなってるんだ。
俺は熱心に彼のモノを口で扱いてあげる。
だって愛してるんだ…これも、彼も。
全て愛してるから、全て愛おしくて仕方が無いんだ…
どれも残さず俺の物にしたいよ。
「まもちゃん…俺のベロ…気持ちいい?ねぇ、これは?」
俺は甘ったるい声でいちいち彼に尋ねる。
舌の腹で、彼のモノの先っぽをソフトクリームを舐めるみたいに、ねっとりと舐める。
「ねぇ…まもちゃん、見て…?これは気持ちいいの?」
何度も聞くと、まもちゃんが体を起こして俺を見下ろしてくる。
「んふふ…これは?気持ちいい?ねぇ…何も言わないから、分かんないよ。」
俺はそう言って、彼のモノを口の中に入れて、扱いた。
俺の口の中で彼のモノがドクドク言って大きくなる。
俺は口の中で、彼のモノに舌を添わせて舐める。
ねっとり舐めて、俺を見つめる彼の目を見る。
「これは…どう?」
俺が甘ったるい声で聞くと、まもちゃんの目が揺れてギラギラと蠢く。
「良いよ…凄い上手だよ…」
そう言う彼の声はいつもよりも低くて、唸り声の様に聞こえた。
ふふッと含み笑いして、彼のモノをペロペロなめてあげる。
もちろん目を見つめたまま。
「あぁ…、北斗…だめ。」
何がだめなんだよ…
いつも俺がそう言ってもやめない癖にさ…ふふ。
「まもちゃぁん…大好き。まもちゃんのおちんちん…舐めるの大好き…」
俺はそう言って、彼のモノを口に入れていやらしく扱く。
いつも彼が俺にする様に、それはねっとりと濃厚に、彼の腰が震えるくらいに吸ってあげる。
もうガチガチだ…
挿れたいよ。
でも、我慢して俺は自分のモノを扱きながら彼のモノを咥えた。
まもちゃんはそれを見ると、興奮して俺の体を引き寄せようとする。
俺は体を起こして、それを拒んだ。
「今忙しいの…んっ、だから、後にしてぇ…」
そうトロけた瞳で彼に言って、また彼のモノを扱いて自分で自分のモノを扱く。
まるでこのガチガチのモノに挿れられてるみたいに感じて、腰が疼いて揺れて、快感が満ちる。
彼の息が荒くなって、まもちゃんのモノがドクンと震える。
まもちゃんを見上げると、体を仰け反らせてめっちゃ感じてる…
良かった…
俺は彼をイカせられた。
口の中に沢山吐き出されたそれを全てのみ込む。
俺は彼の全てが欲しいんだ。
そのまま息の荒い彼に跨って、肩に手を置いて、後ろに倒す。
「アハハ…まもちゃん。めっちゃ可愛いじゃん…気持ちいいの?北斗に抜かれて…気持ちいいの…?」
彼の顔に顔を近づけて、そう言って煽って口元を緩めてニヤつく。
まもちゃんは半開きの目で俺を見て、同じようにニヤついて言う。
「すっげぇ…気持ちいい」
その顔がとっても可愛くて、ニヤけて笑うと、まもちゃんが俺をベッドに沈めた。
「北斗…いけない子だ…大人を本気にさせたらダメなんだぁ…」
そう言って俺のモノを握ると、いやらしく指を動かしながら扱き始める。
「んんっ!はぁあっ…らめ、まもちゃん…凄い気持ちい…んんっ!イッちゃう、イッちゃう!」
俺はそう言って彼の手を掴んで止める。
何だ、これ…めっちゃ気持ちいい…
まもちゃんは俺の横に寝転がると、俺の右手を自分の背中に回して左手を頭の上に上げて片手で抑えた。
そして、両手を封じると、俺の痣の付いた胸にキスをしてくる。
彼の舌に体が跳ねて喜ぶ。
自由に出来ない両手がもどかしくて、仰け反る様に剥き出しになった胸に彼の舌が這う。
堪らなく興奮して、まもちゃんの胸に顔を埋めて小さく喘ぐ。
「まもちゃ…まもちゃん…はぁはぁ…あっ、んん…」
彼の右手が俺のモノを優しく撫でて、またさっきの動きをする。
「ん~~!だめ、ダメぇ…まもちゃん!イッちゃう…あっあっあっあああ!!」
あっという間にイッた俺を愛おしそうに覗き込んで、熱いキスをして、また胸に舌を這わせる。それがとても気持ち良くて頭が真っ白になっていく。
「あっ…あっ…はぁはぁ…あぁ…んん…」
俺にだけ浴びせられる快感のシャワーだ…
止まないし、俺以外濡れない、俺だけが気持ち良くて頭が真っ白になっていく。
宙に向かって腰が揺れる。
「あぁ…んんっ…はぁはぁ…まもちゃ…ん…気持ちい…気持ちいいの…」
そう言って彼の顔に顔を摺り寄せて、もっと狂わせてほしくなる。
何もかも忘れて、彼の愛撫だけで、絶頂に向かう。
トロけて液体になって、消えてしまいたい…
顎が上がって、口の端からよだれが垂れる。
最高に…気持ちいい…!
「イッちゃう!イッちゃうう!!」
俺は彼に乳首を舐められまくって、イッてしまった…。
「ダメだ…カラカラになっちゃう…」
俺は急に冷静になって、状況を分析した。
右手を彼の背中から外して、左手を掴むまもちゃんの手を外す。
そして、彼の体に圧し掛かって顔を覗いて言う。
「まもちゃん…やだ、手掴むのやだ…」
「なぁんで…凄くエッチだったよ…可愛いのに…」
まもちゃんはそう言って残念がると、俺の口にキスをする。
それがまた熱くて頭の奥がジンと痺れてくる。
キスをしながら、彼の胸板を撫でて、乳首を触ってあげる。
キスを外して、俺もまもちゃんの様に、しつこく舐めてあげる。
「ねぇ…まもちゃん、乳首ってどうして立つの…」
俺がそう聞くと、彼はふふッと笑った。
笑っただけじゃ、理由なんて分からないじゃないか…
まもちゃんは俺のお尻を撫でて、モミモミする。
「ふふ…」
俺はまもちゃんの乳首を舐めながら、彼の顔を見る。
俺の目を見て、目の奥をギラギラさせて、堪らないよ…
俺のお尻に手を回して、まもちゃんが俺の中に指を入れてくる。
快感を想像しただけで、イキそうだ…
俺はまもちゃんの胸に頭を落として、彼の指が与える快感に喜んで喘ぎ声を出す。
「んん…まもちゃぁん…はぁはぁ…あっあぁん…」
お尻を突き出して、彼の指を深くまで入れてもらう。
彼のお腹に抱えられて、俺は突っ伏して喘ぐ。
俺の体を膝の上に乗せて、まもちゃんは俺の中を弄り倒す。
「あぁ…北斗、かわい…挿れたいよ…はやく、ここに挿れたい…」
息を荒くして、俺のお尻の中の指を増やしていく。
軽く浮かした腰が震えて、足がガクガクする。
「まもちゃん…まもちゃん、きもちい…きもちいの…」
逃げる様に彼の膝を通り過ぎて、布団に顔を埋めて喘ぐ。
俺のお尻をガッチリつかんで、まもちゃんは愛しそうにお尻のほっぺを舐める。
「ひゃあっ!ああっ!」
驚いて、変な声を出すと、まもちゃんが笑う。
…だってびっくりしたんだ…仕方が無いだろ?
「まもちゃん…もう挿れてよぉ…」
「北斗?体は痛くないの?」
忘れていたよ。全然気にならない…
「痛くない…」
俺がそうポツリと言うと、まもちゃんはクスクス笑った。
俺をそのままベッドに居うつ伏せにして、まもちゃんは体に覆いかぶさって来る。
もう挿れてよ…挿れてめちゃくちゃにしてよ…
少しでも冷静になると、すぐに思い出すんだ…
もうすぐ会えなくなることを…思い出すんだ。
俺の腰を掴んで上に上げると、まもちゃんは俺の中に自分のモノを押し入れてくる。
それが溜まらなく愛おしくて、このまま死んでしまいたくなる。
「まもちゃん…まもちゃん…」
違和感と快感の混じった感覚に腰が震える。
彼の息遣いと、低くて良く響く声に、鼓膜の奥が震える。
俺の背中に体を添わして、重く圧し掛かって、俺の中に入って来る。
「んんっ…!はぁはぁ…あっ、あっああ…」
彼がもっと欲しくて、お尻を突き上げて彼のモノを迎える。
堪んないよ…まもちゃん…
「あぁ…北斗…北斗…」
彼の大きな手に腰を掴まれて、彼の匂いのするベッドに顔を突っ伏して、揺すられる。
気持ちいい…すんごく気持ちい…
でも、もっと真っ白になるまで…もっと本能だけになるまで。
頭の中から嫌な事をすべて忘れてしまえるくらいに、没頭して、彼を求めたい…!
「まもちゃん…!気持ちい…、きもちいよ…」
彼の手を握って、彼のモノを奥まで感じて、快感に震える足を踏ん張って耐える。
もう死んじゃいたいよ…
このまま死んじゃいたい…
「うっうう…うっ、うっ…うう…うわぁん…うわぁあん…まもちゃん…まもちゃん…」
もう会えなくなるんじゃないかって…まだ、怖いよ。
「北斗…」
俺が泣きだして、まもちゃんが俺の体からモノを出そうと体を引く。
「だめぇ…止めないで…止めないでよ…まもちゃん、このままして…このまま…」
そう言って俺は突っ伏して泣き続ける。
まもちゃんは俺の体からモノを出すと、俺を仰向けにする。
俺は泣き顔を見られたくなくて、両手で覆って隠す。
それでも胸が小刻みに震えて、しゃくり上げる喉の音が漏れて聞こえる。
まもちゃんは俺の足の間に体を入れると、そのまままた俺の中に入って来る。
そして、俺の頭を抱きかかえながら、ゆっくりと腰を動かして、俺の中を埋めていく。
「北斗…まもちゃんの顔見て…」
嫌だ…俺はひどい顔をしてるし…まもちゃんの顔を見たら、もっと泣くだろうし…見たくないんだ。見たいけど、見れないんだ。
俺は両手で隠した顔を横に振って拒否する。
彼がふふッと笑って、そのまま俺の首筋を舐めて変わらない動きで、中を気持ちよくしてくる。
そのまま…泣き声が喘ぎ声に代わるまで、ゆっくりねっとりと俺の中を刺激する。
髪を撫でる彼の手のひらが気持ち良くて…
俺の中の彼のモノが気持ち良くて…
彼の息遣いが気持ち良くて…
俺はどんどん頭が真っ白になって、顔を覆っていた両手を外して、彼の肩に掴まる様に置いた。
俺の顔を見ながらまもちゃんが気持ち良さそうに顔を歪める。
「北斗…北斗、まもちゃんの顔見て…」
トロけて虚ろな瞳で、眼球だけ動かして彼を見る。
その目がとっても綺麗で…かっこよくて…愛を伝えてきて…極まる。
「まもちゃぁん…」
俺がそう言って彼を呼ぶと、何度も食むようにキスをする。
「なぁに…」
そう言って、何度も何度もキスをする。
「いっしょに居たいよぉ…」
俺はそう言って、猫みたいに彼の顔に顔を摺り寄せる。
「一緒に居たいね…」
まもちゃんはそう言って、俺の唇を食むと舌を中に入れて、熱いキスをくれる。
まもちゃん…まもちゃん…まもちゃん…
彼の熱が体中に伝わって興奮する。
彼のモノがグングン大きくなって、俺の中を気持ち良くする。
彼の目を見て、彼の髪を撫でて、彼の愛しい目で見つめられて、どんどん頭が痺れて麻痺していく…
「んん…イッちゃう…まもちゃ…」
すごく気持ちいいよ…
「俺もイキそう…」
そう囁くと、まもちゃんは俺の体を抱きしめながら腰を動かす。
だめだ…すごい体が密着して…絶えない快感に頭が吹っ飛ぶ。
「あっああ!!まもちゃん!!」
そう言って彼の体にしがみ付いて、腰を激しく震わせて、俺はイッてしまった…
まもちゃんは俺の中でドクンと揺れると、熱いものを吐き出して、そのままトロけて俺の上に落ちてくる。
「北斗…北斗…行かないで…」
そう言って、俺の中でまた腰を動かす…
まもちゃん…
まもちゃん…!
グジュグジュ…といやらしい音を立てながら、体を密着させて彼に愛される。
俺の首筋に舌を這わせて、まるで犬みたいに俺を舐める。
それが気持ち良くて、体を仰け反らせて彼の愛に応える。
言葉なんて要らなくて…ただ、彼に愛されて応える。
哀しそうな顔で俺を覗き込んで、ひたすら愛する様に腰を動かして、俺の喘ぐ顔を見て、顔を歪める。
何でこんなに…辛いのに…気持ちいいんだ…
おかしくなっちゃうよ。
まもちゃん…
俺はあなたに狂ってるんだ…
押し寄せてくる快感に、顎が上がる。
俺の首を噛むようにして、呻き声を上げると、まもちゃんが俺の中でドクドクと熱いものを吐き出す。
やめないで…
もっとして!
彼は俺の顔を撫でながら俺にキスをくれる。
舌が絡んで、彼の息が口の中に入って来る。
それが堪らなく嬉しくて、もっと欲しくて、顔を寄せて貪りつく。
彼の全てが欲しい。
またまもちゃんの腰が動き始める。
俺の中から溢れた彼の精液が、ダラダラとお尻の下に流れていくのが分かる。
俺の体を抱きしめて、俺の顔を見て、哀しそうな顔をして、また彼が俺の中を刺激して気持ち良くしていく。
彼の髪の毛を撫でながら、彼の哀しそうな目を見つめて喘ぐ。
彼の愛に応える様に喘いで、彼の体を自分に引き寄せて、彼のキスに貪りついていく。
「はぁはぁっ…まもちゃ…まもる…大好き…大好き…」
彼のくれる止まない快感に身もだえして、体全部で彼に言う。
俺をもっと愛して…
もっと、もっと、もっと愛してくれ…!
堪らない。
まもちゃんに愛されるのが…堪らなく、大好きなんだよ…
「北斗ちゃん、綺麗にしてあげるよ?」
そう言ってまもちゃんが俺の手を引く。
もう彼のモノによって掻き出され済みなのか…今日は立ち上がってもドロッと垂れてくる感覚がしなかった…
フラフラした足で彼と一緒にお風呂場に入る。
シャワーで綺麗に流して、お尻を洗ってもらう。
「まもちゃん…もし、両親と取引に失敗して…俺がまもちゃんに会いに来れなくなったら…俺の事、忘れていく?」
壁に顔を付けて、ぼんやりしたまま彼に聞いた。
「どうしてそう思うの?不安なの?」
まもちゃんの優しい声が耳の奥を響かせる。
「不安…不安だ。まもちゃんが俺を忘れることが不安だ…」
こんなに密に過ごしたから…
離れてしまったら、どうなるか分からないよ。
ましてや、俺が両親との取引に成功する保証もない…
不安で…怖いんだ。
「この先、北斗に会えない時期が続いても、俺はお前の旦那さんだよ…理久先生を見て見ろ…。彼が良い模範だ。」
「どういうこと?」
俺は体を返して、まもちゃんに向き合って尋ねる。
彼は俺の顔を見てにっこり笑うと続けて言った。
「理久先生はお前と離れても、ず~~~~っと気持ち悪い位に、お前を思い続けただろ。俺はもっと、北斗の事を愛してる。だから、彼を基準に考えて…俺は死ぬまでお前を忘れたりしないし、お前の事を愛してるって事だよ。」
そう言って俺の頬を撫でると、ねっとりとしたキスをくれる。
俺は彼の首に両手でしがみ付いて、そのキスをもっと欲しがる。
俺は…どん欲だな。
汚れたシーツと俺の洗濯物を洗濯機に入れて回す。
「明日の演奏…楽しみだな…」
そう言いながら回る洗濯物を洗濯機の前、座り込みながら眺める。
ドラム式の洗濯機…グルグル回る洗濯物に合わせて揺れる振動…
俺は耳を付けて揺れを楽しんでいる。
「なぁにしてるの…こっちにおいで?」
まもちゃんに手を引かれて、マットレスがむき出しのベッドに座る。
そのまま仰向けに倒れて天井を見上げる。
「まもちゃん…今、何時?」
俺がそう聞くと、まもちゃんはコーヒーを入れながら答える。
「今、オヤジ…」
おもんな…
「ふふ…今…3時だよ?」
そう言い直して、1人でクスクス笑う彼の声を耳に留める。
馬鹿だなぁ…相変わらず、頭の中がガキなんだ。
「まもちゃん…おばあちゃんの家に送って…俺、きちんと挨拶して帰りたい。」
俺は体を横にして、彼のベッドのマットレスを手のひらで撫でて言った。
俺の耳元に顔を寄せてキスすると、彼は低い素敵な声で応えて言う。
「良いよ。」
耳の奥が痺れる…
素敵な声だ。
声につられた様に、テーブルでコーヒーをすする彼の背中に、顔を付けて抱きつく。
「どしたの…」
コーヒーをすすりながら、俺のしがみ付いた背中を振動させて、まもちゃんが言う。
俺はただ黙って彼の背中に頬を付けて、ぼんやりとスピーカの横を眺める。
俺がベタベタ触って…手の痕が付いてる…スピーカーの横。
頬にあたる彼の体温を感じて、ただじっと黙って彼の鼓動を聴く。
ピーピーと洗濯物が終わったお知らせが鳴る。
まもちゃんは何も言わないで、俺に背中を貸したままコーヒーをすする。
前に回した俺の手のひらを握りながら、何も話さないでぼんやりと2人で過ごす。
「あんまり遅くに伺うと失礼だから…」
まもちゃんがそう言って、俺の手をポンと叩く。
そうか…そうだね。
俺は彼の背中から顔を上げて、彼を解放した。
洗濯物を干しに行くまもちゃんの後ろを追いかける。
「北斗も手伝って?」
俺はシーツの端を持って、物干しざおの片側に掛ける。
まもちゃんが向こうの端を持って、シーツを掛ける。
「絶対、乾かない。」
俺はそう言って、まもちゃんの足を蹴飛ばす。
「乾くって。」
そう言ってまもちゃんが俺の足を叩く。
俺の洗濯物を干す。
「この水色のパンツは北斗のなの?他のと違うよ?勝負パンツなの?」
まもちゃんがそう言って星ちゃんのパンツを広げる。
「それは、星ちゃんのパンツだもん。借りてそのままなんだ~。」
俺はそう言て、ダサいTシャツを干す。
また、風で飛ばされない様に、洗濯ばさみでしっかり留める。
「パンツ泥棒だな。」
まもちゃんはそう言って他のパンツを干す。
くすんだピンクのシャツをパンパンと叩いて干す。
繕ってもらった所の糸が濡れたシャツに目立つ。
「凄いね…こんな風に塞いでるんだ…見て~?」
そう言って彼にシャツの袖を広げて見せる。
「ほいほい、早く行きますよ。」
まもちゃんはそう言ってお尻を叩いて俺を急かす。
日が沈みかけた午後…
絶対乾かないよ。
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