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Lesson1_03

シャルルドゴール空港に到着して、タクシー乗り場まで移動する。 「理久。スリに会うかな?」 「さぁね…どうかな。あまり会いたくはないよ。」 俺はそう言って、彼のスーツケースを自分の物と一緒に運ぶ。 「この空港はどうしてこんなにお洒落にしてるの?」 「さぁね…美意識が高いんじゃないのか…だから何にも美しさを求めるんだ。」 俺がそう言って歩くと、北斗は上を見上げて言う。 「丸は美しさなの?四角では美しくないの?」 「さぁ、それは人それぞれだ。何を美しいと思うかなんてのは、主観で大きく左右される。お前が美しいと思う物を、俺が同じように思うとは限らないんだよ。」 俺はそう言って、北斗を振り返る。 彼は俺を見上げて言った。 「理久の美しいと思う物は?」 それは…お前だよ。 「さぁね…」 タクシーのトランクにスーツケースを入れて、北斗を乗せる。 そして彼の為に窓を開けて、運転手にホテルを伝える。 「演奏は明日だけど、練習したいかい?」 「うん。」 そうか…ではホテルに着いたら出かけるか… 俺は携帯電話を取り出して、現地の友人に電話を掛ける。 俺の様子を興味深そうに眺める北斗。 俺は彼を見つめながら、電話口の友人と話す。 どうやらスタジオが開いている様だ。 そこを借りて練習に使おう。 「北斗、ホテルに付いたらバイオリンを持ってスタジオへ行こう。そこで練習をして、夜ご飯を取って、ホテルへ戻ろう?」 俺がそう言うと、北斗が俺に向かって聞いて来た。 「今のはフランス語?」 「…そうだよ。」 「俺はシャンゼリゼなら歌える。」 そう言って北斗がフランス語で歌い始める。シャンゼリゼ。 「ブラボー!」 運転手がご機嫌になって、テンポを取りながら彼を誉める。 「んふふ!」 そんな笑い声を間に挟んで、彼は歌い続ける。 晴れても、雨でも、昼でも、夜でも、楽しい事が待ってる… ふふ…ほんとかな。 俺の目を見つめて北斗がそう言うんだ…きっとそうなんだろう。 可愛い北斗、モンシェリ… ホテルに到着すると、チェックインを済ませて部屋に案内される。 「理久?今日は一緒に寝られるね?」 あぁ…試練がまた訪れるんだ。 俺の手を繋ぎながら、北斗はご機嫌だ。 解放された子犬の様にはしゃいで回る。 幾ら走っても遅いから、慌てる必要がない。 「ほら、走らないで…」 ポーターにチップを渡して、部屋に入る。 良かった。ベッドは二つある。 「わ~~~!」 大きな声を出して、北斗が走り回る。 窓際のベッドの上に飛び乗ってゴロンと寝る。 「理久!来て!」 ダメだろ…それは色んな意味でダメだ。 「北斗、靴を脱いで。」 俺は視線をあてずに彼にそう言うと、スーツケースを部屋の奥に運ぶ。 「理久~!早く来て!!」 ベッドの上で俺を呼びつける北斗の声を聴きながら、スーツケースを運ぶ。 俺はスーツケースを運ぶ人になったんだ…放っておいてくれ。 しびれを切らした北斗が、スーツケースをひたすら運ぶ俺に近づいて来る。 「理久!」 そう言って俺の腕を掴んで引っ張っていく。 ダメだ…北斗、大人をからかっちゃいけない。 そのままベッドまで俺を引っ張って連れて行くと、俺の体に抱きついて体をベッドに落としていく… 何がしたいんだ…北斗! 彼に引っ張られて、一緒に体が落ちていく。 ドサッ! 一緒にベッドに倒れ込んで、俺を見上げる彼を見下ろす。 危険だ…危険信号が点滅してる… 各馬ゲートインして、後はスタートを待つばかりだ…! 「んふふ!」 嬉しそうにそう言って笑って、俺の体に両足を絡めると自分に引き寄せる。 …そんな技を…一体どこで、手に入れたんだ!! 「蟹ばさみ~~!」 そう言ってケラケラ笑って…満足げに俺の太ももをきつく締めあげる。 なんでそんな古いネタを…一体お前は何歳なんだ! 北斗に蟹ばさみされつつ、俺はそれ以上彼には落ちていかない様に、両手で踏ん張って耐える。 だって、このまま彼に触れてしまったら、止まらなくなりそうで、怖いんだ… じゃれつくこの子に邪な気持ちを察せられたくない… オオカミだとバレたくないんだ。 「出かける準備がしたい…。バイオリンを出して。」 俺はそう言って、北斗の蟹ばさみを解こうと両手で、あの子の足を触る。 「んふふ!やだよ!俺の蟹ばさみは強いんだ!星ちゃんでも抜け出せないんだぞ!」 彼の言った通り、なかなか外れない蟹ばさみに苦戦し始める。 「くっ!何でこんなに…!しがみ付いてるんだ!」 ベッドの上で、膝立ちして北斗の足を解こうと奮闘する。 ほぼ逆立ち状態に俺にぶら下がって、北斗が大笑いする。 「アハハハ!ば~か!絶対、外れないんだ!」 そう言ってキャッキャと笑う北斗… 可愛いんだ… 夕陽が照らすホテルの部屋で、あの子の笑顔が、赤く染まって… 堪らない! 「北斗~~!!」 俺はもうダメだったんだ… これでも頑張ったんだ… 力の限り頑張って、変態を抑えていたんだ。 それを発動させたのは…彼だ。 北斗に覆いかぶさって、彼の細い体に自分を乗せる。 「ん~~!重い!」 知ってるよ…これが俺の、大人の体重だ。 簡単にねじ伏せられるだろ…? 俺の体の下で、もがく様に体を捩らせる北斗の細い両手を、両手で掴んで抑え込む。 「可愛いね…北斗、食べちゃうよ?」 彼の顔をキス出来そうな位、間近に見てうっとりとそう言うと、俺の顔を見つめ返して言うんだ。 「んふふ、どうやって食べるの?煮るの?焼くの?」 生だ! 自分の体を起こして、蟹ばさみされた体を彼の股間にあてる。 堪らないよ… 俺の様子を伺う、寝ころんだままの北斗のシャツに、そっと手を掛ける。 彼のシャツを掴んでズボンから引っ張り上げて、彼のお腹を出す。 両方の手のひらで舐める様に撫でて、腰に手を滑らす。 逃げられない様に彼の細くてしなやかな腰の下に手を入れて、掴む。 「理久…?」 うっとりした表情で口元が緩んだ俺の顔を見て、北斗が少しだけ強張る。 大丈夫…俺は羊ちゃんだ…お前を生で食べたりしないよ… そっと彼の方へ体を下げていく。 彼の目が怯えて見える。 その目が…また、堪らないね…? 一気に顔を落として彼の腹に口を付けて、思いきり息を吹きかける。 ぶ~~~!! 「だ~はははは!!だははは!!理久!理~久~!まいった!まいった~~!!」 北斗がそう言って降参するまで、俺は彼の腹のふにふにを唇に当てて思う存分味わった。 なんて柔らかいんだ…はぁはぁ…信じられない!! 勃起した…勃起した!! もう…やんなっちゃうよ。 「あはあは…やばい…理久、面白い…!」 北斗がベッドに突っ伏してそう言って笑う中、俺は慌ててトイレに駆け込む。 身を削った…身を削った~!! 哀しい男の定め…俺は自分のモノが落ち着くまでトイレにこもる… 「理久~ウンチ出た~?」 違うのに…クスン 「理久~?ウンチ沢山出るんだね~?」 やめろ…今すぐにやめろ…! デリカシーの無い彼のおかげで、俺のモノは意外とすぐに元に戻った。 「理久~?正露丸持ってこれば良かったね?」 俺の手を繋いで北斗がそう言ってお腹をさする… やめてくれ…全く 片手にバイオリンを持って、片手に楽譜を持って、ホテルの廊下を歩く。 目の前から、同じような持ち物を持って歩く二人組に遭遇する。 「おや?」 俺達を見るとそう言って微笑みかける眼鏡の男性。 彼は、有名なバイオリニスト。輪廻典正(りんねてんせい)。 きっと芸名だ。 じゃなきゃ可哀想すぎる…。 テレビに出たり、講演会に出たり、今では演奏よりもそっちの方が主流になって来てる、そんなバイオリニストだ。 俺は立ち止まると微笑んで会釈する。 彼の隣には北斗よりも少し大きい男の子。 小学校5年生くらいだろうか… 俺を見上げてペコリと会釈をくれる。 「君。凄かったね…?先生、ビックリしちゃった。」 そう言って輪廻典正は俺に目もくれずに、俺の北斗の頭に触る。 やめて!触んないで!? 俺が心の中でそう叫ぶよりも先に、北斗が彼の手を払いのける。 「知らないおっさんが俺を触った。」 北斗がそう言って怒って俺を見上げる。 俺は口元が緩んで、笑うのを堪えながら、輪廻先生に詫びる。 「すみません…失礼を…」 「…良いんですよ。それよりも、一体どんな指導をすれば彼の様な子供になるんですか?まるで神童…。超越したバイオリンの技巧…。それはまるで天からの授かりものだ…」 芸名のせいか…話す内容が神秘的だな…プププ 「いや、指導なんて…これは彼の努力のたまものです…」 俺はそう言って、あいつが撫でる事が出来なかった北斗の頭を、これ見よがしにナデナデ撫でまわす。 俺の手を気持ちよさそうに首を伸ばして受ける、可愛い北斗… そうだ。お前は俺の…モンシェリだ。 「ふふ…可愛い子。明日どんな曲を弾いてくれるのか、先生は楽しみだよ?」 北斗を見下ろしてニヤニヤ笑う輪廻先生は、口調は穏やかだが、俺には目もくれない… 俺じゃなくて…この子自身に興味があるんだ。 知ってるよ…。俺にはこんな子供に育てるような指導力はないさ… 俺を押し退けて、あわよくば、この子の指導者になって偉そうにふんぞり返りたいんだろう。 自分の見栄の為にさ… 彼の傍らの少年は、さっきからニコリともしないで北斗を見下ろしてる。 その目の奥は冷たい。 そらそうか。 羨ましいんだろ?この子のセンスが… 絶対に誰も真似できない、この子の卓越された技巧と音楽的センスが… 俺だって君と同じ立場なら、北斗を憎たらしく思うんだろうか…。 「理久!行こう?」 北斗はそう言って俺の手を引っ張る。 彼らに会釈して、北斗に連れて行かれる。 「きちんとご挨拶出来る様にならないといけないよ?」 「いやだ。あいつは嫌いだ。意地悪な目をしていた。」 北斗がそう言って俺を見る。 驚いた…お前には分ったの? 彼が俺を馬鹿にしている目をしていたのが…分かったの? フランスの楽団に居た位の演奏家の端くれの俺を、小ばかにした態度で見ていたのが、伝わったんだね…。 「そんな風に言うもんじゃないよ?」 俺の為に…俺が馬鹿にされたから…あいつの手を払ったの? 口では注意しながら、笑顔になって彼を見下ろす。 北斗は口を尖らせたまま俺から目を逸らす… 何て男気のある子なんだ… いい男だね。優しい男だ。 「ふふ…」 口元が緩んで北斗の頭を撫でる。 なんて優しい子なんだ。 ホテルを出て、一緒に歩いて友人のスタジオまで向かう。 「理久?スリに会うかな?」 やめてくれ…フラグを立てるな。 「やだね。会いたくないね。」 俺はそう言って、北斗の手を繋いで一緒に歩く。 冬のパリはなかなか寒い。 体感温度は東京よりも寒い気がする… 足を止めると向かい合う様にして、彼のニット帽とマフラーを鞄から取り出す。 それを被せて、巻いてあげる。 「あったかい!」 そう言って俺の頬を両手で撫でる。 可愛いんだから… 「さぁ、行こう。」 そう言って小脇に楽譜を抱えて、彼のバイオリンケースを持つ。 反対の手で彼の手を繋いで、離れて行かない様にする。 「理久、遠い?電車する~?」 「いや、歩いて行ける距離だよ?」 俺がそう言うと、んふんふ笑って満足げだ。 乗り物酔いしやすくて、電車嫌いの彼の為に、近くのスタジオを予約したんだ。 俺の義務だ。 スタジオに着いて、友人に軽く挨拶をして、北斗を紹介する。 「サリュ~。チボー!元気だった?この子が北斗だよ。」 「ボンジュール北斗。僕はチボーだよ。よろしくね。」 フランス語で会話をする俺達を見て、北斗が言った。 「ボンジュ~ル、ちーぼー!俺は北斗だよ?よろしくね~?」 可愛いんだ… そう言って体を横に屈めて愛想を振りまく。 さっきとは大違いだな。 「モンビケ!なんて可愛い子なんだ!」 チボーはそう言うと、北斗の頭をナデナデした。 彼は嫌がらずにそれを受けている。 ふふ… 口元が緩んで笑顔になって北斗を見つめる。 「彼のバイオリンはとても美しんだ。お前も聴いたらきっと驚くよ?」 俺はそう言って、北斗の手を握ったまま、チボーを連れてスタジオに入る。 窓の大きな白い壁の美しいスタジオ。 このままバレリーナが現れて踊っていてもおかしくない空間だ。 俺はバイオリンケースを小さなテーブルに置いて、開く。 北斗がスタジオの中を見て回ってる。 「理久~。凄いよ。外が見える。街並みが綺麗だ…絵の中見たいだね?」 そう言って俺を振り返る。 俺がバイオリンケースを開いたのを確認すると、子犬の様にコロコロ走って寄って来る。 「理久~、ピアノがあるよ?」 北斗がそう言って俺に伴奏をおねだりする。 「では弾こうか…」 俺は彼に微笑んでピアノへ向かう。 「最初にコンクールの曲を一度弾いてみようね…」 そう言ってピアノの蓋を開く。 バイオリンを首に挟んで頷くと、北斗は弓を美しく構えて、チボーを見る。 チボーに弾いてあげるの? それはきっと大喜びするだろうね…彼はバイオリンの音色が大好きなんだ。 お前のような美しい子供が弾いたら、きっと驚愕して、腰を抜かす事だろう。 俺のピアノの伴奏に合わせて弾き始める彼のアダージェット… それは子供に表現出来そうにない哀愁を漂わせて、美しい旋律を奏でる。 チボーが北斗を見下ろして目を点にして固まってる… そうなんだ…凄いだろ? その子は…音楽の子供なんだ。 まるで熟練のバイオリニストの様に、様々な表情を付けて表現されるアダージェット…それは美しくて、儚い。 この表現が、たとえ理解していない感情だとしても、彼はそれを疑似的にも感じて、こんなに上手に表現することが出来るんだ… 大人になって、どんな演奏をするのか… 様々な感情を感じて、成熟した後に、彼がどんな演奏をするのか… 楽しみで仕方が無いんだよ。 きっともっと美しいアダージェットが弾けるようになって…人々を魅了するに違いないんだ…。 この子の表現力が、技巧を上まって…まるで感情を乗せて演奏出来る様になったら…それはもう誰にも太刀打ちできないくらいに、飛びぬけて…孤高の存在になるんだろう… その時が…とても楽しみなんだ。 アダージェットを弾き終えて、北斗が弓を下ろす。 「トレビアン!北斗!なんて美しいアダージェットを弾くんだ!この子は一体何歳なんだ!」 「8歳だ。」 俺はそう言ってチボーに言う。 「次に弾く曲はもっと凄いぞ?ふふん!」 俺は得意げになって、北斗を見る。 北斗は嬉しそうに俺を見ると、バイオリンを首に挟む。 俺は急いで前のめりになった体を戻すと、彼の弾き始めに合わせて伴奏をする。 ラ・カンパネラ… 「ブラボー!」 まだ曲を弾き始めたばかりなのに、チボーはそう言って北斗の前に跪く。 分かるよ…本当にその気持ち、よく分かるよ。 北斗は褒められると伸びるんだ。 とても嬉しそうな顔をしながら、ピチカートする。 その指先が美しく踊っている。 ふふ…超、ご機嫌だ。 弓を引く右手もまるでワルツでも踊っている様に、のびのびと優雅に動く。 最高だよ…北斗。 お前は最高だ。 こんな小さい子供が、こんなにも自由に軽快に、豪快なラ・カンパネラを搔き鳴らして弾きあげるんだ… 痺れるだろ? 曲を弾き終えて、北斗が弓を下ろす。 跪いたままのチボーの顔を覗く様に体を屈めて、俺を見る。 「理久?ちーぼーが止まってる…」 「ふはは、そらそうだ。初めてお前の演奏を聴いた時の俺と同じだよ。」 俺はそう言ってピアノから立つと、放心してるチボーの顔を北斗と一緒に覗き込む。 「チボー。凄いだろ?俺の愛しの北斗は…?」 俺がそう聞くと、眼球だけ動かして、俺を見てコクコクと小さく動かす。 「北斗、チボーにピアノも聴かせてあげたらどうだい?」 俺はそう言って北斗を焚きつける。 彼は嬉しそうにチボーの頭を撫でるとピアノに向かって走って行く。 そして、嬉しそうな顔をしながら、ラ・カンパネラを今度はピアノで弾く。 「何てことだ…!理久…この子は天才だ…!」 そう言ってチボーが突っ伏して放心するから教えてあげた。 「この子はあらゆることを犠牲にしてこの技巧を手に入れてるんだ。彼の前では天才だの、才能だの言ってはいけないよ。彼の努力を誉めてあげてくれ…」 俺の言葉にチボーは顔を上げると、じっと俺の顔を見つめる。 分かるだろ? 音楽で生きていくために、幼い頃からスパルタ英才教育を受けた事のある演奏家は沢山居る。そんな彼らが、人一倍努力を続けている事も、人一倍苦しんでる事も、お前なら分かるだろ? 「そうなのか…それは失礼した。」 チボーはそう言うと、北斗を見上げて感嘆の表情をして、両手で沢山の拍手を送ってくれた。 一芸に秀でるという事の、良い面も悪い面も知ってる。 その為に犠牲にしなくてはいけない事がある事も、知っている。 何故なら、自分たちもそうやって演奏家になっているからだ。 だから、痛い程に分かるんだ…幼い子供たちが自分たちの置かれた立場に、葛藤する事が…自分の事の様に分かるんだ。 彼はそれに輪をかけて両親の関心が向かないという特異な環境にある。 その関心を引きたいがために…必死に練習している事もよく、分かるよ。 でも、いつか自由になる時が来る。 その時に全てが万全に整う様に。 俺が力を貸してあげたい… そう…俺が。 彼を自由にしてやりたい。 いつの間にかチボーを隣に座らせて、連弾を始める北斗。 「理久~?ちーぼーはジャズっぽい弾き方をするね?俺は嫌いじゃないよ?」 そう言ってケラケラ笑いながら、ピアニストと一緒に奏でるショパン。 チボーの癖のある弾き方を真似て、曲調を雰囲気に合わせながら連弾する様は、十分に立派な演奏家だ。 「トレビアン!」 チボーがそう言って北斗の頭にキスする。 そうなんだ…その子はトレビアンなんだよ。 「理久!夜ご飯は?」 スタジオを出て、暗くなった道をチボーと一緒に三人で食事へ向かう。 彼が満足しそうなお店…それはシャンゼリゼ通りの近くにある、セルフサービスの店。 メインディッシュ、サラダ、飲み物、デザートを自分の取りたいだけ取れるんだ。 「大丈夫、ちゃんと考えてる。」 俺がそう言うと、満足げに俺の手を繋いで微笑んで歩く。 食いしん坊の北斗。 「理久、北斗は何が好きなんだい?」 「彼は何でも好きだよ。食べられればなんでも良いんだ。」 北斗の趣向が気になるの? 食事に誘わないでね。 彼は俺のモンシェリだ。 目的のお店について、席に座る。 「北斗、自由に取ってきて良いんだよ?」 店内をキョロキョロする北斗にそう伝えると、彼はにやりと笑った。 そうか…そんなに嬉しかったか。 「やった~!ちーぼー行こう?」 俺じゃなく、チボーの手を握ってセルフサービスの料理を取りに行く。 「待って…」 慌てて俺は一緒に付いて行く。 何で俺の手を握らないの?北斗…寂しいじゃないか… チボーと彼の後姿を見つめる。 俺達もこんな風に見えてるのかな…それは、素敵じゃないか。 日本語で話す北斗の話を一生懸命理解しようと、大きな背を屈めて、彼の表情を見つめるチボー。 余りの真剣な表情にウケる。 「違う~!エビがもっと沢山欲しいんだ~!」 北斗がそう言ってチボーにダメ出しをする。 「何でそんなに沢山盛るの?少しずつで良いじゃないか…」 ほとほと困ったチボーが俺を見て助け舟を求める。 「良いんだ。この子の好きにさせてあげて…」 俺は彼らの後ろに立ってそうチボーに伝える。 「OK…」 美的センスが許さないんだよね…その白い皿に山盛りのエビの姿をさ…ふふ。 「チーボー、サラダは少しで良い。そんなに要らないの~。」 北斗はそう言って、自分の飲み物のコップを大事そうに持って彼に指示する。 どうやら、チボーは彼に優しい大人として認識された様だ。 だから、こうやって甘えて、言う事を聞かせて…全く。 俺という男がありながら…北斗。悲しいよ… それでも、彼らの後姿にいつもの自分たちを重ねて、嬉しく思うんだ。 悪くないじゃないか… 絵になる。 「理久…北斗はお腹を壊さないのか…?」 俺にひそひそ声で、チボーが聞く。 「北斗、もう少しきれいに食べなさい…」 俺は彼の食べ方を注意する。 「だって、早く食べないと、あそこのエビが他の人に取られちゃうよ~?」 そう言って、北斗はエビを次から次へと口の中に放り込む。 「…」 閉口…とはこの事だ。 汚れた指を俺に向けて、モグモグする。 俺はその指を綺麗に拭いてあげる… ごっくんと飲み込むと、またエビを次から次へと口の中に放り込むんだ。 「…北斗…そんなにエビばかり食べないで、他の物も食べた方が良い…」 チボーがそう言って、北斗にサラダを勧める。 彼はそれを無視して、ひたすらエビを放り込む。 来る店を間違えたか… 周りのお客まで、北斗のエビフィーバーを見て引いている。 それもその筈だ…彼の食べ方は汚い。 可愛い顔をして、口の周りを汚して、がむしゃらに食べるんだ… 見慣れてしまうと気にならなくなってくるが、これでは…まるで野生児だ。 「北斗…フォークを使いなさい…。」 「やだ~、だってしっぽを取る時、結局触るじゃないか。だから俺はそのまま口に入れてるだけだもん~。星ちゃんが言ってた、これが一番、効率的な方法だ。」 そう言って全く話を聞かないんだもんね… 「北斗、お口を拭かせて…」 そう言ってチボーが北斗の唇に触れる。 ダメだよ。触らないで?俺のモンシェリだ。 まったく、気を抜くと勝手に触って… 気の抜けない男だ…チボー。 だからお前は彼女に振られたんだ… 「理久…睨むなよ。俺は変態じゃないから、そんな気は起こさないよ?」 俺を見てそう言って笑うチボー… あぁ、どうせ俺は変態さ。 ワインを一口飲んで、お皿に取ったチーズをかじる。 いじけてる訳じゃない。小食なんだ。 「ちーぼー、ケーキ、シルブプレ~!」 北斗はそう言って、エビを食べながらチボーにケーキの方を指さして指示をする。 「ウィ…」 チボーはそう言っておずおずと席を立つ。 もう立派な彼の小間使いだ。 ようこそ、こちらの世界へ。 「北斗…ちゃんとお礼を言うんだよ?」 俺はそう言ってナフキンで口を拭う。 俺の方を見て、にっこり笑って北斗が言う。 「理久?エビがプリプリしてて美味しいよ?ほら、一つあげる。あ~ん。」 そう言って彼の指でつままれたエビが俺の口元に運ばれる。 俺はそれを口を開けてもらう。 北斗の指が俺の口に入って、歯を掠める。 「ね~?美味しいだろ?」 そう言って首を傾げる北斗。 俺は一生懸命興奮するのを抑えながら、モグモグと頷く… 「北斗、ケーキ持ってきたよ?」 そう言って彼の目の前に4つのケーキが乗ったお皿を置いて、キスを待つように体を屈めて頬を差し出す、チボー。 俺と目が合っても、平気な顔をしてこちらを見ている… お前はそんなんだから、彼女に振られるんだ。 北斗はナフキンで口元を拭いて、首を伸ばすとチボーの頬にキスしながら言った。 「メルシー!」 何てことだ…これが、外国人だ…! 挨拶だよ…と言って、キスして…お礼だよ?と言って、キスする… これが…外国人だ…!! くそっくそっ! 心の中で悔しがる俺を、涼しい顔で見ながらチボーは席に着く。 お前…さっき言ったよね。 俺は変態じゃないから~って言ったよね? ジロリとチボーを見ると、彼は俺を見て両肩を少し上げて言った。 「ただのあいさつだ。」 ほらね?ほらね? 「北斗、明日は朝から会場入りして他の参加者の演奏を見るよ?せっかく良い演奏者たちが集まって来ているんだ。聴かないのは損だ。そして、出番が近くなったら楽屋に移動しよう。良いね?」 俺がコーヒーを飲みながらそう言うと、北斗はケーキをぶすりと刺して答えた。 「ウィー!モドモアゼル~!」 チボーが肩を揺らして笑う… 俺も、おかしくて肩が揺れる… なんて…可愛いんだ!! 「アトレビヤント~」 チボーがそう言って手を振って、北斗が立ち止まったまま大きく手を振り返す。 「チーボー!トレビヤン~!」 可愛いんだ…モンシェリ! 俺は北斗と手を繋いで、シャンゼリゼ通りをホテルへと歩く。 鼻歌でおおシャンゼリゼを歌いながら…一緒に帰る。 愛しの北斗と二人きりで。 「北斗、お風呂に入って…?」 部屋に着くと、ゴロゴロし始める北斗にそう言ってシャワーを促す。 「ん~…後で入るよ~。」 そう言って、ベッドに横になりながら窓から見える夜空を眺めてる。 このまま上に覆い被さってしまいたいよ。 横になる彼を見つめて、しばし動きが止まる… 可愛い北斗… 彼をじっと見つめる俺に、怪訝な表情でこちらを見つめる北斗… いつの間にか、目が合ったまま固まって動けなくなっていた。 このまま…犯してしまおうか… 「理久?」 はっ!いけない! 北斗の呼びかけに我に返って、俺はスーツケースから自分の着替えを出すと、慌ててシャワーを浴びに向かう。 服を全て脱いで、北斗の為に溜めておいた湯船を目の前に、途方に暮れる。 先にお風呂に入れようと思っていたから…湯船にお湯を張ってしまっていた… 裸のまま立ち尽くす。 海外の浴槽… 湯船の上にシャワーが付いてる。 ここで体を洗うんだ…だから、お湯を張ってしまったら…体が洗えない。 「理久~!俺も入る~!」 そう言って俺のお尻をペチンと叩いて、裸の北斗が湯船にドボンと入る。 あ…見えた。 湯船の中、彼の股間を見て、そう思った。 そして、目の前の状況に放心する… 「理久も入って?あ…理久のおちんちん!」 やめてくれ… 放心したままの俺の手を引いて、北斗が湯船に一緒に入れる。 向かい合って…愛するこの子と、裸で一緒に湯船に入ってる… 目の前の彼は何も身に着けていない姿で、俺を見てにっこりと笑うんだ。 これは…もう…始まっちゃってるのか? 放心したまま口元が緩んで、鼻の下が伸びる… 「理久のおちんちんは大きいね?星ちゃんよりも大きいよ?」 見るな…やめてくれ… 放心したままふにゃけた顔になった俺に、北斗はよくしゃべりかける。 「見て?俺のおちんちんはこのくらいだよ?」 立ち上がって目の前に差し出されて、戸惑う。 舐めたい。 口に入れて、思う存分舌で舐めたい。 これは…完全に、始まっちゃってるの? 北斗が俺の傍にしゃがんで、ジッと俺のモノを見つめ始める。 その視線だけで勃起する俺のモノを、不思議そうにジッと見つめる。 そして、俺の顔を覗いて、尋ねてくる。 「どうして?理久のおちんちんがグインってなるの、どうしてなの?」 それは…目の前のお前を見て勃起してるからだよ… 俺はまだぼんやりと、目の前の裸の彼を見つめて鼻の下を伸ばしてニヤけて放心してる。 「北斗…大人のおちんちんはそうなんだよ…」 俺はとうとうオオカミになってしまった…。 「え…そうなの?俺もなる?大人になったら、俺もグインってなるの?」 「なるよ…ほら、触ってごらん?」 俺はそう言って裸の彼を捕まえて、グイッと自分の傍まで引き寄せる。 前かがみになって、傍に来た彼の髪に顔を埋める。 そのまま彼の体を自分の体に感じて、もっと勃起する。 彼の手を掴んで、自分のモノに運ぶ。 「握ってみて…?」 熱い吐息が漏れて、北斗の髪を揺らす。 「あ…硬い。」 彼の細くて小さな手の平が俺のモノを包んで、彼の唇からそんな卑猥な事を言わせる。 「理久…どんどんおっきくなるよ…?大丈夫なの?俺、心配になって来るよ?」 これは…まぎれもない悪戯だ… 何も知らない子供を相手に、変態が悪戯してるんだ…! 「大丈夫だよ。北斗が握って動かしてくれたら、元に戻るよ…?」 彼の背中を熱を込めた目で見つめながら、息を荒くして興奮して、そう耳元で囁く。 「動かすって…?どうやって?」 してくれるの?北斗…俺の為に俺のモノを扱いてくれるの? 堪らない…!! 「こうして…あぁ…良いよ、北斗…北斗…」 俺は小さな彼の手を自分の手で抑え込みながら扱き始める。 目の前にあてがわれた彼の首筋を、遠慮なく舌を這わせて舐める。 「ん…理久…怖い…」 怖くないよ。俺は羊ちゃんだよ。だから、怖くないよ? 知ってるだろ? 「大丈夫だよ…もっと強くして…」 逃げて行きそうな彼の手を強く抑えて、自分のモノを扱きながら、彼の髪に顔を埋める。 堪らない…すぐにイキそうだ… 「理久…やだぁ…怖い…」 声が震えて怯え始める北斗に気が付いて、体を離す。 目の前に目を潤ませて戸惑いながら動揺する北斗を見て、酷く後悔した… 自分が…邪な目的に利用されたと…分かったような彼の表情に、後悔した。 「…北斗、ごめんね…」 俺はそう言って、彼を離した。 何て事してんだ…俺は。 自分に対して酷くショックを受けた… 彼の表情に、泣かせてしまったことに、ショックを受けて…心が折れた。 北斗は俺から離れると、涙が落ちる目を拭って、ジッと俺を見つめる。 怒ってるのか、困ってるのか、その中間の表情だ… じっと責める様に見つめるその視線に耐えられなくて、体も洗っていないのに、湯船を出る。 「理久…行かないで~!一人で入れない。」 こんな状況でも、俺に甘え始める北斗… 湯船をバシャバシャとさせて気を引こうとしている。 「大丈夫…1人でできるよ…」 俺はそう言って背中を向けたまま体を拭く。 「出来ない…出来ないの…!理久…置いて行かないで。えっく…うっく…うえん…うえん…」 あぁ… 北斗の泣きじゃくる声に、俺はまた湯船に戻る。 こんな事を言われて、置いて行ける奴はいない… ただ、もう二度と羊の皮は脱がない。 あんなに怯えたあの子の表情を見るのは、想像以上に辛かったんだ。 「お湯の中で洗ってしまいなさい。」 お湯の中で泡を付けたスポンジで体を洗わせる。 いつもの羊の皮を被った俺を見て、北斗は安心した様子だ。 さっきはまずかった…本気でまずかった… 彼の素肌の感覚を忘れる様に、自分の体にスポンジをあてて、体を洗う。 「理久!背中を洗ってあげる~!」 そう言って、俺の体をくるっと回して背中を一生懸命洗い始める北斗。 「おっきいね?星ちゃんよりもおっきい背中だね?」 比較対象が星ちゃんしかいないのがウケる… この子には星ちゃんくらいしか友達がいないんだ。 癖のある子だからか…甘ったるい話し方をするせいか…お友達が出来辛いんだ。 星ちゃんは優しくて、理路整然とした、利発な少年。 彼はまるで、北斗の不器用な心が分かるみたいに、そっと寄り添ってくれる… 俺よりも多分、彼の友達なんだ… 俺はただ、彼に下心を持つ変態のオオカミだから。 ピッタリと体を俺の背中に付けて、北斗が甘える。 「理久…理久…」 その様子はまるで俺を誘ってるようにも見えて来る… 「どうしたの?」 「大人のおちんちんは怖い…」 いや、俺のおちんちんが怖いんだ… 「ごめんね。もうしないよ。」 俺はそう言って背中でしょんぼりとする北斗に謝る。 もうしない? 今すぐにでも、また始めたい癖に… 最高に…良かった… 嫌がって強張る彼の声も、身を引こうと抵抗する力も、全てインプットした。 家に帰ったら、思う存分犯してやろう…頭の中で。 お前が泣いても、ごねても、犯してやろう…!! ただ、今は…これ以上、お前を怖がらせたくないんだ。 俺の汚い欲情に晒したくない… この美して、儚い生き物を…汚したくない。 矛盾してるのは分かってる。 でも、俺にはこの子を泣かせることなんて出来ない… きっと途中で心が折れるだろう。 可哀想になって、最後まで犯す事なんて出来ないだろう。 だから、想像の中だけで収めておく。 それが、その方が、俺にも彼にも良いんだ。 「流してあげるよ。」 そう言ってお風呂のお湯を抜いて、シャワーを頭の上からかける。 「んふふ!土砂降りの雨~!」 そう言ってケラケラ笑うと、鼻に入って痛い事になるんだ… 「はっ!鼻に入った~!」 ほれ、見た事か… 彼の股間に目を行かない様に、まるで親戚の子供と風呂に入る様に… 今にも犯したい愛する人を風呂に入れた。 途中、自制心を失ったけど…持ち直した。 ベッドに行って寝転がる彼を見ながら、洗い物を彼のスーツケースにしまう。 「北斗…今日は移動で疲れてるから、早く寝ちゃいなさい。」 俺はそう言いながら、寝酒を煽る為に、戸棚の小さなボトルを取り出す。 そんな俺の背中に甘えん坊の北斗からお声が掛かる。 「理久…一緒に寝て…?」 来た… 頭の中でベートーベン、交響曲第9番第4楽章が流れ始める…。 俺はあの風呂場の窮地から、見事にリカバリーしたんだ… 一緒に寝る事なんて、大したこと無い。 そうだろ? 「良いよ。先に寝ていて、後から行くから。」 俺はそう言って、グラスに氷を入れて、ウイスキーを流して入れた。 「やぁだ…今すぐして…?」 背中にあたる彼の甘えた声は、まるで俺を誘う様に聞こえて、一度静まったはずのオオカミがガルルと唸り声をあげウォーミングアップを始める… いけない…北斗。それ以上、俺を煽るなよ… 「じゃあ、これを飲んだら行くから…先に寝ていなさい。」 俺はそう言って、彼に背中を向けたままグラスを転がす。 落ち着け、理久… 部屋が暗いからって、変な気を起こすなんて…子供みたいだぞ? 第9のオペラ歌手が頭の中でテノールの歌声を響かせて歌ってる。 俺はそれを聴きながら、グラスの中で氷が解けるのを待ってる。 あまり酔うと自制心が失われてしまう。 しかし、酔っぱらわないとやっていられない状況なのは確かなんだ… だから、いい塩梅に氷を溶かしてアルコールを薄めたい… アルトの歌手が歌い始めて、ソプラノの美しい声と、テノールの低い声が交じり合って美しいハーモニーが出来上がる。 あぁ…なんて美しいんだ… まさに、喜びの歌なんだな… 曲調が変わって、ピッコロと、オーボエの音色が美しく旋律を動いて、オペラ歌手が歌い始める。 ほんと…凄い曲だな。 こんなものを作れるなんて…ベートーベンさんは、凄い人だな… クズでも、凄い人だ… そっと背中に温かい体が触れて、グッと体重を押し付ける様に俺の背中に乗りかかって来る。 頭の中でテノール歌手の歌が始まるとともに、北斗が調子に合わせる様に、足で踏ん張って自分の体と俺の体を揺らす。 落ち着くんだ…理久。 これは演習ではない!これは演習ではない! 「北斗…ベッドで待ってなさい…」 そう言った自分の言葉に興奮してしまう。 ベッドで待ってなさいってどういう事…!! お酒を飲んだら、抱いてやるよって事なの? はぁはぁ… どうしよう…!ドキドキしてきた! 「理久~?お酒飲んでるの?」 「…そ、そ、そうだよ。大人はこうしないと…寝れないんだ。」 「嘘だ…」 何が? 妙に落ち着いた声色で、北斗が俺を揺さぶる。 「理久は、俺に…何がしたいの?」 え… 背中に寄り掛かって体を預ける北斗の言葉に戸惑う。 まるで…誘っている様じゃないかぁ!? 「何って…」 「理久…来て…」 え… 「北斗…」 俺はそう言って彼の方を振り返る。 北斗は俺を見下ろして、哀しそうな顔をする。 その表情が…堪らなく…愛しい!! 「愛してる…!!」 そう言って抱きしめて、抱えて、ベッドに連れて行く。 「理久~!寝るの?」 そう聞いて来るあの子を優しくベッドに下ろして、オオカミの瞳で彼を見下ろす。 抑えが効かなくなって…彼の上の服を脱がせて、あらわになった肌に舌を添わせる。 もうダメだ…我慢できない…!! 堪らなく可愛いんだ…! 「理久…!理久~っ!」 俺の頭をペシペシと叩く彼を無視して、そのまま彼の乳首を思う存分に味わう。 「あっ!…だめ!やだぁ!んんっ!」 俺の舌があの子の硬くなった乳首を舐める。 味なんてしない…味なんてしないのに…甘く感じるのはどうしてなの? 彼の細くて、小さな背中を抱き寄せて、彼の体中を舐めて、吸って本能で愛撫する。 俺の頭を掴んで、北斗が上から退かそうと必死に押してくる。 そんな力じゃ俺は退治出来ないよ…大人だからね。 頭の中で響くバイオリンの音色と共に、俺も激しい欲情に翻弄されていく… 「北斗…愛してる…!抱いてしまいたいんだ!俺の物にしたいんだ!全部全部、愛してる…!お前を俺にくれ…お前の全てを俺にくれ…!!」 そう言って彼の顔を覗いて、激しい感情のまま熱いキスをする。 絶対離したくない…! 口から吐息も息も、全てを漏らさないくらいに熱いキスをする。 苦悶の表情の彼を見つめたまま、勃起する自分の股間を彼に擦り付けて、まるで犯してるみたいに、腰を振る。 そして勝手に…絶頂を迎える。 「あぁっ!北斗…!!」 そう言ってパンツの中でイクと、彼の体に項垂れる… 体の下の彼が微動だにしないのはどうしてか… 俺が彼の体に覆い被さっているから? 違う…傷ついてるから…? どうしよう…犯してはいないけど、彼に腰を振った。 大人の汚い欲情を吐露して、彼に思いのまま腰を振った… まるで躾けのなっていない犬のように…変態の本能で、してしまった。 頭の中で合唱が鳴り響く。 それは年末年始によくCMで流れる、典型的な第9の代表的なフレーズであり、この曲の主題のメロディ…。 「ん、もう!酔っ払いは嫌いだ…!」 体の下の北斗がそう言って、俺の胸を殴る。 酔ってなんていない… 酔ってなんていないんだ… 俺は顔を見ない様に体をゆっくり彼から退かすと、隣にうつ伏せて布団に体を沈める。 体を退かすとき、北斗のおちんちんが少しだけおっきくなっているのを感じて、頭の中の第9が巻き戻し再生される。 北斗…俺に疑似レイプされて、感じたの… 気持ち良くなっちゃったの… 8歳なのに… エッチな子だ。 そんな事を思いながら、怒った彼に顔を合わせる事が出来なくて、そのままパンツを汚したまま、彼の隣でうつ伏せて、目を瞑った… ごめんなさい…北斗。 ごめんなさい… 目を掛けられなくて狸寝入りを決め込んだら、本当にそのまま眠ってしまった。

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